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イライラしたとき「モノ」に当たるのは正解なのか?【科学が証明!ストレス解消法】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月17日 9時26分

イライラしたとき「モノ」に当たるのは正解なのか?【科学が証明!ストレス解消法】

写真はイメージ

【科学が証明!ストレス解消法】#199

 ストレスを感じると、ついつい人やモノに八つ当たりをしてしまい、自己嫌悪に陥る方は少なくないと思います。八つ当たりは、ただでさえ周りの人にとっては迷惑千万ですが、オハイオ州立大学のブッシュマンらの研究(1999年)によれば、本人にもいい影響がないことが示唆されています。

 彼らの研究では、まず被験者たちに「怒りは人にぶつけるよりも枕やパンチングバッグのような無生物にぶつけると発散できる」という嘘の情報を与えました。その後、被験者に書いてもらったエッセーを、サクラが酷評することで被験者たちをイライラさせました。

 そして、被験者たちにストレス発散の方法をリストの中から選ばせたところ、ほとんどの人が虚偽の前情報であるパンチングバッグを選んだといいます。ところが、パンチングバッグを殴った被験者たちは、怒りがおさまるどころか、攻撃的かつ怒りが続く傾向にあり、酷評したサクラはもちろん、関係ない人にまで怒りをぶつけるようになったというのです。イライラしたときにモノに当たるのは、ストレス発散どころか、むしろ逆効果ということが明らかになったのです。

 攻撃的な態度は、怒りの原因に反撃できなかったり、目標を達成できないというフラストレーションから起こるといわれています。そのため、怒りに任せて八つ当たりをすることは解決につながるわけではありませんから、さらにフラストレーションが募ってしまう可能性が高まります。

 八つ当たりの対象は、身近な人に向けてしまうことが往々にしてありますが、八つ当たりをしても百害あって一利なしということ。味方になってくれるかもしれない人たちを、かえって遠ざけてしまうだけです。

 また、ブッシュマンは、「空腹状態が続くと腸内の環境が悪化しイライラが募っていく」という興味深い研究(2014年)も行っています。実験では、夫婦107組に毎日お互いの悪口を聞かせて、枕元に相手に見立てた呪いの人形と針を置いた状態で過ごさせたところ、血糖値が低いときほど、人形に刺す針の数が増える傾向が出たといいます。

 ブッシュマンの実験にエッジの利いた実験内容が多いことはさておき、腹ペコ状態は精神的に良くないということが、科学的にも証明されていると言えるのです。

 そもそも空腹になると、心の安定と深く関係する物質セロトニン(通称・幸せホルモン)が減少します。セロトニンが不足すると、うつ病や不眠症などの精神疾患に陥りやすいといわれているように、セロトニンを減らさないためにも、きちんと食事は取った方がいいのです。

 私たちが想像する以上にイライラは、自分にも他者にも影響を与えてしまいます。イライラを感じたときは、自分にとってプラスになる刺激を感じるようにマインドを切り替えてください。自分の好きなことを感じればセロトニンは増えていきます。2025年はイライラではなく、皆さんがハッピーをたくさん感じられる一年になりますように。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)

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