【タイ】民主化への理想と現実、難しい着地点(タイ在住ライターが見た現実)
Global News Asia / 2020年10月25日 16時15分
2020年10月25日、反政府側がプラユット政権に対して辞職を求めたものの拒絶されたことを受けて、反政府集会が再開されている。これまでの動きの中で何が起きているのか。外側からは見えにくい内情をタイ在住のライターがタイ語メディアなどからまとめた。
デモの裏側で起きていること
タイで連日繰り広げられている反政府派のデモ集会は、大学生と有識者にはじまり高校生へと拡大し、その勢力はさらに拡大しつつつある。この動きは軍事政権の流れを汲む現政権への批判から始まり、それが王室財産を個人資産へと組み替え、富の集積を続け、ドイツに長く居住する現国王への批判へと拡大。当初の集会は大学構内で行われていた。そこに高校生が加わり、バンコク都心の公の場所で行われるに至っている。こうした流れに、学生の親世代が中心となる王党派は大きく反発。家庭内の分断という事態をも引き起こしている。
集会に参加する学生の中には、高校生が増えている。中には集会の最中に宿題をしている姿もある。ある学生はタイメディアのインタビューに対して「私の親は、話を聞こうともしてくれない。とにかく良くないことだと決めつけるだけなんです。もっと私たちの話に耳を傾けて欲しい」と話している。また、他の学生は「いくつもの事実を見せて、親の目を開こうと試みて話したけど、聞いてもらえなかった」と答えている。王室への不敬と強権的な政府を恐れて、家庭内でも大人が子どもを強制的に抑えこもうとしている様子が伺われる。蛇足ではあるが、著者も王党派の友人から、言動に対して批判めいたメールをもらっており、関係を悪くしたくない思いもあって対応に苦慮している。
しかし、王党派であるはずの親世代も心中は複雑で、内心ではかつて先代のプミポン元国王へ示した敬愛とは別の感情を現国王には抱いてきた。そのため、若者たちへの理解はできるものの現実として政府役人や付き合いの中で表立って賛同できないという人も多い。王党派の集会で隠れて三本指を掲げる写真がSNSに掲載され話題となったことがそれを象徴している。怖いもの知らずの若者に対して、現実のしがらみの中で隠れて密かに賛同している大人たちも少なくないようだ。
陰でうごめく大人の事情
学生たちが現政権を批判している理由の一つとして、賄賂が横行しているという現実がある。タクシン元首相が就任した直後には、徹底した公務員改革がなされ、悪習が一掃された時期があった。しかし、その後黄シャツ側が政権に復帰して、その流れを汲む現政権が続いてきた結果、この悪習は現在も再び幅を利かせている。
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