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シニアの資産形成術、「貯蓄から投資へ」はNG。「貯蓄から分散投資へ」が正解…元メガバンカーFPが教える納得の理由

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月2日 11時15分

シニアの資産形成術、「貯蓄から投資へ」はNG。「貯蓄から分散投資へ」が正解…元メガバンカーFPが教える納得の理由

(画像はイメージです/PIXTA)

個別株投資を行っている方からすると、新NISAのつみたて投資枠などはうまみを感じにくい、まどろっこしいものに見えるかもしれません。しかし、それでもリスク面から考えると、投資信託のメリットは非常に大きいといえます。元銀行員で大学教授のキャリアを持ち、いまも教壇に立つFPが、シニアのための堅実な資産運用について解説します。

個別の株式投資、シニアにはリスクが大きい

個別株式への投資で資金を運用されている人は、新NISAのつみたて投資枠について「投資信託なんか」と思うかもしれません。しかし、公的年金等が主たる収入となった、またはなろうとするシニアの方々には個別の株式投資のリスクは大きく、堅実な投資とはいえないでしょう。

価格の変動性を表す「標準偏差」というリスクについての数値で見れば、日本株式に広く投資を行う投資信託のリスクは、年間23%程度です。これは、確率約16%で、年間23%以上の値下がりの可能性があるのです。一方、個別株式はこれを上回るリスク(標準偏差)で、おおむね30%くらいではないかと思われ、リスクとしては大きいといえます。

そのため、シニアの方々は投資信託を用いた分散投資により、リスクを小さくした投資を行いたいものです。シニアには「貯蓄から投資へ」ではなく、「貯蓄から分散投資へ」という標語が適切です。

「貯蓄から投資へ」は、銀行中心の間接金融から、株式市場・債券市場中心の直接金融へ、ということ意味する面もあるといわれます。

しかし、現代において、金融技術は高度化し、金融取引はますます複雑化しています。そのために資金提供者としての市民と資金調達者としての企業が文字通り「直接に」取引を行うことはもはや有効なやり方であるとはいえなくなっているとされています(池尾和人「開発主義の暴走と保身」2006年)。

つまり、個人投資家が情報を集めて個別の株式に投資するということは、現代の金融市場は機関投資家と呼ばれる証券会社、年金基金等のいわゆるプロが主たるプレーヤーとなっていることを考えると、むずかしいものがあるのです。

株式市場は「プロたち」の土俵、一般人が戦うのは容易ではない

そうした株式市場に一般の個人が参加するには、投資判断力等の金融リテラシーの不足を補完する仕組みを活用するほうが、安全・安心でしょう。その仕組みが市場型間接金融の仕組みである「投資信託」です。投資信託は分散投資を行うことが定められているのですが、その分散投資によって、個々の企業の株式のリスク、これを「固有リスク」と呼ぶのですが、そのリスクを小さくできることが知られています。

大学でも使用されることがある日本証券アナリスト協会の証券アナリスト基礎講座のテキストによると、この投資対象の銘柄数を増やすことで得られるリスク低減効果を「分散投資によるリスク低減効果」としています。

図表のように、分散投資の銘柄数を増やしていけば、固有リスクは徐々に減少し、いわゆる「市場リスク」と呼ばれる株式市場全体のリスクがほとんどになってしまいます。そして、その残った固有リスクは投資信託の運用会社に委託することになります。この株式投資のリスクが市場リスクと固有リスクの合計となることは、ノーベル経済学賞を受賞したウイリアム・シャープ氏により1964年に報告されました。

つまり、市場全体のリスクとリターンがわかれば、分散投資という手法をとる投資信託を活用することにより、個別の株価の価値を分析することが不得手な人でも株式市場に参加できるのです。

そして日本の株式の市場リスクを減らすには、海外の株式市場や、内外の債券市場へと異なる市場・異なる資産へ分散投資を行えばよいのです。

こうしてみると、豊富な投資知識を持つ方以外のシニアの方々は、少ない投資知識により株式投資で資産運用ができる投資信託の仕組みを活用してはいかがでしょうか。

藤波 大三郎 中央大学商学部 兼任講師

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