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49歳無職男性「人生、一発逆転だ!」父の遺産で実家をリフォーム→〈タンス預金5,000万円〉発見で大喜びも…1年後〈追徴課税3,000万円〉に悲鳴。“現金のまま保有”も、税務署にバレた理由【税理士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月29日 11時15分

49歳無職男性「人生、一発逆転だ!」父の遺産で実家をリフォーム→〈タンス預金5,000万円〉発見で大喜びも…1年後〈追徴課税3,000万円〉に悲鳴。“現金のまま保有”も、税務署にバレた理由【税理士の助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本国内に約60兆円あるといわれる「タンス預金」。タンス預金をする理由はさまざまですが、相続税対策のためにあえて行う人も少なくありません。しかし、意図的な隠ぺいが税務調査によって発覚した場合、通常の相続税よりもはるかに重い「追徴税」を課されてしまいます。亡き父のタンス預金を発見した49歳男性の事例をもとに、タンス預金のリスクと相続税の注意点をみていきましょう。

無職のAさんが実家で見つけた“お宝”

当時49歳のAさんは、83歳の母Bさんと実家で暮らしていました。

Aさんはいわゆる「ロスジェネ世代」。就職氷河期のあおりを受け、希望通りの就職が叶わず、長いあいだ非正規雇用を余儀なくさました。 ※ ロスジェネ世代……1970年~1984年ごろに生まれ、就職活動の時期がバブル崩壊と重なった世代のこと。「ロスジェネ」は「ロストジェネレーション」の略。

40代も目前に迫ったころ、「このまま非正規では、結婚もできない」と将来に危機感を覚えたAさんは、一念発起して資格を取得。ようやく正社員での採用を勝ち取りました。

しかし、入社した先はいわゆる“ブラック企業”、重労働かつパワハラが当たり前の職場でした。せっかくつかんだ正社員の座、簡単に手放すわけにはいきません。追い詰められながらも必死に耐えていたAさんでしたが、入社から5年後にうつ病を発症。45歳で地元に戻ったAさんは、障害年金を受け取りながら実家で細々と暮らしていました。

世帯の収入は、Aさんの障害年金7万円と母Bさんの年金25万円でした。Aさんの父親は10ヵ月ほど前に亡くなっており、母親の年金というのは、生前公務員だった父の遺族年金です。

バタバタと葬儀を終え、父親の相続税申告も済ませたAさんは、亡くなった父がのこしてくれた財産で浴室をリフォームすることにしました。というのも、年齢を重ねた母Bさんの足が悪く、入浴の際に介助が必要になったことで、AさんBさんともに負担となっていたのです。

浴室のリフォーム工事が始まり、「これで母さんも少しは楽になるな」と見守っていたところ、Aさんは業者から声をかけられます。「換気扇のなかに、こんなものがあったんですが……」聞けば、工事をするために業者が換気扇を取り外したところ、ビニールに包まれたカバンがあったというのです。

換気口の裏に隠されていた「タンス預金5,000万円」

「まったく身に覚えがないな……うおっ、重たい!」

Aさんがカバンを開けたところ、なんとそのなかには現金5,000万円が入っていました。

「うおおお! ええっ!? か、母さんちょっと来て!」

呼ばれたBさんは、見たことのないほど興奮する息子に驚きながら、次のように言いました。「なになに、どうしたの……あら、このカバンは父さんが若いときに使っていたやつだね」

亡くなった父親は、いつのまにか銀行から預金を引き出し、長年こっそり「タンス預金」を蓄えていたようです。

「これで浴室だけじゃなく、家を丸ごとリフォームできるかもな! いやあ、いままでしんどいことばっかりだったけれど、これで人生、一発逆転だ!」

興奮した様子で使い道を考えるAさんを横目に、Bさんは心配した表情で言いました。「でもこれ、きちんと報告しなくちゃね。あとでなんやかんや言われるのは嫌だから……」

しかし、Aさんは強気です。「なあに、大丈夫だよ。『銀行に入れずに、現金でもっていればバレない』ってネットで見たし。家族の俺たちすらいままで知らなかったお金なんだぜ? 誰にバレるっていうんだよ!」

