「非常に多いセリフです…」司法書士が相続の相談時に断トツで聞かれる、“多くの人が勘違いしている”こと
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月17日 10時45分
画像:PIXTA
「相続は事前に話し合わないと、9割が揉める」……裁判沙汰にならないまでも、遺産を巡って不仲になる、遺産分割以外にも介護、お墓に関するトラブルなどが発生することを考えると、9割という数字は決して大袈裟なものではありません。司法書士兼行政書士である太田昌宏氏の著書『円満相続のための 家族会議の始め方』(メディアパル)より、一部抜粋して紹介する本連載。太田氏が、司法書士ならではの視点から、トラブルを未然に防ぎ、円満な相続を実現するための家族会議の方法を、できるだけ分かりやすい表現を用いて解説します。
「子の配偶者」は相続人ではない
相続について考えはじめる際に重要なことの一つが、「誰が相続人になるのか」を把握することです。財産を引き継ぐ可能性がある人を、もれなく会議に呼んで話し合う必要があるからです。
法律では、次のように決まっています。
①配偶者は必ず相続人
ただし、亡くなっている場合は「配偶者なし」です。
②第一順位は子(養子含む) 、第二順位は父・母、第三順位は兄弟姉妹
必ず相続人となる配偶者のほかに家族がいる場合、相続人になる人は優先順位がつけられています。子(場合によっては孫)がいれば相続人になります。
子がいなければ親が相続人になり、子も親もいなければ、兄弟姉妹(場合によっては甥や姪)が相続人になります。
相続開始時におなかにいる赤ちゃんも相続人になります。また、被相続人が養子で、子がいない場合は養親と実の親が相続人になります。ちなみに、子の配偶者は相続人ではありません。
③同時死亡の場合、亡くなった者はたがいに相続人にならない
たとえば、両親と子ひとりの3人家族で、事故や災害で両親が同時に亡くなり、子が助かった場合、父の相続人は子、母の相続人も同じく子です。死亡した夫婦間で相続は発生しません。
この相続人に該当する人が、家族会議に参加してもらうべき人と言えます。
複雑な家族関係にある相続人に要注意
やや複雑な家族関係にある場合、意外なところに相続人がいる可能性があります。家族会議を行う際、声をかける相手になりえるでしょう。
①再婚や再々婚している場合
現在の配偶者が相続人で、離婚した過去の配偶者は相続人にはなりません。ただし、過去の配偶者との間に子がいれば、親権の有無など関係なく、すべて相続人になります。
②所在不明の子がいる場合
音信を絶っていて今はどこにいるかわからない、生きているかもわからない子も、生きていれば相続人なので、探さなければなりません。
③子が先に亡くなっている場合
亡くなった子は相続できませんが、その子、つまり孫がいる場合は、子の立場をつぐ相続人(代襲相続人)となります。
どの相続人に何を相続させるか
相続人が誰かがわかれば、次は誰に何を相続させるかを考えます。
日々の相談で非常によく登場するセリフを紹介します。ずばり、「長男や長女がすべて相続するのは当然では?」という言葉です。
この発言は、たいてい子どもの側から出てきます。実際に相談を受けるのは親が亡くなってからのほうが多く、遺産分割の話し合いの不満がこの言葉につながります。戦後まもなくのころまで、日本には家督相続という制度がありました。戸主(≒家長)が「家」の財産を相続するルールだったのです。
令和の時代になっても、この意識は親にも子にも根強く残っているようです。現在、この制度が存在しないことは、覚えておきましょう。
相続が始まる前の親からの相談で多いのは、「同居で面倒をみてくれている子どもに多く残してやりたい」です。
実際の貢献度や感情面からみて配慮したいのはわかりますが、法律ではそもそも血のつながっている家族と同居している人はたがいに助け合う義務があるとされ、その点は考慮されていません。
この場合、遺言書や贈与など組み合わせて対応することになります。ちなみに、法律上は寄与分という制度がいちおうあるのですが、認められる場合は限定的です。
Q長男の嫁による介護は特別な寄与?
同居して介護し、最後をみとった相続人が「寄与分」を主張することがあります。また、長男の嫁が義理の親の介護をしていたような場合に、「特別な寄与」を主張することがあります。
これらは、療養看護などの労力を提供した対価として金銭を請求するものですが、認められるためには、いずれの場合も「被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与」をした場合に限られ、一般的な生活支援や通院の付き添い程度では認められないと考えられます。
たとえば、長男の嫁が義理の親の介護をしていた場合も、「特別な寄与」に該当するには、一定の用件を満たさなければなりません。
太田 昌宏
司法書士・行政書士
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