私は娘なのに…94歳母が入居する施設でまさかの門前払い!財産を独り占めしたいがために68歳の実兄がとったあり得ない暴挙の中身【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月2日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
65歳のRさんは、2人きょうだいの妹。亡くなった父の会社を引き継いだ兄に対し、実家から離れた場所に嫁いだ彼女は子育てに励んでいました。そんな中、施設に入った94歳の母を訪ねようとしたところ、施設は「お兄さんから(Rさんには)会わせるなと言われているので会わせられません」の一点張り。どうやら財産の独り占めを狙う兄が、一向に母親に会わせまいとするのです。せめて母が元気なうちにもう一度会っておきたいRさん……。彼女がとれる対策について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、弁護士からの回答もあわせて詳しく解説します。
母親に会わせてもらえない!?
相談に来られたRさんは、兄と2人きょうだいの妹です。地方都市に住む父親は建築関係の会社を創業し、3つ上の兄も父親の会社で一緒に仕事をしていました。
当然ながら、父親が亡くなった際は兄が会社を継ぎました。一方、Rさんは実家から飛行機で行かなければならない距離のところに嫁いだので、父親の会社を手伝うこともできず、会社周りのことは兄夫婦に任せてきました。
父親が亡くなったのは10年前。遺言書はなかったので、母親と兄、Rさんの3人で遺産分割協議をしなければなりませんでした。しかし、兄がすべて取り仕切って手続きをしましたので、母親もRさんも言われるまま実印を押し、印鑑証明書を渡したとのことでした。
兄は父親の会社を継いでいますので、会社関係の土地や株を相続し、母親の住む実家も相続。母親とRさんには上場株と現金を渡した程度で済ませました。
それだけでも兄の横暴さがわかりますが、Rさんの相談というのは、「兄が母親に会わせてくれないので、方法はあるか」ということでした。
母親は現在94歳。父親が亡くなった頃は元気でしたが、80代半ばを過ぎた頃に骨折をして入院することに。入院中はRさんも定期的に通って母親の様子を見てきましたが、病院でのリハビリをしたうえでも、いままでの自宅での一人暮らしには戻れないという判断で、介護施設に入所しました。
しかし、母がどこの施設に入ったかについては兄はいっさいRさんに教えてはくれませんでした。
兄から止められているので会わせられない
実はRさんは子どもの受験や行事等で1カ月ほど病院に行けないことがありました。ようやく時間が作れて母親が入院する病院に行ったところ、すでに母は退院したあとでした。
愕然としたRさんでしたが、「お兄さんに口止めをされているので」と、病院も母がどこの施設に移ったかは教えられないと言うのです。それもでもなんとか食い下がったRさん。なんとか施設名と場所を聞き出すことができました。
その足で施設に行ったRさんですが、今度は施設側が「お兄さんから(Rさんには)会わせるなと言われているので会わせられません」との一点張り。兄にも連絡しましたが、「とにかく会わせられない」と許可をしてくれず。
それから現在まで約4年。コロナの期間も影響はしていますが、いまだに母親に会えずじまいだといいます。母親は94歳。人生100年時代とはいえ、いつ相続になってもおかしくない年齢です。亡くなる前にもう一度会っておきたいというのがRさんのご希望でした。
「兄が母親に会わせない行為は妹の権利を侵害する行為にあたる」弁護士の見解
今回のRさんのケースについて、夢相続の業務提携先の弁護士法人に確認したところ、以下のような回答が得られました。
「妹が母親に会う権利があるかについては、母親の意思や状況にもよりますが、母親が高齢で介護が必要な状態にある場合、子供が必要な介護をするために面会交流を希望することは当然のことです。明らかにに母親の意思に反していたり、母親の平穏な生活を侵害する虐待があったり、母親の権利を不当に侵害するものでない限り、子どもは母親に面会する権利があります。つまり、妹を母親に会わせることが、母親の権利を不当に侵害するものでない限り、兄が母親に会わせない行為は妹の権利を侵害する行為にあたる可能性があります」ということです。
今できる法的手続きなどはあるのでしょうか?
「現時点で、できる法的手続きとしては、話し合いが可能なのであれば、まずは『親族関係調整調停』を申し立てることが考えられます。しかし、調停での話がうまくいかない場合、そもそも調停での話し合いが難しい場合などは、妹が母親に会える権利を前提とした、兄に対して『侵害行為の妨害排除請求』、または、『妨害予防請求』の裁判を申立てることが考えられます」
「ただ、裁判には時間がかかりますので、上記『妨害排除請求』または『妨害予防請求訴訟』を申立てることを前提として、仮地位の仮処分を申立てることが現実的でしょう。
仮処分とは、訴訟での解決を待っていたのでは権利を保護することなどが難しい場合に暫定的に権利を認めるもので、訴訟に比べて手続きが早く進み、訴訟で実現するのとほぼ同様の請求を実現できるというものです。実際に母親に会わせてもらえない子どもが申し立てて仮処分が認容されているケースもあります」
上記が弁護士からのアドバイスですが、今でも方法があることをRさんにお伝えしました。
泣き寝入りか?プレッシャーをかけるか?
Rさんのように身近なきょうだいが親の面倒を看るという名目で囲い込み、きょうだいに居場所を教えなかったり、会わせなかったり、財産の内容も共有せず、使い込んでしまうことはあり、いくつもの実例を見てきています。
どういうきっかけでそうした暴挙に出るかというと、多くの場合は「財産」を独り占めしたいということではないかと想像されます。
Rさんの場合も会社経営をしていた父親が亡くなった頃から、兄が親の財産を独り占めする前提で動いていたように思うということでした。
Rさんはとにかく母親が生きているうちに行動して会いたいということで、あまり、時間はかけたくないところです。そこで、今までは直に兄に言ってもだめだったのですが、「母親に会わせることを許可しないと弁護士に依頼して調停する」という旨を知らせたほうがいいとアドバイスをしました。
口頭でだめであれば、内容証明郵便を送付して、そもそも母親に会わせないということが認められないことを通知していくようにします。ダメ押しで兄に電話をして、その反応により内容証明郵便を送付。それでも了解しない場合は弁護士に依頼という順番です。
Rさんが施設に出向いて母親に会いたいと申し出ても、施設側も「兄に止められていますのでできません」の一点張り。よって施設側にも同様の通知を出すこともアドバイスしています。
お母さんが生きていらっしゃるうちに当然のこととしてRさんが会えるようになればとサポートしていきます。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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