実家が貧乏で「結納」できず、義父に反対されるも結婚した名門大卒夫…数十年後、超有名企業の社長レースで敗北。年上妻に「離婚したい」のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月26日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
出会ったときの関係性は、結婚後の生活に少なからず影響があるようです。それがプラスに働けばよいのですが、場合によっては離婚の原因となるケースも。本記事では、離婚カウンセラーである岡野あつこ氏の著書『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』(講談社)より一部を抜粋・再編集し、ある夫婦の事例とともに、末永く結婚生活を送るための「ストレスの伝え方」について解説します。
大企業の社長候補だった夫が急に「離婚したい」
出会ったときの関係性は、結婚後しばらくたっても尾を引くものです。そもそもアプローチしたのはどっちだったか、その時点でどちらのほうが経済力があったか、といったバランスというかポジションどりが後々の夫婦関係にも微妙に影響するのです。学歴がそれほどでもない夫と、高学歴な妻の間で、長年ギクシャクした関係が続いていた例も。学歴以外にも収入の多寡や、仕事の忙しさなどがマウンティングの材料になりがちです。また、「自分は男だけど家事をがんばっているほうだ」とか、「夫は男だから高い給料をもらえている」などと、ジェンダー要素も絡んでくることがあります。
かつて、こんな相談を受けたことがあります。相談者は六〇代の女性。少し年下の五〇代の夫がいます。ある日突然、夫が「離婚したい」と言い出したそうです。「寝耳に水」の話だったので、驚いて私のところに駆け込んできました。
男性が急に「離婚したい」と言い出す場合、真っ先に疑うべきは、浮気や愛人の存在です。そのため、この女性とも相談して、探偵に調査を依頼しました。でも浮気の証拠どころか、女性の影すら見つからず、すぐ打ち切ることになりました。実際のところ、原因は浮気ではなく、他のところにあったのです。
夫は名門大学を出て、誰もが知る大企業に就職、順調に出世して、最近まで社長レースにも参加していたそうです。ただその企業の本社の社長にはなれず、関連会社の社長に就任しました。夫はドラマ『半沢直樹』のような権力闘争の世界にいたわけです。きっと、いろいろつらい目にもあっていたでしょう。
一方、相談者の女性は専業主婦で、夫のそうした社内状況について関心がありませんでした。社長レースに負けても、クビになるわけじゃないし、何も問題はないじゃないかと気にしてもいませんでした。万が一クビになったところで、夫は名門大学出身で関連会社とはいえ社長にまで上りつめたわけだし、すぐ再就職できる、くらいに思っていたそうです。
この夫婦には子どもが三人いました。海外に留学している子どももいて、教育にはかなりお金をかけているようでした。その費用を捻出するために、夫は必死に働いて出世してお金を稼いでいたわけですが、妻はその苦労をあまりわかっていませんでした。
だから妻がすべて悪い、ということではありません。夫のほうにも反省すべき点がいろいろありました。夫は真面目で寡黙、あまり自分のことを語らないタイプでした。家に帰っても、会社でこういうことがあったとか、部下がこういうことをした、という話をしたためしがありません。社内権力闘争のことも「どうせわからないだろう」と妻に説明していなかったのです。
妻が「夫は会社でうまくやっている」とばかりにノー天気にかまえていても不思議ではありません。
妻の無自覚な…
一方の相談者である妻は、どちらかというときつい性格。とくに夫に対しては言いたい放題ダメ出しをするほうで、夫が家事をしない、などの不満を本人にもストレートにぶつけていました。また、「普段の服がダサい」とか「食事のマナーが悪い」と気に入らない点を指摘しては、「ダメ亭主」と吐き捨てることもあったようです。
こんなこともありました。この夫婦はマンションに住んでいたのですが、マナーの悪い住民がいて、夜にベランダで騒いだり、タバコを吸ったりすることがあったそうです。妻は夫に「警察に相談してほしい」と頼みましたが、夫はそこまでするのも……とズルズルと対応を引き延ばしていたそうです。それで妻はカチンときて、夫に面とむかって「警察に行ってもくれない、役立たず」と責め立てたそうです。
妻は夫よりやや年上です。そのせいか、夫に対して無意識に「上から目線」でものを言ってしまうのです。真面目な性格の夫にとって、妻のそうしたマウントは日ごろからかなりストレスだったようです。
結婚前、夫の実家が貧乏で、遠慮した夫は結納という儀式もやらずに入籍しようとしました。そのとき、妻の父親から「しきたりや常識を守らない人間はダメだ、結婚には反対だ」と言われた過去があります。ただ妻は結局、父の反対を押し切って結婚を決めました。そのため、妻には「私のおかげで結婚できたのよ」という意識がありました。しかも妻はそうした自分のマウンティングを「不適切」なことだと思ってもいませんでした。そういう妻の独善性がじわじわと夫婦関係を悪化させていることも、離婚を切り出されるまで気づかなかったのです。
夫が不満に思っている点がほかにもありました。夫の海外赴任が決まり、単身赴任でなく家族全員で海外へ引っ越したときの話です。妻は現地駐在員の奥さま会に参加すべきなのですが、たまたま弟の会社の海外支店があり、パートで手伝いに行っていました。それが現地で問題になってしまいました。
その会社では駐在員の妻のアルバイトを禁止しており、ルール違反という指摘を受けたのです。でも妻は納得がいきません。弟のいる会社でちょっと頼まれたから少し手伝っただけで、奥さま会に出なかったことの面当てで大事にされたと。このとき、夫がかばってくれなかったことを、妻は根に持っていました。そのせいで海外赴任中、妻は夫になおさら厳しく当たっていたようです。慣れない海外生活で妻もストレスを溜めていたのでしょう。
こうした日常的な非難やマウントによって夫はどんどん不満を溜め込んでいました。結果、夫はある日突然「大爆発」し、離婚を宣言したというわけです。このケース、妻の態度にも改善点がありますが、それにしても夫の「伝え方」は問題です。妻にストレスを感じるのは仕方ないとしても、溜め込んで「大爆発」する前に、不満を率直に打ち明けておくべきだったと思います。
夫としては、不満を打ち明けても逆ギレされて、社内権力闘争でのうんざりするほどのストレスにさらにストレスがかかるのが嫌だったのかもしれません。でも、結果的に離婚を宣言するまでにストレスが達してしまったわけですから、もっと小出しに「反撃」しておいたほうがガス抜きができたかもしれません。
岡野あつこ
株式会社カラットクラブ
代表取締役社長
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