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絶対二度と仕事なんてしねぇぞ!資産7,000万円で念願の早期退職・FIREを達成した30歳元会社員だったが…わずか1年で「空虚な気持ち」に侵食されてしまったワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月15日 11時45分

絶対二度と仕事なんてしねぇぞ!資産7,000万円で念願の早期退職・FIREを達成した30歳元会社員だったが…わずか1年で「空虚な気持ち」に侵食されてしまったワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

がむしゃらに努力を続けた結果、晴れてFIRE。夢にまで見た「仕事をしない自由な生活」を一生送れるはずが、なぜか最高の人生とは思えない……。せっかくFIREをしても幸福感が続かないケースがあるようです。本記事では29歳でFIREを達成したヒトデ氏の新刊『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)より一部を抜粋し、FIREを実現した元会社員の悩ましいエピソードをご紹介します。

〈登場人物〉

・佐藤智也…FIREしたいと願う25歳会社員。不思議なネコ小鉄を拾った。

・小鉄…1万回生きたネコ。人間の言葉を話す。これまでの猫生で見てきた飼い主たちのFIREの成功と失敗の記録を共有できる。今回は過去の飼い主である星野健太郎(30歳)の記録を智也に共有。

・星野健太郎…小鉄の元飼い主。

FIRE失敗パターン:星野健太郎(30歳)男性

二度と仕事なんてしない

「健太郎さんは運営していたサイトを軌道に乗せて売却し、7,000万円の資産で、余裕をもってFIREを達成しました」

「7,000万円……。羨ましすぎる……」

「実際の様子を見ていきましょう」

健太郎さんは、念願のFIRE生活を満喫していた。

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朝は自然に目が覚めるまでぐっすり眠り、ゆっくりとした朝食を取る。窓から差し込む朝日を浴びながら、お気に入りのコーヒーを一杯飲み、今日のプランを考える。時間に縛られることなく、自分のペースで過ごせる贅沢さを心から味わっていた。

朝食を食べおわると、おもむろにゲームを起動した。今は基本プレイ無料のFPSゲームにハマっている。時には名作と言われているRPGをプレイし、一人でじっくりとストーリーを進めることもあるし、やりこみ要素の高いローグライクゲームを気が済むまでやる日もある。

ゲームに疲れたら、映画やアニメを楽しむ時間だ。昔から観たかった名作や、話題の最新作、さらにはドキュメンタリーまで、ジャンルを問わず様々な作品に触れることで、知識と感性が豊かになっていくのを感じた。

会社員時代では手が出せなかったシーズン10まであるような海外ドラマも、ひるまずたっぷりと楽しむことができた。

明日は、ブロガー時代の仲間たちとの飲み会も予定されている。きっと、FIREした直後の自分には、色々な質問が集中するだろう。彼らにも、この生活のよさを力説しよう。

切りのいいところまで見た海外ドラマを止めて、ソファで思いっきり伸びをした。

「FIRE、最高じゃん。絶対二度と、仕事なんてしねえぞ」

心の底からつぶやいた。

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「これだよ、僕がしたい生活は。最高すぎるでしょう」

なんて羨ましい生活なんだろう。これが嫌になるなんてやっぱりありえない。

「そうですか。それでは、もう少し先の世界の彼に、入り込んで見てみましょうか」

FIREすると「周りと話が合わなくなる」?

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FIREを達成してから、早いもので1年が経過した。

会社に行かなくてもいい、何をしてもいいという「自由」。自分はもう二度と、会社員に戻ることはないだろう。ただただ好きなことができる毎日は、間違いなく幸せだ。しかし、なんとも言えない空虚な気持ちが、じわじわと僕の心を侵食していた。

もちろん、そんなに深刻な悩みというわけではない。自分を不幸だとは思わないし、「こんな空虚な気持ちを感じるのであれば、FIREしなければよかった」なんてことは決して思わない。それでも、確実に胸の奥にある、この気持ちはなんなのだろうか?

