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早期の「乳がん」治療で新たな選択肢 乳房を切らないラジオ波焼灼療法が23年末から保険適用で実施

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月22日 9時26分

早期の「乳がん」治療で新たな選択肢 乳房を切らないラジオ波焼灼療法が23年末から保険適用で実施

術後の経過は順調。腫瘍はほとんど見えなくなるほどに(中部国際医療センター提供)

 早期乳がんに新たな治療選択肢が加わっている。岐阜県・中部国際医療センター乳腺外科/乳癌治療・乳房再建センターの德丸剛久副部長に話を聞いた。

 新たな治療選択肢とは「ラジオ波焼灼療法」だ。乳がんの中に細い電極針を差し込み、ラジオ波という電流を流して、がん細胞を死滅させる。肝臓がん、肺がん、悪性骨腫瘍などで保険適用となっていたが、2023年12月、乳がんも保険適用となった。

「切らないので、体への負担が小さい。傷は数ミリ程度の針穴程度で、乳房の形が変わらないので、個人的には精神面への負担が小さいことにも着目しています」(德丸副部長=以下同)

 中部国際医療センターでラジオ波焼灼療法を受けた70代の乳がん患者は、乳がんと診断された時、看護師に「もうおばあちゃんだから、胸のことは気にしていない」と話していた。しかし治療後、乳房が変化なく残っているのを見て、非常に喜んでいたという。

 早期乳がんの治療は、がんを取り除く手術と、薬物療法や放射線治療を組み合わせて行うのが標準だ。

「手術には乳房の一部を切除する温存療法と、全摘術があります。温存療法は一部ではあっても切除は切除なので、乳房が変形したり傷が残る可能性があります。全摘術は、術後の乳房再建が保険適用となって以来、件数が増えていますが、『乳房を切らなくて済むのなら』といった患者さんが少なからずいます」

 そういったニーズに応えるのがラジオ波焼灼療法になる。心身への負担が小さくても、がんの取り残しがあれば問題外だ。乳がんへのラジオ波焼灼療法は当初“切らない治療”として注目を集め、自由診療で行われていたが、再発・転移のケースが報告された。そこで適正使用と保険適用を目的に、2013年から臨床試験(RAFAELO試験)が開始された。

 その前年に発表された全国8施設の多施設共同研究、39例の結果では再発率10%。「乳癌診療ガイドライン治療編2011年版」では、エビデンスが不十分であることから推奨グレードC(実践することは基本的には勧められない)だったが、RAFAELO試験がこれを変えた。

 13年8月から17年11月までに9施設で372例が集まり、22年、5年間のデータが全て集まってから解析。乳房温存手術と同等の根治性があり、高い整容性を保てることが確認され、23年に保険適用に至った。

■基準を満たした施設、医師のみ実施可能

 ラジオ波焼灼療法の乳がんの対象は「直径1.5センチ以下の早期乳がん」など厳密に定められている。乳がんの形は円形とは限らず、おたまじゃくしのような形もある。おたまじゃくしの“胴体”が1.5センチ以下でも、“尻尾”の部分を含めた大きさが1.5センチ超なら、適応とならない。

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