Aさんの自信満々な様子にBさんは太刀打ちできず、渋々、子の言うとおりにすることに。もっとも、「大きな買い物をすると怪しまれる」と考えたAさんとBさんは、生活費を中心に現金を少しずつ使っていました。

それから約1年が経ったある日のこと。Aさんのもとに、税務署から1本の電話が入ります。

税務署職員「お父さまの相続税に関する調査のために、ご自宅に伺いたいのですが」

Aさんは(まさかバレたのか!? いやいや、そんなはずはない。銀行に預けていないしそもそもお金自体そんなに使っていないんだからバレようがないだろ……くそっ、断りたいけど怪しまれるかな……)と、内心うろたえながら渋々調査を受けることにしました。

そして税務調査当日。2名の調査官がAさんとBさんの暮らす実家にやってきたのです。

高齢の母激怒、Aさんは戦意喪失…税務調査官の“追い込み”

緊張していたAさんでしたが、予想外にも調査は和やかな雑談からスタート。亡くなった父の人となりについて質問されるうち、少しずつリラックスしてきました。

しかし、午後に入ると、だんだんと調査官は核心に迫ってきます。

調査官「お父様の生前の所得からすると、相続財産が少なく思えるのですが……。預金通帳を見せていただくことはできますか?」

Aさんは素直に、父の通帳をすべて渡しました。調査官が確認したところ、4年ほど前、ちょうど新型コロナウイルスが流行していたころ、5回に分けて1,000万円ずつ引き出されていることが明らかになりました。

「これがあのタンス預金か!」と気づいたAさんでしたが、調査官がいる手前、平静を装います。

調査官「この5回にわたって引き出されている1,000万円は、それぞれなにに使われたのかご存じですか?」

Aさん「いえ、私にはさっぱり……詳しいことはわかりませんが、趣味や飲み食いなんかで使ったんじゃないですか?」

調査官「ふぅむ、おかしいですね……先ほど、お父様は生真面目だから遊びや無駄遣いは見たことがなかったとおっしゃっていましたよね? それに預金の流れを数年分確認したところ、生活費でこのような大金を使い切れるとは思えません。正直にお話していただけますか?」

Aさん「……すみません。父がこっそり換気口の裏に隠していたみたいでして。私たちも父が亡くなってずいぶん経ってから発見したものなんですが……」

調査官「なるほど、そうだったのですね。しかし、調査までには把握していたということであれば、どうして相続財産に含めて申告していないのでしょうか」

Aさん「ええっ!? これも申告する必要があるんですか? そんなこと知りませんでした。故意じゃないです」

調査官「いやあ、それはさすがに無理がありますよ……」

Aさんは税務調査の結果、重加算税等を含め3,000万円もの追徴税を課されることに。きちんと申告した場合に比べ、はるかに多い金額です。「やっぱり、正直に申告していればよかったじゃない!」とAさんは母親から激怒され、うなだれるしかありませんでした。

自宅に置いておいただけなのに…タンス預金はなぜバレる?

それにしても、なぜ自宅に現金があることが税務署にバレてしまったのでしょうか?

税務署では、全国の国税局と税務署をネットワークで結ぶ「KSK(国税総合管理)システム」により、日本のすべての納税者の申告書が把握されています。このKSKシステムには、納税に関するデータだけでなく、資産の購入や売却などの履歴情報も蓄積されています。

過去の申告状況などと照らし合わせ、「相続財産が少ないのではないか?」などと疑いをもたれた場合、税務署は銀行に問い合わせ、対象者の預金の流れを調べます。

税務署の調査権限は非常に強力なもので、相続人の口座を確認する場合、銀行は正当な理由がない限り、税務署の要求に応じて保有する情報を開示しなければなりません。そこで大きなお金の動きがある場合、税務調査の対象となります。

このため、税務調査の対象となった場合、すべての財産をおおむね把握されていると考えたほうがよさそうです。

相続税・贈与税の税務調査で、もっとも指摘を受けるのが、「現金・預貯金の申告漏れ」となっていますから、現預金の動きについては重点的に調査されると認識してきましょう。

今回のAさんのように、タンス預金を相続財産に含めずに申告した場合、意図的に財産を隠したと判断され、非常に重いペナルティである重加算税が課されます。

もし万が一、相続の際に「タンス預金」を見つけた場合は、隠ぺいすることなく、正直に適正な申告を心がけましょう。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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