一度、ブログ仲間たちに相談をしようと思ったことがある。一足先にFIREしてからも、彼らとは定期的に集まっていた。しかし、実際に相談をしようとして、僕は間違いに気づいた。FIREを目指して、自由な日々をめがけて努力している彼らに向かって、「なんか自由すぎて逆に不幸な気がする」と言うのは、自虐風の自慢でしかない。だから、相談するのは止めた。

心から悩んで、精神を病みそうな状態ならまだしも、それほどでもない、というのも、相談できなかった理由だ。彼らに「やっぱFIREって最高ですか!?」「羨ましすぎる!」「早くそこまで行きてぇ~!」などと言われるたびに、半分の優越感と、半分の申し訳なさを感じた。

そして、段々と彼等とも疎遠になってしまった。以前は会うたびに、「こんな方法でうまくいった」「こんな手法が今はアツい」「これを試したけど駄目だった」などと情報やノウハウをシェアし合っていた。自分は行動量も多かったし、稼いでいる金額も大きかったので、毎回一番多く話をしていたと思う。

しかし、今となってはサイトは売却し、新しい情報やノウハウはひとつも知らない。はじめのうちはこれまでの経験からアドバイスもできていたけれど、半年も経つと、実際に手を動かしていない自分は話についていけなくなっていた。

真面目な話のあとの飲み会でも、色々なことにチャレンジしている彼らに対して、既にゴールをした自分は語ることが全然なかった。最近見た作品について語ったり、ゲームの話はできたけれど、新しく何も挑戦していない。段々と、話が合わなくなってきて、あまり集まりにも顔を出さなくなってしまった。

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「なんか、風向きが怪しくなってきたね」

「FIREの問題のひとつに、〝周りと話が合わなくなる〟ということがあります。みんなは社会で活動しているのに、自分はその行動を止めるから当たり前ではありますが」

「それでも、完全に孤独になるわけじゃないし、色々楽しめることはあるよね?」

「健太郎さんも、そうするみたいですよ」

小鉄に促され、再び健太郎さんのFIRE生活に目を凝らした。

星野さんがFIRE達成後を「最高の人生」だと思えないワケ

趣味に励むが……

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自分にはまともな趣味がないことに気づいた。ゲームや映画も立派な趣味だとは思うけれど、ずっと仕事優先だったので、時間のかかるような趣味をしてこなかった。なので、色々な趣味を試してみよう。

あとは、そうだな、旅行もしてみたい。FIREしてるんだから、僕は自由だ。ひとまず日本中の行ってみたいところを、次々と回ってみよう。そんな日々を想像すると、なんだかワクワクしてきた。

それから僕は、色々な趣味の体験に顔を出したり、日本中を旅行して回った。

それはやっぱり楽しい日々だったと思う。平日の朝に家を出て、旅行をする自分。同じ電車に乗る疲れた顔のサラリーマンを見たとき、自分の自由さがより際立った気がした。

この日々を発信しようかなとも思ったけれど、折角仕事を辞めたのに、SNSでの発信が仕事に通じていきそうで、意図的に遠ざけた。

趣味も旅行も、はじめのうちは楽しかった。しかし、結局どれも長くは続かなかった。段々と惰性になっていき、億劫になってきてしまうのだ。

断っておくが、別に楽しくないわけではないし、辛いわけでもない。でも、何かがしっくりこないのだ。少なくともこれが「最高な人生」だとは思えなかった。

その原因のひとつが「退屈」だった。はっきり言うなら、僕は毎日を退屈に感じていた。

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「毎日ひたすら没頭できる趣味、というのは意外と難しいです。もちろんそういう趣味がある方もいますが、かなり稀です。なんといっても、FIRE後の生活は消費のスピードがすごく早いのです」

「消費のスピードが早い?」

「はい。例えば、今までだったら週に1回の休みにしかやっていない趣味を、毎日できるようになったなら、7倍のスピードでそれらを行うことになります。半年に1回しか行けなかった旅行に、毎週行けるようになります。週に2、3本しか見れなかった映画が、20本も30本も見れるようになります。たまの休みに行うのならいつまでたっても飽きませんが、そんなスピードで消費をしていくと、どうしても早く飽きてしまうんです」

今まで趣味というのは仕事の合間にやるものだった。例えばゲームや映画鑑賞や旅行。それを毎日思う存分やれたらどれだけいいだろうと思っていたけれど、そんな問題もあったのか。

僕は、このあとの健太郎さんの様子が気になって仕方がなかった。

「空虚な気持ち」の正体

思い出すのは、大変だった時期のこと

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退屈な毎日を過ごしていると、思い返すのは副業を頑張っていた、退屈とは無縁な、あのときのことだった。

この会社から抜け出したい。労働というものから抜け出したい。

その一心で、僕はWebサイト(ブログ)を運営してきた。うまくいくためにあらゆる方法を模索し、実際に試し、自分自身に最適化し、寝る間も惜しんで記事を書いた。効率化を続け、ライターも雇って、月に数百万円を稼ぐようなメディアを作り上げたのだ。

