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業務内容も会社も同じだが…65歳以降の収入に圧倒的に差がつく「“半”個人事業主」という働き方【専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月25日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金に対して不安を抱えている人は少なくありません。行政書士でリスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏は、業務委託契約のかたちをとることで、「“半”個人事業主」という働き方を提案しています。木村氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、詳しく解説します。

“今いる会社”で“仕事もそのまま”!60歳で「“半”個人事業主」になるという選択

筆者は、「今いる会社」と「仕事はそのまま」で「(雇用ではなく)業務委託契約」を締結して働く“半”個人事業主という働き方を提案しています。

担当する仕事は基本的に変わりません。会社との契約を今までの雇用から業務委託に変え、出社日数を減らします。減らした時間を準備時間として活用し、ステップを踏んで“半”個人事業主から個人事業主へシフトしていくことを考えます。

ベストなシナリオは、多くの企業で役職定年により役割が変わり給与が下がる55歳から準備を開始して、60歳定年のタイミングで“半”個人事業主になるというものです。もちろん、60歳から準備を進めてもOKですが、ポイントは「独立」(起業ではありません)までに5年間の準備期間を確保し、サラリーマン時代の最終期間を徹底的に活用することにあります。

働く人の9割は「雇われ社員」…一番ニーズがある“ごく普通の仕事”を業務委託で担う

総務省の労働力調査(2022年)によると、日本の雇用者(=サラリーマン)は6041万人で就業者に占める雇用者の割合は89.9%です。9割弱の人が企業に雇われて働いています

これを言い換えると、日本で一番ニーズがある仕事は、講師や国家資格者のようなスペシャリストの仕事ではなく、営業や人事、経理など会社の中にあるごく普通の仕事ということになります。

今は雇用されているサラリーマンがその役割をほぼすべて担っていますが、その仕事を雇用ではなく業務委託で担っていくのが“半”個人事業主です。

2017年に出版した拙著『働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書』(朝日新聞出版)でも、こうした“半”個人事業主の働き方を提唱させていただきましたが、その当時は副業・兼業解禁の気運も低く、業務委託契約を締結して働くことはまだまだイレギュラーな感覚でした。

しかし、今は違います。企業が副業・兼業を解禁するにともなって業務委託で仕事をすることに対する抵抗感が少なくなっています。

データが示す副業・兼業の実態

経団連が2022年10月に行なった「副業・兼業に関するアンケート調査結果」を見てみましょう。この調査は、経団連会員企業における副業・兼業に関する取り組み状況やその効果などを把握するために実施したものですが、会員企業の副業・兼業解禁状況だけでなく、社外からの副業・兼業人材の受け入れについても調査をしています。

その結果は、社外からの副業・兼業人材の受け入れについては、回答企業の30.2%が「認めている」または「認める予定」と答えています

社外から副業・兼業人材を受け入れることの効果については、「人材の確保」(53.3%)、「社内での新規事業創出やイノベーション促進」(42.2%)、「社外からの客観的な視点の確保」(35.6%)が上位を占めており、企業における必要な人材の確保策として、副業・兼業者の受け入れを図っていることが明らかになっています。

経団連の会員企業は伝統的な大企業が多く、業務は正社員が中心となって担ってきました。かつては、正社員至上主義の色あいが強く、中小企業に比べると雇用(特に正社員)以外の働き方の受け入れについては決して積極的ではありませんでした。

しかしながらこの調査からもわかるように、自社の社員に対する副業・兼業の解禁にともない、雇用以外の働き方(=業務委託)に関しても抵抗感がなくなってきています。

電通や健康機器のタニタが積極的に自社社員の個人事業主化を図っていることは有名ですが、多くの企業で雇用に限らず多様な働き方を柔軟に受け入れるようになっているのです。 

時代は変わりつつあります

筆者も一社専従型のサラリーマン生活(入社以来30年間一度も転職経験はありません)を続けたのちに、(今まで勤務していた会社と直接ではありませんが)サラリーマン時代から関係の深い会社と業務委託契約を締結し、個人事業主として独立しました。

少ないリスクで「指揮命令」を受けない・「時間・場所」を制約されない「独立」という働き方が実現できるのが、“半”個人事業主です

[図表1・2]は、多くのシニアサラリーマンがたどるルートであろう「今の会社に残り続ける人の収入シミュレーション」と、これから本書の中で提唱する「60歳で“半”個人事業主化した人の収入シミュレーション」を図示したものです

“半”個人事業主 vs 再雇用の65歳以降の収支比較

具体的なイメージを持っていただくために、「半個人事業主」「再雇用」の2つのシナリオに実際の金額を入れてみました。

まずは、前提となる収入イメージです。令和4年賃金構造基本統計調査の概況(2023年3月17日発表)によると60歳~64歳男性の賃金平均321.8万円となっています。

少々古いデータですが、労政時報「高年齢者の処遇に関する実態調査(2019年11月22日号)」による再雇用後の年収水準平均も321.8万円と偶然にも同額になっていますので、60歳定年再雇用後の平均的な賃金はほぼこの水準と考えていいと思います。

