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親孝行にも税金がかかるんですか!? …81歳母へ〈高級老人ホーム〉をプレゼントした年収1,200万円の50歳長男、3年後に「大後悔」のワケ【税理士が警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月21日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

親から子へ、祖父母から孫への高額な贈与について、税務署は厳しく目を光らせています。そのようななか、実は「子から親への援助」にも納税トラブルが少なくありません。「親孝行がしたい」と母親を「高級老人ホーム」に入れた大手企業勤務のエリートAさん(50歳)の事例をもとに、生前贈与の注意点をみていきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。

「母親の夢」を叶えられて大満足の長男だったが…

都内の大手企業に勤めるAさん(50歳)。このたび、父の相続で受け継いでいた株式を売却し、多額の利益を得ることができました。

大手企業で順調にキャリアを歩んできたAさんの年収は1,200万円ほど。Aさんには子どももおらずお金には困っていなかったため、この売却益を“最後の親孝行”として、母(Bさん)のために使おうと決意。以前実家に帰った際、テレビの高級老人ホーム特集をみながら「海が見えていいわねえ。こんな素敵なところに住んでみたかったわ」と母が言っていたことを思い出しました。

81歳のBさんは心身に不調なく、介護は特に必要ありませんでしたが、長男であるAさんが中心となって家族で話し合いました。

その施設は高級なだけあって、入居一時金は約1億円。家族は入居一時金の額を聞いて驚きましたが、Aさんが「俺が親父からもらった株の売却益で賄える」と粘り強く説得したことで、それならと承諾。また、月々かかる生活費は30万円ほどで、基本はBさん自身の年金と預金を切り崩しながら、場合によってはAさんも金銭を援助することになりました。

「会員制リゾートホテル」がコンセプトの施設は、ガラス張りで海が一望できるゴージャスなダイニングに、フィットネスルームや温水プールといった設備も整っており、文句のつけようがない素晴らしい環境です。

「これから毎日こんなに素敵な場所で暮らせるなんて」と感激。そんな母親を見て、Aさんも大満足でした。

ある日、税務署から1本の不在着信が…Aさんが折り返すと

Bさんの入居から3年後、Aさんのもとに税務署から1本の連絡が入ります。

着信履歴に残っていた見知らぬ番号を調べたAさんは、「税務署? 確定申告はしたことないし、会社の年末調整でいろいろ済んでるはずだけど……俺なにかしたかな?」と不思議に思いました。

早速折り返して話を聞いたところ、電話口の税務署職員から衝撃の事実を告げられたのです。

そんなバカな…Aさんが耳を疑った税務署職員のひと言

税務署「突然の連絡申し訳ありません。確認したいことがありまして……。お母さまが老人ホームに入居されているとのことですが、本当でしょうか?」

Aさん「ええ、そうですよ。もう3年ぐらいになるかな」

税務署「なるほど。ではお母さまは、「要介護認定」は受けてらっしゃいますか? ご自宅では生活が難しいというような状況でしょうか」

Aさん「いえいえ、長年毎日散歩していたのがよかったのか、いまのところピンピンしていますよ(笑) 日常生活は特に問題なさそうですね」

税務署「では……、なぜ老人ホームに入居されているのでしょうか。入居一時金はお母さまが支払われたのですか?」

Aさん「ああ、入居一時金はですね、父の相続で得た株の売却益が入ったので、最後の親孝行だと思って私が支払ったんですよ。母も『最期は海が見える綺麗なところに住んでみたい』と言っていたものですから」

税務署「なるほど。では、その「入居一時金」は親への贈与に該当しますね。贈与税の申告をお願いいたします

Aさん「そんな馬鹿な……親孝行にも税金がかかるんですか!?」

結局、「親孝行に」と高級老人ホームをプレゼントしたAさんは、数千万円もの贈与税を支払うはめになってしまいました。

日常的に必要な金銭のやり取りは問題ないが…

心配な子どもへの仕送り、定年後の親への生活費送金など、親子間の金銭授受はよくあることでしょう。その際、「贈与税」の存在などまったく気にしていないという人も多いのではないでしょうか。しかし、たとえ親子間であっても、金銭のやり取りは原則贈与税の対象となります

ただし、贈与税の非課税規定においては下記のような規定があることから、日常的に必要なレベルでの金銭のやり取りは問題になりません。

(相続税法21条の3①二)

次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。

(中略)

「二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」

税務署が目を光らせている「親子間での高額な送金」

しかし、多額の金銭や財産が動くとなると話は別です。高級車代だといって子ども名義の預金口座に多額の現金を振り込んだり、土地建物の名義を変更したといった場合は、贈与税の対象となります。こうしたケースは、上記の「通常認められるもの」の範囲から外れてしまうからです。

今回、Aさんが税務署から指摘を受けることになったのは、高級老人ホームの一時金が“必要に迫られたもの”というよりは、たとえるなら「高級マンションを購入してプレゼントしたもの」と同一視されたためであると考えられます。

金額によって「非課税」「課税」が分かれる?…実際の判例

実際に、Aさんのように「老人ホームの入居一時金」については、裁判でも争われた事例があります。

【事例】国税不服審判所の裁決

<裁決事例1>平成22年11月19日裁決

入居一時金:945万円

・自宅での介護が困難、地味な施設(認定上) ・入院と同視できるとして贈与税は非課税

<裁決事例2>平成23年6月10日裁決

入居一時金:1億3,370万円

・施設には、ジムやプールといった施設あり

社会通念上、生活に必要な住居の費用ではないとして贈与税は課税

事例1については、自宅での介護が困難であること・施設の金額が高額でなかったために贈与税はかかりませんでしたが、今回のAさんの事例と似ている事例2については、「社会通念上生活に必要な費用ではない」として贈与税が課税されるという判決が出ています。

富裕層をターゲットにした“ハイクラスな老人ホーム”が増加

高齢化が進むにつれ、老人ホームなどの高齢者施設の数は近年ますます増加してきています。

また、各施設のサービスの種類も多様化が進んでおり、有料老人ホームやシニア向け分譲マンション、ケアハウスといった「介護認定なしでも入所できる」施設が増えているのも特徴的です。

どのような事情であっても、施設に入る際に必要となるのが「入居一時金」です。高級な施設の場合、一時金が非常に高額に設定されているケースも少なくありません。

ひと昔前であれば、自宅で子ども世帯と一緒に暮らして介護をしてもらうのが一般的でしたが、いまは時代が変わっています。「子どもの世話になり肩身の狭い思いをするのであれば、お金を使って好きに暮らせる老人ホームのほうがよい」と考える方が増えているのです。

特に富裕層をターゲットにしたハイクラスな老人ホームは、建設前から予約で埋まるなど注目を浴びており、入居を開始する年代も若くなってきています。

「高額な金銭の移動」には要注意

ますます高齢化が進み、富裕層向けの高級老人ホームの需要も増えています。

必要最低限の施設であれば問題になる可能性は低いですが、今回のケースのように高級老人ホームの高額な入居一時金を本人以外が支払った場合、贈与税の対象となる場合があるためご注意ください。

なお、子どもが親のために支払う場合はもちろん、妻の入居費用を夫が支払うようなケースでも注意が必要です。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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