1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

幻視、幻覚、被害妄想があった母を遠距離からどう支援したのか【正解のリハビリ、最善の介護】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月20日 9時26分

幻視、幻覚、被害妄想があった母を遠距離からどう支援したのか【正解のリハビリ、最善の介護】

ねりま健育会病院の酒向正春院長(本人提供)

【正解のリハビリ、最善の介護】#55

「ま~くん、おるんよ」

 枕元に、母が座っていました。え、と思って時刻を確認すると午前3時でした。母が1人で暮らしている実家に帰省した時の出来事です。

「何がおるん?」と返事をすると、「あいつらが、また来とるんよ」と母がきつく言いました。とても怖くなりました。恐る恐る、「どこにおるの?」とたずねると、「お風呂場よ。こっちにおるから」と母が答えます。

「何か悪いことするの?」

「なんも悪いことはせんよ。でも、来とるんよ。こっちよ」

 母が風呂場に向かいました。仕方なく、眠たい目をこすりつつ、後に続きました。

「ほら、おるやろ」

「どこにおるん?」

「あそこよ。あの隅に、黒いのが3人おるやろ」

 愕然としました。もちろん、何もいないのです。

 私が「誰もおらんよ。人も見えないよ」と言っても、母は「……見えんの? あそこよ」と言い張ります。私は「本当に誰もおらんよ。何も見えんよ」と、答えるしかありませんでした。

 すると、母は「おまえがおらん言うんやったら、おらんのよね。もうええわい」と話すのをやめました。

 母によると、それからも“黒い人”はよく来るらしいのですが、悪さはしないことを納得できたので、母には放っておく余裕が生まれました。しかし、私は実家に帰省して泊まるのが怖くなりました。

 母には黒い小人が見えていました。40センチほどの黒い小人が布団の足元に入ってくるらしいのです。しかし、悪いことはしないといいます。また、時々エアコンの送風口から火が噴き出すのが見えたそうです。親戚からの報告では、2回も消防車を呼んで大騒ぎになったとのことでした。

 そのうちに、母は食事をしなくなり、どんどん痩せていきました。体重は30キロを切って、首が下がって頭部を挙上できない状態になってしまいました。ただ、介助なく1人暮らしができるため、母は独居を希望しました。

 私が帰省した際、連れ出して一緒に食事をすると、私以上の量を「おいしい」と、うれしそうに食べました。普段は食事するのを忘れるのか、準備が面倒なのかはわかりませんが、食べないようでした。それでも、お腹がすいて困ることはなく、母は「ちゃんと、食べてるよ」と言います。そして、知人を自宅に呼んだときは、気前よくごちそうするのを好みました。

■離れていても親の介護支援はできる

 そのうち、突然、「1人暮らしは難しいから、施設(サービス付き高齢者住宅)に入るよ」と一気に行動に出ました。驚くことに、施設できちんと3食を食べるようになると、首がみるみる上がってきて、普通の頭の位置に戻ったのです。首が下垂した高齢者は、栄養を規則正しくとると頭部下垂の症状が改善することを学びました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください