なぜ自宅で過ごすことを決め、理想の最期が「家」なのか…患者に確認する【老親・家族 在宅での看取り方】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年2月5日 9時26分
最期まで碁盤に触れ過ごしたいと在宅を希望
【老親・家族 在宅での看取り方】#129
さまざまな患者さんと接する中で、まず最初に確認する大切なことは、なぜ患者さんが自宅で過ごすことを決め、理想の最期が家なのかというその理由なのです。
それは時に本人のささいな生活習慣であったり、その人の人生における大切なこだわりだったりします。その理由を知ることは、患者さんの思いに寄り添い共感し、ともに在宅医療を行う上で、大切な作業だと言えます。
肺がん末期の男性患者さん(84歳)がいました。1人暮らしの家の中は物であふれ、床は足の踏み場もないほど。トイレまでは伝い歩きで、食事は固形物は食べられませんがプリンやゼリーは食べられる程度。
友人が多く、人の出入りもある状況でした。その患者さんは近所でも評判なほど囲碁将棋が大好きな方でした。
当初は主治医ですら在宅での治療は難しいと判断していましたが、最期まで碁盤に触れ、囲碁将棋のテレビ番組を見て自宅で過ごしたいからと自宅での治療を望まれたのでした。
その患者さんは独居とはいえ、私たち訪問診療はもちろん、ご友人との関わりもあります。実際、患者さんの友人から「あいつが昨日からご飯を食べられなくて、熱もあって、ちょっと調子悪そうなんだよね。俺たちは10年来の友達だからわかるんだよ」という連絡をいただいたこともありました。
また、状況がさらに悪くなればヘルパーさんにより生活を整えたり、トイレが難しくなればおむつなどの選択肢もあります。
一見おぼつかなく不安で、在宅での治療は難しいように思われたとしても、本人の望み通りの最期を実現することは可能なのです。
またこんな患者さんもいました。舌がん末期で76歳の男性の方。ご家族は近所に住み働いているため介護は難しいが、金銭面の援助は惜しまないというスタンスでした。
年末年始は遠くからの親戚が患者さんの家に集まり、鍋を囲んだのが楽しかったとおっしゃっていたのが印象的でした。
家族の希望で緩和ケア入院にエントリーし、急性期病院に入院しながら待つことになった時、本人は「もう一度、自宅に帰れたらいいけどねぇ」など病院の医師に言っていたそうです。
待機期間が2週間以上となり、残り少ない時を家族と過ごしたほうが患者さんは幸せだろうと、病院からの提案で当院に連絡があり、入院待ちの期間を自宅で療養し、過ごすことに。患者さんの思いをくんだ病院と、我々在宅医療クリニックとの地域連携により実現した事例です。
もちろんどのような対応が正解かという考え方はなく、それぞれ事情があることもわかっています。
ですが最初から入院ありきの考え方ではなく、患者さんの思いに寄り添い、時に在宅医療も選択することができるということを、いま一度広く社会に知ってほしいと思ったのでした。
(下山祐人/あけぼの診療所院長)
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