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「天才アラーキーさんが共演者のように接してくれてうれしかった」深夜のセクシー女王・水島裕子さんが語る撮影秘話

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月2日 9時26分

 94年に「天才アラーキー」荒木経惟さんと一緒に仕事をするチャンスに恵まれました。ファンだったので本当にうれしかったですね。荒木さんの生まれ故郷(台東区三ノ輪)にほど近い墨田区東向島で撮影しました。

 この界隈は、永井荷風の小説「濹東綺譚」で知られています。当地の私娼街・玉の井を舞台に小説家と娼婦との出会いと別離を描いた作品です。

「濹東エロス」。これが写真集のタイトルです。

 荒木さんは下町の風情を色濃く残した街並みを歩きながら(おそらく)頭の中で物語性をきちんと考えつつ、娼婦をイメージした私をファインダーで捉え、次々にシャッターを押していきます。

 和風の連れ込み旅館で着物の前をだらしなくはだけている遊女(のような自分)、露出度の高いワンピースを着て地元のおばあちゃんと会話を交わしたり、古びたカフェのカウンターにもたれるように座ったり、神社に鎮座しているキツネの前に立ってカメラをにらみつけたり……普段の自分とは違う「濹東に生きる娼婦・水島裕子」を撮っていただきました。

 荒木さんとの最初の接点は、銀座1丁目の路地裏のラーメン屋さんでした。確か「キッチンラーメン」という名前だったかな。そこで一緒にラーメンを食べたのではありません。荒木さんの写真展をやっていると聞いて行ったのですが、とても写真展をやるような広さではなく、びっくりしたことを覚えています。

 4年後の98年に出したエッセー「黒黴」(ぶんか社)に荒木さんがポラロイドで撮った写真67点を入れさせていただきました。あとがきに「写真と文が一緒になった本が一番好きってことを改めて思いました」「写真集『濹東エロス』の時は監督のようだった荒木さんが、今回は共演者のように接してくれてうれしかった」と書きました。

「天才アラーキー」さんとの距離感がグッと縮んでうれしかったです。

 荒木さんについてもうひと言──。カメラマンさんというのは、撮影が終わるとゴルフに行ったり、飲みに行ったり、リラックスする人が大半だと思いますが、荒木さんは「撮影日の夜のうちに写真のセレクトを済ませる」タイプです。頭の良さ、回転の速さに加えて並外れた集中力で一気呵成に仕事を終える。ただただ尊敬しています。

 日活ロマンポルノ映画3作以外にも、映画やVシネマの仕事をいただきました。90年にはマガジンハウスから「ハイヒールで避妊して」で作家デビューしました。フランスの文化、言葉、文学に心を奪われて95年、フランス人の映画監督クロード・ミレールの作品「オディールの夏」のノベライズ本を出しました。

若い頃の写真集や映像作品が再評価

 若い頃の写真集や映像作品を再評価していただくことが増え、うれしく思っているところです。

 10月19、20日に「金子修介監督 にっかつロマンポルノ特集」と銘打ったイベントが東京・本郷で開催されました。

 監督作品の「宇能鴻一郎の濡れて打つ」「OL百合族 19歳」「いたずらロリータ 後ろからバージン」「ラスト・キャバレー」の上映会とそれぞれの主演女優と金子監督とのトークショーが行われ、私もファンの皆さまの前で思い出話をさせていただきました。

 12月24~28日にオオタスセリ作・監修の「スセリ 台本劇場31」が東京・下北沢の「小劇場楽園」で開催されます。私の出番は24日です。年が明けると西荻窪「Bar HANA」でひとり芝居をやります。多くの人に「昔の私と今の私」を見てほしいと思います。

(聞き手=絹見誠司/日刊ゲンダイ)

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