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「夫が亡くなったけれど、遺産はないし特に手続きは必要ないですよね?」は大間違い!借金、未払いの税金などの「マイナスの財産」相続放棄のタイムリミットは?【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月1日 11時15分

「夫が亡くなったけれど、遺産はないし特に手続きは必要ないですよね?」は大間違い!借金、未払いの税金などの「マイナスの財産」相続放棄のタイムリミットは?【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者が亡くなると「相続」が始まります。とはいえ実際に相続人のひとりとして遺産相続を進める立場になった場合、大半の人はどうすればよいか理解していないかもしれません。相続トラブルを回避するには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか? 本稿では、上谷さくら弁護士の著書『新おとめ六法』(KADOKAWA)より一部抜粋して、相続の注意点について、ケース別に解説します。

手続き:配偶者に先立たれたときにすべきこと

配偶者が自宅で亡くなったときはまず、かかりつけ医がいれば連絡しましょう。特に病気もなくて自宅で亡くなった場合は、救急車を呼ぶか、警察に連絡しましょう。死亡が確認されたら、死亡診断書や死体検案書を作成してもらいます。

事件性があれば、司法解剖などが必要な場合もあります。この死亡診断書は死亡届と一体になっていますので、死亡届に必要事項を記入して、配偶者が亡くなってから7日以内に役所に提出してください。

解説:相続するのはどんなもの?

配偶者が亡くなると、相続が始まります。財産の内容によって、相続財産になるものとならないものがあります。

たとえば、生命保険の死亡保険金は、保険契約の対価として支払われるので、相続の対象ではありません。ただし、相続税の対象にはなるので注意が必要です。

マイナスの財産に注意

「私の家は、貯金もないし、夫は借金してたくらいだから、相続は関係ない」というのは間違いです。借金や未払いの税金などの「マイナスの財産」も相続されます。

マイナスの財産が多い場合は、「相続放棄」(民法第915条)の手続きをすべきです。相続放棄すれば、配偶者が残した借金を支払う必要はありませんが、放棄しない場合は支払わなければなりません。

相続放棄は、「相続の開始を知ったとき」から3カ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。ほとんどの場合、配偶者であれば亡くなったことはすぐわかりますので、「亡くなってから3カ月以内」と覚えておきましょう。

財産の全容が不明で調査に時間がかかりそうなときは、家庭裁判所に相談すると期限を延長してくれる場合がありますので、遠慮なく相談しましょう。

なお、プラスの財産とマイナスの財産の両方があって、相続したほうがいいのか、相続放棄したほうがいいのかわからない場合は、専門家に相談しましょう。

「内縁関係」に相続権は発生するのか

ポイント:内縁関係の場合は相続できない

配偶者には必ず相続権があります。しかし、内縁関係の場合は、どれほど親密であっても相続権はありません。ただし、法定相続人が一人もいない場合には「特別縁故者」として、相続財産を受け取れる場合があります。遺言があれば、相続財産を受け取ることができますので、生前に相続の話をしておきましょう。

解説:再婚の場合や婚姻外の子がいる場合の相続

誰が相続するのかは、民法で定められています。相続人を確定するためには、亡くなった配偶者が生まれてから亡くなるまでの、すべての戸籍謄本を取得することが必要です。亡くなった配偶者が、実は家族に内緒で婚外子を認知している場合や、まったく知らない親戚がいたりしますので、注意が必要です。

夫が再婚で、前婚の妻との間に子どもがいたり、婚姻外で認知した子どもがいる場合、その子どもたちにも相続権があります。夫と疎遠でも、子どもの相続割合は全員平等です。また、認知していない子どもがいた場合、死後でも認知される可能性があり、その場合は相続権を主張できます。その子どもの相続の割合も、ほかの子どもと平等です。

ポイント:姻族終了

配偶者が亡くなった場合、配偶者の家族との関係を終了させることができます。その場合でも、相続には影響がありません。姻族を終了できるのは配偶者だけです。望んでいないのに亡くなった配偶者の家族から姻族を終了させられることはありません。

解説:住む場所がなくなる!?

2020年4月1日から施行された改正民法では「配偶者居住権(民法第1028条)」「配偶者短期居住権(民法第1037条)」という権利が設けられました。

これまでは、たとえば妻が夫名義の家で暮らしていたとき、夫の死後もそこに住み続けるためには、遺産分割や遺言書によってその不動産の所有権を取得する必要があり、不都合であることが問題となっていました。

改正法では、亡くなった人の配偶者が相続開始のときに遺産の建物に居住していた場合、遺産分割または遺言によって、その建物を無償で使用収益をする権利(配偶者居住権)を取得できるようになりました。

あくまで法律上の配偶者に認められているものなので、子どもや内縁関係の人には認められません。

ただし、場合によっては、デメリットが多いケースもありますので、専門家に相談しましょう。

あなたを守る法律

「民法」第882条 相続開始の原因

相続は、死亡によって開始する。

「民法」第890条 配偶者の相続権(一部抜粋)

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。

関連条文

「民法」第887条 子およびその代襲者等の相続権

1 被相続人の子は、相続人となる。

2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または第891条の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、または第891条の規定に該当し、もしくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

「民法」第889条 直系尊属および兄弟姉妹の相続権

1 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

 ①被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

 ②被相続人の兄弟姉妹

2 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。

「民法」第900条 法定相続分

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

 ①子および配偶者が相続人であるときは、子の相続分および配偶者の相続分は、各2分の1とする。

 ② 配偶者および直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。

 ③ 配偶者および兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。

 ④ 子、直系尊属、または兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

「民法」第901条 代襲相続人の相続分

1 第887条第2項、または第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。

2 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

「民法」第1028条 配偶者居住権(一部抜粋)

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用および収益をする権利を取得する。

 ①遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

 ②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

「民法」第1030条 配偶者居住権の存続期間(一部抜粋)

配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。

「民法」第1035条 居住建物の返還等(一部抜粋)

1 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。

上谷 さくら

弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長

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