高齢者が幸せに暮らすために「生きがい」が大切なのはなぜか
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月29日 9時26分
ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ
「定年後は何をして暮らせばいいのかわかりません。今は目の前の仕事をするだけです」
あと数年で定年を迎えるAさんはこう言います。一方、同じく定年を控えたBさんは、「できれば働きたくありません。早く定年したいです。好きなことをして暮らしたいですね」とおっしゃいます。
人生100年時代になりました。65歳で定年しても、まだ35年間もあります。この35年間をどのように生きていくのかは、とても重要な問題です。
Aさんのような人の多くは、定年退職後は自宅にこもり、やりたいことが見つからず、フレイル(加齢によって心身が衰え、健康な状態と要介護状態の中間の段階)、サルコペニア(加齢による筋肉量の減少や筋力の低下)、認知症の“流れ”に乗ってしまい、80歳代で要介護となる傾向があります。
かたやBさんのような人は、仕事以上に今やりたいことがある幸せな人です。このような方は、フレイル、サルコペニア、認知症の“流れ”には乗らず、自分でやりたいことをやりつつ、「筋肉量低下」という落とし穴に気をつければ、自由気ままな生活を送れます。つまり、「生きがい」「居場所」「役割」があるかどうかで、定年後の高齢者の人生は大きく変わるのです。
一方、専業主婦の女性は、定年後のご主人と自宅に一生こもって生活するのでは息が詰まってしまいます。ですから、どちらかが屋外で活動する時間が必要です。そうなった際、趣味のない男性の多くは自宅にこもり、専業主婦だった女性は何らかの用事を見つけては外出し、友人との時間を楽しむ傾向が強い印象です。
ただ、こうした女性の中には、どうしても食欲が抑えきれず徐々に体重が増えていく方も少なくありません。その結果、腰痛、肩こり、膝の疼痛が出てきて、外出する機会が減ってしまいます。すると、糖尿病も出てきて認知症の進行につながります。ここにも、活動量が減ることによる「筋肉量低下」という落とし穴があるのです。
私が生まれた1961年は平均寿命が68歳でした。それが、昭和の最後には78歳になり、現在は84歳になっています。このように寿命が延びたことで、加齢とともに筋肉量が減るケースも増えてフレイルとサルコペニアという概念が登場してきました。さらに、がんになり、骨変性が起こり、認知症になることで、80歳代では要介護となってしまいます。ですから、夫婦で一緒に骨変性と認知症を予防するために筋肉強化対策が必要な時代になっているのです。
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