3秒のドラマ「ラオスのパラパワーリフティング選手の活躍」ーJICAラオス事務所
Global News Asia / 2019年3月1日 9時15分
2019年2月2日、冬の東京で行われた「第19回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」に、ラオスから2名の招待選手が出場しました。
1人は、49kg級男子のピア・ラオパクディ (Pia Laophakdee) 選手。2018年のインドネシアでのアジアパラゲームでの金メダルをとり、その活躍でトンルン首相から勲章が授与された選手です。
もう1人は41kg級女子のラサミ・シーパス―ド (Latsami Sipaseuth) 選手。今大会が公式試合デビュー戦で、大会実行委員長からは「この競技は腕の短い方が有利だが、長くてかつ細い腕の持ち主」と紹介されました。
パワーリフティングとは、下肢に障害がある人を対象としたベンチプレス競技です。持ち上げる重さを競うだけではなく、胸元でのバーの止め方や、押し上げたバーの左右のバランス等も判定対象であり、その3秒間は見ている我々の息が止まるほどの緊張感に溢れます。選手はその3秒のために苦しい練習を重ねるのです。
結果はピア選手が125kg、ラサミ選手は自己最高記録の60kgを持ち上げるのに成功! 観客席ではラオスの旗があがり大歓声が起こりました。招待選手なので順位には反映されませんが、それぞれ同階級の日本人よりも好成績を挙げ、両名とも特別賞が与えられました。
ピア選手もラサミ選手も、ラオスで活動する日本のNGO、「アジアの障害者活動を支援する会(ADDP)」がサポートする選手です。ラオスでは障害者の社会参加の機会がまだまだ閉ざされているため、ADDPは障害者をスポーツの面から支援し、仲間づくりを通じたエンパワーメントや自立の意欲を育てることを目指して活動しています。ピア選手は、ADDPのラオスの事務局のスタッフとしても働いています。
今までピア選手はずっと一人で我流の練習をしてきましたが、ADDPを通じて大分県別府市にある障害者支援センター「太陽の家」で城 隆志選手(オムロン太陽株式会社)と出会い、初めてきちんとした指導を受けることができました。その結果が2018年の金メダルなのです。そして2019年1月にはラサミ選手とともに、特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティング連盟の好意で京都での日本人向け合宿に参加させてもらい、その後は別府市の「太陽の家」で自主トレーニングを積み、本大会に臨みました。
ピア選手は以前、NHKのインタビューにこう応えました。「どのように生まれてくるかは自分では選べない。でもどのように生きるかは自分で選ぶことができるのです。」 彼はその言葉通りに自分の道を歩んでいます。現在は後進を育成することにも力をいれており、ラオスで唯一の女性選手であるラサミ選手のコーチとしても活躍中です。とても明るい性格で、周りの人々をハッピーにする気さくなアニキ分です。
ADDPのこの活動は、JICAとの草の根技術協力事業「ラオス障害者スポーツ普及促進プロジェクト」の一環です。JICAはこれからもピア選手を始めとする、ラオスの障害者スポーツに関わる皆さんを応援しています。
【JICAラオス事務所 : 戸倉裕子】
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