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離婚後の「年金支払い」…「配偶者の扶養内だった人」は“役所”へ走るべき理由【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月30日 14時15分

離婚後の「年金支払い」…「配偶者の扶養内だった人」は“役所”へ走るべき理由【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

離婚は、離婚届を出せばすぐにできると思われがちです。しかし、実際にはさまざまな手続きがあるため、かなりの時間がかかります。事前に必要な準備や、離婚後に必要な手続きをあらかじめ把握し、スムーズに進めていきましょう。本記事では、離婚時に必要な離婚手続きについてAuthense法律事務所の白谷英恵弁護士が解説します。

離婚の手続きは離婚届だけではない

離婚届さえ出せば離婚は成立すると思われがちですが、実際はそう簡単ではありません。スムーズに手続きを行うためには、事前の準備が非常に大切なのです。具体的にどのようなことをすればよいのかをみていきましょう。

離婚前に住居を決めておく

離婚前の段階で別居している、もしくは実家が近くにある人は問題ありません。しかし離婚後に引っ越しを考えている人は、早めに探しておくことをお勧めします。春先の引っ越し繁忙期は避けるようにしましょう。

また、別居に関しての注意事項があります。夫婦には、お互いに助け合い同居生活を維持する義務、「同居義務」というものがあります。別居とは、同居義務を破棄したということです。

配偶者が離婚を認めてくれないという場合には有効な手段となりますが、話し合いもせずいきなり家を出て行ってしまった場合は、いわゆる「悪意の遺棄」に当たるケースなど、慰謝料を請求されてしまうケースも存在します。相手へ悪意を持って見捨てることを、「悪意の遺棄」といい、民法上の悪意の遺棄が成立してしまった場合、自分からの離婚請求ができなくなる、慰謝料が請求される、といったリスクが発生するかもしれません。事前にある程度の話し合いは必要です。

生命保険の受取人の変更

生命保険の受取人が配偶者になっている場合、離婚前に病気や怪我をしてしまうと、お金は配偶者が受け取ることになります。早めに親族に移しておいたほうがよいでしょう。

財産分与を決めておく

結婚生活中の夫婦の財産をそれぞれの貢献度に応じ、配分することを財産分与制度といいます。その対象になるものは、

・現金

・預貯金

・家具

・不動産

・株式

・年金

・退職金

などが挙げられます。現段階でお互いの資産を把握し、値段のわからない不動産などは査定に出すとよいでしょう。

離婚協議書を作成する

離婚するうえでの取り決めは、形に残しておかないとトラブルの原因となることも多いものです。金銭に関するものなどは、書類がなければ支払いを法的に請求することが難しくなります。トラブルの回避や法的な支払い請求のためにも、離婚協議書を作成しましょう。しっかりとしたものを作成するべく、弁護士に依頼することをお勧めします。

離婚の手続きにかかる時間

事前準備を終え、実際に離婚の手続きをする際には、どのくらい時間がかかり、どのような手続きをすればよいのかを解説します。

最短で即日成立!離婚届を提出する際に必要な書類

下記でご説明する手続き準備を行えば、最短で即日成立します。即日で成立させたい人は、事前準備の時間を計算し、万全の状態で手続きを行いましょう。

夫婦のあいだの話し合いだけで解決できるなら、必要なものは離婚届だけです。しかし、話し合いで解決したとしても、20歳以上の証人2人が必要となるので注意しましょう。また、役所に本人確認書類の提示を求められる場合がありますので、念のために身分証明書を持っていくとよいでしょう。

離婚調停を行って手続きをする場合には、

・戸籍謄本

・申立人の印鑑

・調停調書の謄本

が必要です。裁判を行って離婚手続きを行う場合では、

・戸籍謄本

・申立人の印鑑

・調停調書の謄本

・判決確定証明書

が必要です。離婚調停、裁判判決のどちらも結果が確定してから十日以内に申請しなければ、過料(金銭的な制裁)が発生する場合があります。事前準備は余裕をもって行いましょう。

離婚届は役所でもらうorインターネットでダウンロード

いくら離婚調停が進み、別居をしていても、離婚届を提出しなければ、離婚は成立しません。離婚届は、役所でもらう、もしくはインターネットでダウンロードできます。ダウンロードする際には、必ずA3サイズでプリントしましょう。

また、離婚届を書く際に注意することがあります。書類に修正液を使ってしまうと正しく受理されない場合があります。訂正したいときは、訂正したい箇所に二重線を引き、訂正印を押しましょう。間違ってもいいように、離婚届を何枚か予備にもらっておくのも手です。

離婚後に必要な手続き

離婚後の状況にもよりますが、人により手続きの数が違います。自分の当てはまる項目を確認し、事前に把握しておくとよいでしょう。

住居が変わる場合…住民票異動届の手続き

離婚する際に自分の住居が変わる人は、役所に住民票異動届を提出しなければなりません。引っ越しをする前に役所で異動届をもらい、引っ越してから2週間以内に提出をしましょう。