ブログからはじめて収益が生まれたとき、僕は心の底から嬉しくて、狭い部屋で雄叫びをあげたのを覚えている。それは数百円の報酬で、ちょっと残業でもすれば稼げてしまうようなものだけれど、自分の力でいちから稼いだという充実感がすごかったし、これから成長していくんだろう、という期待がそこにはあった。

ブログの収益が伸びて、1日数千円稼げるようになったときも、本当にワクワクした。もしかして、これで暮らしていけるんじゃないかと興奮して、よりこの副業にのめり込んでいった。

外注戦略を実行しているときも、今思えば心が躍っていた。作戦を考えて、こんなふうにやれば、自分の時間を削減しながら、しっかり報酬の上がる記事を作ることができると。もちろん、はじめは赤字だった。でも、改善を重ねて、外注の皆との関係を構築し、うまく回る仕組みができたとき、僕はとてつもない万能感に包まれた。

もちろん、楽しいことばかりではなかった。会社員をしながらのサイト運営は、体力的にも大変だったし、成果が出るまでの、暗闇を走ってるような感覚はキツかった。アルゴリズムの変更で売上が大幅に減ったときは精神的に大ダメージを受けたし、仲のいいブロガーが自分の戦略を丸パクリしていたときはすごく嫌な気持ちになった。

「会社を辞めたい! 仕事をしたくない!」そんなふうに思いながら、誰よりも仕事をしていた数年間だった。そして、実際に会社を辞めて、仕事をしなくてもよくなった今、あのときのことを恋しく思ってしまうのは、なぜだろうか。

もう一度、ゼロからサイトを作ったりするのもいいかもしれないな。そんな考えが、頭をよぎった。少なからず胸が高鳴っている自分がいた。今の体験を元に、そのままサイトにしたら、それなりに面白いんじゃないだろうか? そのコンセプトなら売却先の競業避止(ひし)義務にも引っかからないし、外注のノウハウだってある。結構うまくいくかもしれない。

けれどすぐに、「せっかくFIREしてるのに、なんでまた働こうとしてるんだろう」と思い直した。うまくいくとして、それが何だと言うのか。もう、目標は達成できているのに。

今の生活は、確かに僕が思い描いていた理想的なものだった。

そのはずなのに、なぜか毎日気が晴れず、大変だったはずの「途中の」日々に思いを馳せている。この空虚な気持ちは、どうすれば解消されるのか。騙し騙しでやっていくしかないのか。それとも、じっくりと一度向き合うべきなのか。

答えは出ないまま、今日も1日が過ぎ去っていった。

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FIRE後の「虚しさ」を解消する方法とは

FIRE後の虚しさ

なんとも言えない気分で、目を覚ました。小鉄はソファに座って僕を見つめている。

理想と思っていた生活が、ほんの数年で、空虚に感じてしまう。もちろん、今みたいにいやいや会社に行く日々よりはいい。でも、たしかにそれは夢見ていた「理想の生活」とは言えないような気がした。

「智也さん、彼の生活を見てどう思いましたか?」

「う~ん、難しいね。みんながみんなこうなるって話ではないと思うけれど……」

「いえ、多くの人がこうなりますよ。他の事例もご覧になりますか? ご覧になりますよね」

返事をする前に、小鉄のおでこが激突した。

──このあと、何人かFIRE達成者のパターンを見せてもらった。誰もがはじめは楽しむものの、数年後には大なり小なり空虚な気持ちを感じていた。

度重なる様々な人生の映像にクラクラする。

「どうでしょう? 〝人生をクリアした〟と言っても差し支えない彼らですが、何か物足りなさを感じているようです。彼らに何が足りなかったのか、わかりましたか?」

小鉄が改めて聞いてきたけれど、はっきり言って全然わからない。僕が目指している理想の世界がそこにあるのに、彼らは皆幸福感を維持できずにいる。

もしかしたら、自分がFIREを実現できても、同じように思ってしまうかもしれない。そんなふうに悩んでいると、大きくアクビをした小鉄が言った。

「足りなかったものは、例えば〝社会とのつながり〟〝目的や目標〟〝日常の刺激〟〝自己実現感〟。これらは、必ず付きまとってくる問題です」

「全部、お金と時間だけあっても解決できないことかもしれないね」

「でも、これらをまとめて解決できる方法があるんです」

「え、それすごいじゃん! 教えて!」

「仕事ですよ」

株式会社HF 代表取締役

ヒトデ

※本記事は『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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