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【コラム】タイ人に愛された日本兵〜第7回〜終戦の日にチューチャイさんに捧ぐ(全7回)

Global News Asia / 2022年8月15日 11時0分

著者チャーチャイ・チョムタワット元警察大佐、元クンユアム警察署長

 「第2次世界大戦でのクンユアムの人々と日本の兵隊さんの思い出」に書かれていたように、クンユアムでは日本兵とタイ人が深く交流していた。それは運命だったのか、本人たちはどうのような思いで受け入れていたのか。今となっては想像するしかない。戦争とは、かくも人の人生を変えてしまい、時には断ち切ってしまう。悲惨で悲劇的な側面があまりにも大きい。それでも、まるで濁流のような時の中で、助け合い、愛し合おうとした人々が確かにいた。「第2次世界大戦でのクンユアムの人々と日本の兵隊さんの思い出」には、人間とは、最後まで、国も言葉も超えて慈しみあうことができるということが書かれている。

 カンチャナブリーの戦争博物館に展示されているように、旧日本軍が蛮行と極悪非道を繰り広げたかのようなことばかりが行われていたとすれば、タイの人々はなぜ今も親日国なのだろうか。すべてを否定するわけではないが、これらが事実なのであれば、某国のように未だに謝罪を求め続けてもおかしくないだろう。しかし、タイ人が今でも親日なのは、この著書にあるようなことが、このクンユアムだけでなく人知れずに、複数の場所で繰り広げられていて、それらが口コミ社会だったタイの中で語り継がれていたのだろう。それが小説「メナムの残照」という形として結実。1970年に初めて映像化されて以降、9回もドラマや映画としてリメイクされてきた。これは、タイが親日国ということと無関係ではあるまい。そして、今でも日本人の礼儀正しさや義理堅さを、タイ人はリスペクトし、憧れている。しかし、残念なことに近年ではこうしたタイ人が抱く日本人像を破壊してしまうような、品性に欠ける日本人がタイにも増えてきているのは残念なことだ。

 また、クンユアムで起きたようなことは、タイの他の地やラオスなどでも散見されている。戦争直後、タイだけでなくラオスやミャンマーなどでも、多くの日本兵が現地に残って密かに暮らしていた。旧日本陸軍参謀であり、戦後は参議院議員だった辻政信が、戦後タイからラオスへ潜航したのは、現地に残された兵士たちを統率して帰国させるためでもあったというのは有名な話だろう。わたし自身も、世界遺産となったジャール平原にも近いムアンクーンの町で現地に伝わる話として、辻に引き連れられた彼らが、僧侶の姿になって町を出て行ったと、村人から直接聞いたがある。他にもラオス北部の中国ベトナム国境近くには、日本から何度も派遣された捜索隊との接触を拒み続けた元日本兵と思われる人がいるという話も聞いた。

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