視力低下が認知症リスクを高める…「ランセット」で発表【第一人者が教える 認知症のすべて】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月28日 9時26分
40歳を過ぎたら眼科検診を
【第一人者が教える 認知症のすべて】
40歳代以上のみなさん、眼科検診を定期的に受けていますか? もし受けていないようなら、1年に1回は受けることをお勧めします。
認知症の本連載でなぜ眼科検診について触れるのか──。それは昨年、視力低下が「改善可能な認知症の発症リスク因子」であることが、国際的権威のある医学雑誌「ランセット」で報告されたからです。
ランセット国際委員会は2017年、20年、24年と認知症の発症リスク因子を発表しています。当初は9因子だったのが、20年には12因子となり、24年には14因子に。
新たに加わったのが、視力低下と高LDLコレステロール血症です。
40歳代以降で患者数が増える目の病気として代表的なものが、緑内障、白内障、加齢黄斑変性です。中でも緑内障は「中途失明原因の第1位」であり、40歳代の20人に1人が該当するといわれています。また、白内障のように「濁った水晶体を取り換えると、よく見えるようになる」わけではありません。失った視力は取り戻せないのです。
だから早めの治療開始が重要なのですが、症状の進行が緩やかである上、どちらかの目が見えづらくなっていても、見える方の目で補って見てしまうので、視力低下を感知しづらいのです。
つまり、自覚症状に頼っていては早期発見につながらない可能性がある。視力検査では緑内障がわからないので、眼圧検査や眼底検査を受けることが必要となってきます。
ランセットの認知症リスク因子には、「社会的孤立」も挙げられています。著しい視力低下は、行動範囲や人間関係を狭めかねません。緑内障は幸いなことに治療法があります。適切なタイミングで治療を開始すれば、視力を維持できるのです。
認知症対策のためにも、眼科検診を。「年に1回、職場検診を受けている」という方も、一般的に職場検診には眼圧・眼底検査が含まれていないため、自分が受けている検診の内容を確認してください。
難聴対策も欠かせない…補聴器に対する正しい知識を
ランセットの認知症リスク因子は年代別に分けられており、改善によってどれくらい認知症リスクが下がるかが示されています。
24年の発表では、若年期は「教育の不足(5%)」がリスク因子であり、中年期になると「難聴」「高LDLコレステロール血症」がそれぞれ最大の7%、高齢期では「社会的孤立(5%)」「視力低下(2%)」が挙げられています(別表参照)。全てのリスク因子を改善できれば、認知症の発症を約45%予防・遅延できるというのですから、得られる効果は大きいと思います。
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