92歳父の年金月23万円で食いつなぎ、薄暗い自室にひきこもる61歳兄…命綱の父が倒れ、兄が嗚咽ながら吐露した「衝撃事実」に妹絶句【9060問題の実態】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月23日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
ひきこもり等で収入がない50代が、80代の親に面倒をみてもらう「8050問題」。親の長寿化とひきこもりの長期化で、近ごろでは「9060問題」といわれるように。本記事ではAさんの事例とともに、9060問題の実態について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
増加する“ひきこもりシニア”…「8050問題」から「9060問題」へ
2023年3月に内閣府が発表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、ひきこもりの推計は146万人(15~64歳)という数字になっています。
中高年のひきこもりも問題になっています。厚生労働省「令和5年度版厚生労働白書」によると、40歳~64歳のなかでは、60~64歳の者の割合(36.0%)が最も高くなっています。定年退職等により60歳で仕事を辞めた人達が、その後仕事に就かないまま、ひきこもりになってしまうケースが多いことがわかります。
また、ひきこもり状態になってからの期間も3年以上が約半数となっています。
ひきこもりになってしまう理由もさまざまですが、次のように、40歳以上の場合は「退職したこと」や「病気」「人間関係」が大きく影響しているのがわかります。
シニア世代のひきこもりは親もかなりの高齢です。ひきこもり等で収入がない50代が、80代の親に生活の面倒をみてもらう「8050問題」。親の長寿化とひきこもりの長期化で、このごろでは「9060問題」といわれるようになったようです。
92歳の父親の年金に頼って暮らしている61歳の息子
61歳のAさんは、郊外の一戸建てに92歳の父親と二人暮らしの男性です。一見、定年退職した男性が父親の面倒を見ながら暮らしているように思われますが、実はAさんは「ひきこもり」。92歳の父親の年金(月23万円程度)で食べさせてもらっているのは子どものAさんのほうなのです。
Aさんは夜中にコンビニに行ったり、数日に一度スーパーに買い物に行ったりすることはできるのですが、ほとんどを薄暗い自室で過ごしています。父親は歩くことはできるのですが、自分ひとりでの生活は難しく、デイサービスや訪問介護を利用しながら暮らしています。
Aさんの母親は10年ほど前に亡くなっており、Aさんの50代の妹は父親の様子を見に嫁ぎ先から時々やってきては世話をしてくれています。
この妹が父親の介護サービスの手続きなどやってくれたのですが、デイサービスの送迎の人が来ても訪問介護のホームヘルパーさんが来てもAさんは顔を出そうとはしません。母親が亡くなったときも葬式の手配などすべて妹任せで、Aさんはほとんど部屋から出ることはありませんでした。
親戚の人達も「困ったもんだねぇ」と言うばかりで気持ち悪がって知らん顔でした。
Aさんがひきこもりになったワケ
Aさんがひきこもりになったのは43歳のときです。ひきこもりになって、もう20年近くになります。昔は結婚もして子どもこそいませんでしたが、Aさんの実家で当時はまだ元気だった両親とAさん夫婦の4人で静かに暮らしていました。
もともと大人しかったAさんですが、40歳を過ぎて勤めていた会社が急に倒産、次の仕事もなかなか決まらなかったことから離婚につながってしまい、そのころからすっかり暗くなりひきこもるようになってしまいました。
収入がまったくないAさんですが、生活は92歳の父親の年金とわずかな貯蓄頼みです。母親は亡くなるまでAさんの心配をしており、父親は文句ひとつ言わずにAさんにお金を渡しています。
妹さんはAさんに対し、ときどき不満をぶつけていました。しかし、令和になったばかりのころに川崎市や練馬区で立て続けに起きた事件がきっかけで、その後は腫れ物にさわるようになってしまい、なにも言わずに我慢して父親の面倒を見続けていました。
父、倒れる
ある夏の暑い日、妹さんが実家を訪ねると父親が熱中症で倒れているのを発見します。あわてて救急車を呼び、結果命に影響はなかったのでよかったのですが、部屋にひきこもっていて父親の異変に気付かなかった兄にこのときばかりは妹さんも激怒しました。
「兄さんがしっかりしないから、お父さんが死んじゃったらどうするの!? お父さんに面倒みてもらってるんでしょ。なにやってるの!!」
すると、なにを言ってもいままで無表情だったAさんが突然泣き出しました。
「本当は僕もね。とても悲しいんだ。妻がいなくなったときも、お母さんが死んでしまったときも。あれからずっと心が苦しくて苦しくて仕方がないんだよ。でも、人の目が怖くて動くこともできない。お母さんもお父さんも優しかったし、自分で人生を終わりにすることもできない。僕はダメな人間なんだ」
Aさんは嗚咽しながらも続けます。
「僕は孤独死なんか怖くないと思っているんだ。食べるものがなくなってどうしようもなくなっても仕方がないと思っている。でもまだ食べられるんだ。仕事を辞めたあともお父さんが僕の将来を心配して国民年金の保険料を払い続けてくれたから、昔働いた厚生年金の分も合わせると月に10万円くらいにはなる。お父さんの生命保険もある。僕は65歳を過ぎたあともまだまだ食べれるんだ。僕はどうしたらいいんだろう。どうすればいいと思う?」
Aさんの鬼気迫る告白に妹さんは固まってなにも言えなくなってしまいました。そして、両親ともAさんのこの苦しみを理解していたからなにも言わなかったのかな、と思いました。
<参考>
※ 令和5年度版厚生労働白書 本編図表バックデータ|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 厚生労働省は、令和4年1月に、ひきこもりに関する情報をまとめたひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」を開設しています。 →https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/ また、全国のひきこもり支援センターの相談窓口はこちらから。 →https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/support/
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表
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