【ミャンマー】秘境カレン州パアンで仙人に会う旅
Global News Asia / 2016年9月3日 9時0分
再び車に乗り、四駆でさえ進むのが困難な悪路を2時間以上も進んだだろうか。最後は道も途絶え、方向感覚がなくなり、自分がどの辺りを走っているのか分からなくなった頃、開けた草原にその祭儀場が広がっていた。祈りの為か男たちは白装束に身を包み、白い鉢巻きを締めている。飛び交う言葉はカレン語ばかりで、ミャンマー語で話し掛けてもまるで通じない。その白装束の男達に守られるように、ナガーと呼ばれる龍の刺繍の入ったゆったりした金の袈裟を羽織ったポータケが座っていた。
日に焼け、顔に深いしわの刻み込まれた男たちの中で、ポータケだけが色白でふっくらしており、ほほ笑む様に口を開くと、ずらりと並ぶ金歯が太陽に反射してきらめく。ポータケが僧侶と共にお経を唱え始める。初めはビルマ語で、次に唱え始めたのはカレンの言葉による祈りの言葉だった。時々説教の様なものを挟むと、列席したいかつい男達の間からすすり泣く声が漏れ、しわくちゃな指でしきりにこぼれる涙を拭いている。
原始のままに広がる灰色の岩山と緑の草原。気ままに歩き、草をはむ牛。金の袈裟をまとったポータケ。それらはじりじりと熱い太陽の下、混然としながらも静かにそこに存在し、確かにこの世のものと思えない不思議な光景だった。何故ポータケが仙人になったのかは分からない。
長く続く国軍と少数民族、そして同じカレン民族同士の対立、戦地に住居を追われ、教育も満足に受けられない子供達。ヤンゴンの大学まで卒業し、そのまま穏やかな生活をヤンゴンで送ることも可能であったのに、何故彼は元の複雑で危険な民族対立問題に、人としてではなく「仙人」という姿で身を投じたのか、彼が今後どのような運命に巻き込まれていくのか、それを知る神はどこにいるのだろうか。
【執筆 : 竹永ケイシロ 】
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