再雇用のレールに乗った場合には、65歳までは基本的には増えることも減ることもなくこの水準が続き、65歳で会社の雇用義務はなくなりますので、多くのケースにおいてこの段階で年金以外の収入はゼロになります(70歳までの全員一律での就労を保証している企業はまだほとんどありません)。

これからの時代は65歳で悠々自適というわけにはいきませんので、多くの方がハローワークなどに通い、今までの経験とはまったく関係のないパートタイマー的な業務を探すことになりますが、仕事にありつけたとしてもその給与水準は厳しいものがあります。最低賃金の時給水準というのが現実です。

また、65歳以降のパートタイマー的な仕事に、サラリーマン時代の役職、実績、所属企業の規模などは一切関係ありません。大企業の元事業部長であろうが、平社員であろうが、全員同列でのスタートです。健康で人柄もよく、与えられた仕事を要領よくこなす人がこの市場では要求されます

ちなみに、東京都の最低賃金(2023年10月1日以降)は、時給1,131円ですので、仮に週5日/月20日8時間勤務をした場合(体力的にも65歳以降の「週5日フルタイム勤務」は現実にはなかなか厳しいものがありますが)で月収17万8,000円(=年収213.7万円)です。

“半”個人事業主のメリット

これに対して、“半”個人事業主戦略では、60歳以降はフルタイムではなく週3日程度働き、余裕のできた残りの2日間は新規情報・スキル獲得や新規クライアント獲得のための営業活動に充当することを想定しています。

“半”個人事業主としてのスタート当初(60歳)の年収は、週3日のサポートで193.2万円(321.8万円×3/5日間=193.1万円)と、再雇用よりも減額した形でのスタートになりますが、65歳までの5年間で今の会社以外のクライアントを増やしていきます。

新規クライアント獲得の時期については個人の状況などに応じて変わりますが、「(大多数のシニアサラリーマンと同じように再雇用のレールに乗っていれば)やりがいも持てず無為にすごしている再雇用の5年間」を意識的に活用してクライアントを2社、3社と新たに獲得することは決して非現実的なことではありません

シミュレーションしてみよう

具体的にシミュレーションしてみましょう。

“半”個人事業主となった以降は、2日間の余裕時間を営業活動に充当し、まずは1年間かけてもう1社の業務委託契約締結を目指します(61歳時点)。目標とする業務委託料は、月4回(週1回)のサポートで1社月額20万円(=年間240万円)です。

さらに、次の1年間をかけて(62歳時点)もう1社業務委託契約を増やします。これで3年目の売上は673.1万円(193.1万+240万円+240万円)となり、まずこの段階で再雇用の給与水準(322万円)をはるかにしのぐ(2倍!)ことができます。

個人事業主の強みはこれからです。再雇用の場合には、先述の通り、多くのケースで65歳で終了になりますが、個人事業主には雇用のように制度としての終了はありません。65歳以降も、自分が望む限り、体力の続く限り、いつまでも働くことができます。高さではなく面積で稼いでいく戦略です

雇用であれば本来65歳で終了のところを業務委託契約であるがゆえに継続でき、70歳を超えて続けている個人事業主の方もいらっしゃいます。

65歳以降も長年勤務してきた会社との業務委託契約を継続し、さらに2社の業務委託を継続できたとすれば、673.1万円のベース年収が継続可能です。

さらに、ここから新たにクライアントを拡大してもいいですし、個人事業主の業務内容をコンテンツ化することによって専門領域のセミナー講師として活躍することも十分可能です。

“半”個人事業主となった場合の65歳以降の「支出」はどうなる?

今度は、支出面を見てみましょう。

総務省「家計調査報告(家計収支編)―2022年(令和4年)平均結果の概要」を見ると、65歳以上で夫婦のみの世帯の実収入は24万6,237円、社会保険料などを引いた可処分所得は21万4,426円となっています。

一方、公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で老後に必要な最低日常生活費は23万2,000円、ゆとりのある老後生活費は37万9,000円となっています。やはり、旅行に行ったり孫におこづかいをあげたりもできる、ゆとりある老後生活を送りたいものです。

そのためには、先ほどの可処分所得から考えると、毎月16万4,574円(37万9,000円-21万4,426円=16万4,574円)が不足します。

この金額ですが、先ほど見た65歳以降にパートタイマー的な仕事にフルタイムで従事した際の給与水準(17万円)とほぼ同額です。もちろん、貯金を取り崩す手もありますが、65歳以降もゆとりある老後生活をフローで収支を賄うためには、65歳以降も毎日8時間働き続けなければいけません

これが“半”個人事業主戦略をとり、本来の再雇用期間の5年間のうちにクライアントを、仮に2社獲得できれば、673.1万円(=56.1万円/月)の収入を維持できます。個人事業主の場合、時間にリンクした働き方はしませんので、自分で時間をコントロールしながら自分の得意分野で仕事を続け、収入を獲得し続けることができます

また、個人事業主は厚生年金の被保険者ではありませんので、収入に応じて年金が停止となる在職老齢年金の支給停止の適用もありません(いくら稼いでも厚生年金は全額支給となります)

木村 勝

行政書士

リスタートサポート木村勝事務所 代表

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