配偶者の扶養内で保険加入していた場合

■国民健康保険への切り替えや名義・住所変更

自身が会社勤めで健康保険に入っている人は、問題ありません。しかし、配偶者の扶養内で保険に入っている場合は、新しく国民健康保険に加入する必要があります。離婚の手続きが完了した時点で、自動的に配偶者の保険から外れ、医療費などの負担が変わってきます。そのため、離婚後は14日以内に国民健康保険に加入する必要があります。

国民健康保険に加入する際に必要な書類は、「健康保険資格喪失証明書」です。スムーズに手続きを行うために、配偶者の会社に事前に書類の発行をお願いしましょう。もとから国民健康保険に加入されている人も、名義・住所の変更が必要です。手続きのし忘れがないようにきちんと確認をしましょう。

■国民年金への加入・名義変更などの手続き

国民健康保険と同様、自身が厚生年金に加入している場合は名義の変更などの手続きのみで問題ありません。配偶者の会社の厚生年金に加入している人は、国民年金へ変更しましょう。年金の支払い額は、前年度の所得から計算されるので、金額に不安がある人は、役所の国民年金課に急いで相談しましょう。早めの対応が肝心です。

世帯主の変更

自分が世帯主でない人は、変更が必要になってきます。役所に下記の必要書類を持って行きましょう。

・本人確認書類

・国民健康保険証

・印鑑

子どもがいる場合に必要な離婚手続き

夫婦間に子どもがいる場合は、さらに手続きが増えます。子どもの将来のためにも、手当金などがもらえる手続きなどを確認しておきましょう。

親権をどちらにするのか

子どものいる夫婦が離婚をするとき、親権がどちらになるのか決まっていないと離婚届は受理されません。親権を決めることがスムーズにいくとは限らないので、時間に余裕をもって話し合いましょう。行き詰まりそうであれば、弁護士などの第三者を挟むことをお勧めします。

子どもの姓や戸籍の変更

離婚が成立しても、子どもの姓と戸籍は自動的に変更されません。親権者と苗字を同じにするために変更する場合は、手続きを行わないとなりません。親権者が旧姓に戻り新たに戸籍を作る場合には、子どもの姓を変更したうえで、子どもの戸籍を親権者の戸籍に入れる必要があります。子どもの姓の変更には、家庭裁判所での手続きが必要です。必要書類は以下のとおりです。

・申立書(裁判所のホームページよりダウンロード可能)

・子どもの戸籍謄本

・父親の戸籍謄本

・母親の戸籍謄本

・収入印紙(800円)(子ども1人につき)

・返信用の郵便切手

これらの書類をきちんと用意しておけば、申し立ての許可が下りないということは少ないため、事前の確認を怠らないようにしましょう。

ひとり親世帯の医療費助成制度を確認する

ひとり親世帯の母親、または父親と扶養対象の子どもは医療費助成を受けることができます。助成内容は地方自治体により、義務教育終了まで無償のところ、高校卒業まで無償のところとさまざまです。引っ越し先を決める際にあわせて確認しておきましょう。

児童扶養手当を申請する

親権を持ちひとり親世帯になったときに子育てを行う場合にも、国や地方から助成金を受けることができます。収入に応じ、一定金額がもらえる「児童扶養手当」を早めに申請しておきましょう。1人で子育てをするには、大きな負担が掛かります。申請をして、少しでも金銭面の負担を減らすことで精神的にも安心できます。子どもの入籍届が受理されたあとに戸籍謄本が必要となりますので、順番には注意しましょう。

子どもがいない場合に必要な離婚手続き

子どもがいない夫婦にも、上記以外に重要で必要な手続きがあります。

離婚後の収入源の確保

いままで配偶者の扶養に入っていた場合、離婚後に収入源を確保しなければなりません。確保できていない状態で離婚してしまうと、生活に困窮するケースもあります。早く離婚したいと思いがちですが、離婚手続きを行う前に就職先や収入源を準備段階で確保したほうが、リスクが少なく済みます。

自分の姓を変更するのかを決める

クレジットカードや銀行口座などの登録してある名義を変更するかどうかを決めます。変更しないまま使い続けることもできますが、別れた相手の姓を名乗り続けるのに抵抗がある場合は、手間が掛かりますが根気よく行いましょう。

形に残る公正証書の作成

離婚について夫婦間で話し合っても、口約束だけで約束を守ってもらえないこともあります。そんなときには、形に残る「公正証書」の作成がお勧めです。公正証書を作成すると、さまざまな利点があります。たとえば、慰謝料の支払いが滞ったときなどに、強制的に執行力がある文言がある証書で、法的に動くことが可能です。

最短離婚のためには

離婚を最短で行うには、事前準備が非常に重要です。自分の置かれた立場を整理し、なんの手続きを行わないといけないかをリストアップしましょう。また、電話やインターネットでできる手続きは、なるべく活用し労力を抑えましょう。

白谷 英恵

Authense法律事務所

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