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貯蓄と退職金で「3,500万円のマイホーム」を買った60歳夫婦に、税務署から〈1通の封書〉が…後日「1,195万円の納税」を求められたワケ【税理士が警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月28日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後、“終の棲家”として中古マンションを購入した仲良し夫婦。中古ながら、念願のマイホームに大満足の二人でしたが、税務署から届いた「1通の封書」が、夫婦の幸せを崩壊させることに……。夫婦間のお金の管理にまつわる悲劇について、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。

“念願のマイホーム”を購入した夫婦…税務署から「お尋ね」が

定年退職を迎えた60歳の男性Aさんと、結婚後は専業主婦として家庭を支えた同い年の妻Bさん。定年直前のAさんの年収は約900万円ほど。転勤の多かったAさんは、住宅の購入は退職後と決めており、定年まで社宅住まいでした。

Bさんは家計をやりくりしつつ、将来の住宅購入のため、Bさん名義でお金を貯めていました。

このたび、Aさんの退職に伴い、貯蓄の3,000万円と退職金1,500万円の一部を使って、約3,500万円のマンションを購入。中古住宅ではあるものの綺麗にリフォームされており、また駅近で周辺環境も良く、なにより「念願のマイホーム」が手に入り、大満足の二人。

定年後の新たな生活をスタ-トし、マイホームでの生活を満喫していました。そんなとき、A夫妻のもとへ税務署から1通の封書が届いたのでした。

税務署から届いた封書…「お尋ね」とは?

ある日、税務署から届いた1通の封書。入っていたのは税務署からの「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね(以下「お尋ね」と言う)」でした。

不動産を購入した際、その不動産を不動産登記することが義務付けられましたが、この登記の移動があった場合には、その所有権の移動について法務局から税務署に連絡がいくこととなっています。そこで税務署は、その不動産を購入した資金が一体どこから出たのかを調査するのです。

お尋ねでは、不動産を購入した資金の調達方法について確認されます。その資金は誰が出したのか、あるいはどこから借り入れして支払ったのかなどです。

その購入資金について、たとえば相続により得た資金であるとか、購入した人の年収や借入状況について確認し、その物件を購入できるだけの収入であるとか、おおむね妥当であると判断されれば、調査は以上となります。

このお尋ねについて回答せず放置しておくと、さらに督促状が送られてきます。それにも答えずにいると、最悪の場合、税務調査に入られる可能性があるのです。

資金は貯金と退職金なのに…Aさん「なにかの間違いだろ」

Aさんはこのお尋ねについて、ありのまま回答しました。資金はBさん名義の預金から3,000万円、Aさんの退職金から500万円支払い、その支払金額に応じた所有権登記を済ませていることなどを記入し、税務署に送り返しました。

お尋ねを返送したのち、しばらくして税務署から電話がかかってきました。内容は、Bさんの預金が、Aさんの「名義預金」にあたるというものでした。聞くと、住宅購入資金の3,000万円はAさんからBさんへの贈与となり、贈与税の申告が必要となるとのことでした。

贈与額3,000万円に対する贈与税額は、下記のとおりです。

(3,000万円-110万円〔基礎控除額〕)×50%〔贈与税の税率〕-250万円〔控除額〕=1,195万円

なんと、3,500万円のマイホームを自己資金で買ったA夫妻は、税務署から「1,195万円の贈与税」を払うように求められたのでした。

衝撃の事実に、Aさんは思わず「なにかの間違いだろ……そうに決まっている」と、なかなか現実を受け止めきれません。

なぜ妻の預金と認められなかったのか?

妻であるBさんの名義で作った預金通帳にお金を積み立てていたとしても、そのお金の出どころがAさんだった場合、Bさんの預金ということにはなりません。

Bさんは専業主婦であるため、自身の収入はゼロです。この場合、預金に入っているお金はあくまでAさんのものになります。そのため、建物の登記名義分の3,000万円は、「AさんからBさんに対する贈与である」との認定を受けることとなってしまったのです。

高すぎる贈与税の支払いを「回避」する方法

Aさん夫婦は多額の贈与税を支払うこととなってしまいましたが、どのような方法であれば贈与税の支払いを回避できるのでしょうか?

①暦年贈与を利用する方法

毎年贈与契約書を作成し、たとえば毎年100万円を妻の通帳に振り込むなど、客観的に贈与と認められる方法により贈与を行う方法があります。

➁夫婦間の贈与税の配偶者特例(おしどり贈与の特例)

この特例は、要約すると「結婚から20年経過している夫婦であれば、すでにある自宅の権利を2,000万円分贈与するか、これから購入する自宅の購入資金2,000万円を贈与しても贈与税を課税しない」というものです。

Aさん夫妻の婚姻期間が20年以上経過しているなど要件を満たす場合、こちらの特例を利用すれば、今回の贈与税額は(3,000万円-110万円-2,000万円)×40%-125万円=231万円となり、贈与税額を964万円も減らすことができます。

なお、このおしどり贈与の特例は、相続後を考慮した場合、相続税における小規模宅地の特例が使えなかったり、不動産取得税と登録免許税が高くなったりするなどのデメリットもあります。適用の際は専門家に相談のうえ、総合的に判断するとよいでしょう。

「高額な財産の購入」には要注意

贈与税は、生活費などには課されませんが、住宅などの高額な資産を購入した場合には注意が必要となります。今回のように不動産登記を行った場合だけでなく、Aさんが亡くなった場合なども、Bさん名義の預金は「名義預金」として相続税の課税対象となります。

高額財産を購入する夫婦や、これから住宅ロ-ンを組んで自宅を購入するカップルも、その支払い方法や登記名義の按分によっては、贈与を指摘される恐れがあります。Aさん夫妻のような悲劇に見舞われないよう、購入前によく調べておきましょう。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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