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“お花畑”の何が悪い! 渡辺えり×ラサール石井【同世代 辛口対談】私たちの「戦争と平和」

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月8日 9時26分

“お花畑”の何が悪い! 渡辺えり×ラサール石井【同世代 辛口対談】私たちの「戦争と平和」

渡辺えりさんとラサール石井さん(C)日刊ゲンダイ

 あす8日から下北沢・本多劇場で上演されるオフィス3〇〇連続上演「鯨よ!私の手に乗れ」「りぼん」で作・演出・出演を務める渡辺えりさん。出演者で本紙連載「東憤西笑」のラサール石井さんとは同じ1955年生まれ。同年代として、作品を貫く「女性の生き方と反戦」というテーマで対談を行った。(取材・構成=山田勝仁)

  ◇  ◇  ◇

 ──昨年起きた兵庫県知事選挙でのSNSをめぐるゴタゴタを見ていると、簡単にウソや捏造を信じる人たちがいて、フェイク社会の怖さを感じるのですが。

ラサール石井(以下石井)「私が子どもの頃の未来は明るく輝いていた。超ハッピーな世の中になると思っていたけど、最近の世相を見てると暗澹とした気持ちになります。ネット社会も善しあしで、小泉今日子さんやきゃりーぱみゅぱみゅさんが政治的なことをSNSで投稿すると『芸能人は政治に口を出すな』と炎上しちゃうし、私なんか常に炎上してますから(笑)。私が高校生の頃は、テレビに出てくるワイドショーのコメンテーターや評論家はすごい政権批判してたのに、今はちょっとしたことですぐ政府筋から抗議が来るから、『言論の自由』はどうなっちゃったのかと思います」

渡辺えり(以下渡辺)「ちょっと前まではテレビの討論番組はリベラル派と保守派の論客が半々でしたが、今は保守派ばかりになって、少しでも政府批判すると、すぐ叩かれてしまう。しかもスポンサー企業に抗議が殺到するので、テレビ局も及び腰でしょう。その点、演劇はまだ作家が自分の言いたいことを書く自由があります。築地小劇場以来、社会の矛盾を突いてきた新劇は今も一本芯が通っているし、最近では劇団チョコレートケーキ、長田育恵さんや瀬戸山美咲さんなどの若い世代の小劇団は、戦争や原発問題などをストレートに表現していますよね」

ウソでも捏造でも“言ったもん勝ち”の世界

石井「たぶん、昔は政治家がテレビの力を軽く見ていたんじゃないかな。それが故・安倍晋三氏が首相になって以降、テレビを牛耳ることによって世論操作も簡単にできることがわかり、積極的に使って、ある程度成功した。それが今はテレビも時代遅れだとしてSNSに移行していったのではないでしょうか。

 今、宇野常寛さんの著書『庭の話』という本を読んでいるんだけど、SNS上で承認を求めてタイムラインに流れる空気を読み、不確かな情報に踊らされて対立や分断を深めていくという『相互承認ゲーム』が現実を侵犯しているのではないか。つまり、それがウソだろうが根拠がなかろうが関係ない。『いいね』の数が多ければいいと……。“下層階級”の人たちは、ただゲームに参加しているだけで目的を達したと思い込み、“上層階級”の人たちは下層階級の人たちがゲームをしていることで潤うという2つのゲームが同時進行している世界。まるで再生回数で莫大な利益をあげるユーチューバーとユーザーの関係みたいです。昔はウソをついたり、事実を捏造したら、その人の社会的な生命は終わっていたのに、今はウソでも捏造でも『言ったもん勝ち』という世界。こんな社会になるとは思ってもみなかったです」

今はSNSで『平和が大事』と訴えるとバッシングされる時代

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