キングオブコント2024優勝ラブレターズの哀愁漂うコントは、年齢を重ねたことでより味わいを増した(ラリー遠田/お笑い評論家)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月9日 9時26分
ラブレターズの塚本直毅(左)と溜口佑太朗(C)日刊ゲンダイ
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コント日本一を決める大会「キングオブコント」は、漫才の大会「M-1グランプリ」と並んで、お笑い界で最も注目されるイベントである。昨年10月に行われた「キングオブコント2024」で見事に優勝を果たしたのが、塚本直毅と溜口佑太朗の2人から成るお笑いコンビ・ラブレターズである。
塚本はもともと放送作家を目指していて、そのための勉強をしていた。一方の溜口は劇団で俳優としての活動を行っていた。そんな2人が出会い、試しにコンビを組んでコントをやってみることにした。彼らは2008年に始まったばかりの第1回の「キングオブコント」の予選に挑んだ。
しかし、あっさり1回戦で敗れてしまった。彼らは再起を誓い、09年に正式にコンビを結成して、芸人としての活動を本格的に始めることになった。
塚本と溜口はどちらも小柄で、おとなしそうに見えるところがある。彼らはそんな自分たちのキャラクターを生かして、人間の哀愁が感じられるようなコントを演じていた。
最初は俳優として実績のある溜口の演技力が際立っていたが、徐々に塚本の狂気じみた人物を演じるときの没入型の演技も注目されるようになり、それぞれがラブレターズのコントを構成するパーツとして不可欠なものになっていった。
11年には初めて「キングオブコント」で決勝進出を果たし、13年にはフジテレビの深夜のコント番組「バチバチエレキテる」のレギュラーメンバーにも選ばれた。しかし、そこでブレークを果たすことはできず、彼らは長い雌伏の時を過ごすことになった。
そして24年、5回目の決勝進出を果たした「キングオブコント」で、悲願の優勝を果たした。1年前の決勝でも自信のあるネタを披露して敗れていたため、今回は余分な気負いを捨てて臨んでいた。その結果、自分たちらしさのあるコントを堂々とやり切ることができた。それが勝因となったのだろう。
彼らは若手の頃から哀愁の漂うコントを売りにしていたのだが、年齢を重ねたことで演技に説得力が出てきて、コントがより味わい深いものになった。
「キングオブコント」とともに芸人人生を歩んできた2人は、何度も何度も戦いに敗れ、それに振り回されながらも、ようやく栄冠をつかんだ。狂気じみた設定の中で、優しさと人間愛を感じさせる独特の世界観のコントは、一度ハマると病みつきになる魅力がある。
(ラリー遠田/お笑い評論家)
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