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「2,600万円貯めたから安泰」年収1,000万円だった60歳定年の元サラリーマン、余裕の畑いじりも束の間…5年後、“まさかの年金受給額”に絶望。長い老後の〈悲惨な末路〉【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月28日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後は安泰」と思っていた家庭にも、いざセカンドライフに差し掛かると思いもよらぬ破産リスクが待ち受けている可能性があります。本記事では山下さん(仮名)の事例とともに、現実に起こり得る「老後破産のリスク」について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。

5年前の目算

会社員として長年大企業を勤め上げた山下さん(仮名/当時60歳)には3歳年下の妻と、すでに独立し家庭を持っている長男(当時32歳)と、嫁いでいった長女(当時29歳)がいます。長男家族には孫2人がいて、長女家族にも昨年孫が誕生し、豊富な経済力と仲睦まじい家族を周りからも羨まれて暮らしていました。

最近は人生100年時代といわれ、70歳まで働くという意見を聞くことも増えましたが、山下さんは、現役時代の年収も高く、すでに子どもは独立していたこともあり、60歳で退職して65歳から年金を受け取れば大丈夫だと考えていました。

山下さんの資産状況

子ども2人が大学を卒業するまでは、それまでの貯蓄を取り崩していたことで残高も減っていましたが、それでも700万円の貯蓄をキープすることができていました。長女が大学を出たのは、山下さんが58歳のとき。夫婦2人となったことで支出が減り、毎月の貯蓄額も増やすことができました。退職金として1,500万円受け取れ、60歳で定年退職をしたときには2,600万円の貯蓄があったのです。

山下さんの妻との出会いは、大学生時代のアルバイト。山下さんが大学を出て、就職後も付き合いが続き、27歳で結婚をしたそうです。妻は、大学を出るころには結婚を決めていたので就職はせず、そのまま同じ場所でアルバイトを2年間続けたため、厚生年金には加入したことがありませんでした。

「ねんきん定期便」として35歳と45歳、59歳以外の毎年誕生月にはハガキで、35歳と45歳と59歳のときには、封書で詳しい内容が送られてきていたのですが、山下さんは、内容を確認することもなく捨ててしまっていました。

「これまでお金に大きく苦労することもなかったため、年収が高かった自分は年金額も人より多くもらえるだろう。なにより2,600万円貯めたから老後は安泰だ」そう思っていました。

「お金のことは言うな」という日本人

山下さんだけではなく、1970年代から1990年代にかけて日本は高度成長期で、お金のことは気にせず、働いていれば収入も増え、年金もある程度受け取れるという考えがありました。実際に、その当時は物価も上昇していましたが、物価以上に収入が増えたことや、住宅ローンを借りられるだけ借りても収入が増えることで家族が増えても負担が少なくなっていた時代でした。

山下さんは、会社に入った当初は年収が300万円程度だったものの、年齢とともに順調に収入が増え、定年前には年収1,000万円(給与年800万円、賞与年200万円)となり、お金の心配をすることはなかったそうです。

山下さんの月の生活費は、夫婦の自由になるお金を除いても35万円です。

加えて、趣味である家庭菜園にお金をかけていたということでした。家庭菜園といっても自宅の庭の一角で野菜を育てる程度ではなく、民営のレンタル農園で畑を借り、無農薬、無化学肥料でこだわりの野菜を育てていました。昔から土いじりが好きだったため、趣味として始めた畑でしたが、土や農作業グッズにこだわっていたことで、毎月それなりの出費となっていました。

山下さんは退職して、せっかく畑の時間がたくさん取れるようになったのだから趣味を大切にして楽しく過ごそうと気楽に考えていました。

現役時代の生活水準はすぐには落とせない

それから5年、山下さんは、定年退職後も収入がないにも関わらず、生活水準がほとんど落ちていませんでした。結果、公的年金を受け取る65歳になったときには、貯蓄も大半を使い切ってしまっていました。貯蓄がなくても年金でなんとかなると、考えていたのです。

年金受給額の計算方法

老齢基礎年金は、加入月数に応じて年金額が決まりますが、老齢厚生年金は、収入に応じて年金額が計算されます。

しかし、実際に受け取った額で計算されるのではなく、年間の給与を12で割った報酬月額を32段階にわけ、標準報酬月額で計算されます。ちなみに山下さんが会社員時代に受け取っていた手取り額は、社会保険料や所得税などが引かれた、月額は54万円、賞与は140万円でした。収入は年齢によっても変わっていきますので、総期間の平均した額を基に老齢厚生年金額が計算されます。

山下さんの場合、55歳を過ぎてからの年収1,000万円でしたが、全期間で計算すると、厚生老齢年金の計算となる平均標準報酬額は50万でした。50万円は、32段階中27番目です。

2003年3月までは賞与が含まれない平均標準報酬月額で老齢厚生年金額を計算していましたが、今回は、2003年4月以降の賞与も含めた計算方法で試算してみます。

50万円×5.481/1,000×456ヵ月(厚生年金加入月)=124万9,668円/年

上記により、月額では10万4,139円を受け取ることができます。さらに老齢基礎年金の令和5年度の満額の79万5,000円、月額6万6,250円が受け取れ、合わせて17万389円です。

月に17万円では圧倒的に生活費が足りておらず、山下さんは絶望します。

「まだまだ先は長いのにこれからは毎月17万円で暮らしていかなければならないなんて……。これじゃあ生きていけないよ」

畑は縮小、アルバイト生活へ

こんな状態になってしまっては打つ手立ても少なくなってしまいます。

65歳になって筆者のもとへ相談にやってきた山下さん。今回は、畑の面積を縮小し、無理のない程度でアルバイトなどを行うように提案しました。アルバイトに行っている時間には支出も少なくなることや多少の収入が増えることで、生活費の足しにできるためです。さらに、外食も多かった山下さんに外食の回数を減らすことや、ご夫婦で家計簿をつけることも提案しました。

夫婦の収入と支出を把握してもらうためです。妻は3歳年下なので、妻の老齢基礎年金が受け取れるようになると、月に6万6,250円の年金収入が増えるので、合計で23万6,639円になります。しかし、現在の生活水準ではこれでも生活費は不足することになります。

最近では、世界的なインフレで、日本でも物価上昇が進んでいることで、インフレに対する意識も少しずつ広がっているかもしれませんが、これまでの日本では、インフレに対する意識が低い人も多く見受けられました。現役時代から、老後の生活費は公的年金だけでは不足するという意識をもって、インフレに対応できるような資産形成を考えておくことが必要です。

現在の日本では、「貯蓄から投資へ」とインフレに対応できるような資産形成を勧めてきています。NISAやiDeCoを活用した目的に合った資産形成を行うことが大切になってきます。

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表

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