定年直前で〈最高月収80万円〉を記録した60歳・大企業サラリーマン…〈貯金2,000万円〉〈退職金3,200万円〉で勝ち逃げのはずが、わずか2年で「老後破産」のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月20日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
60歳定年で仕事を辞めるか、それとも続けるか……サラリーマンにおいて大きな決断を迫られるとき。9割弱の人が「働き続ける」を選びますが、60歳にして夢を叶えるために「退職」を選ぶ人もいます。しかし、その先に続くのは茨の道ということもあるようです。
月収上位10%に入る大卒サラリーマン、華麗に引退
――いいサラリーマン人生でした
60歳定年を機に会社勤めに区切りをつけた山本大さん(仮名・現在62歳)。定年前に月収は80万円とサラリーマン人生史上ピークに達し、有終の美を飾ったと自負しているといいます。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマンの20代前半の平均月収は24.3万円。年齢共に上昇の一途を辿り、定年前の50代後半で53.2万円とピークに達します。
【年齢別「大卒サラリーマンの給与」】
20~24歳…24.3万円/356.2万円
25~29歳…28.3万円/474.0万円
30~34歳…32.6万円/549.4万円
35~39歳…37.9万円/645.5万円
40~44歳…42.4万円/704.2万円
45~49歳…46.7万円/774.5万円
50~54歳…50.6万円/839.7万円
55~59歳…53.2万円/879.1万円
※数値左より、月収/年収
また大卒サラリーマン・50代後半の月収の中央値は47.4万円。上位25%が60.9万円、上位10%が76.6万円。山本さん、大卒サラリーマンのなかでも上位10%に入る給与額を記録しました。
また山本さんが手にした退職金は3,200万円。直近月収の40ヵ月分です。厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、大卒サラリーマンの定年退職金は、勤続35年以上で2,037万円。山本さんの退職金は平均を大きく上回る金額。自負する通り、山本さんはサラリーマン人生、有終の美を飾ったのです。
定年直前に最高月収80万円を記録。退職金は3,200万円。そしてコツコツと進めてきた貯金は2,000万円だといいます。何の心配事もなく、定年を機に会社を華麗に去っていく山本さん。同期は称賛の気持ちを込めて「勝ち逃げの山本」といって送り出したといいます。
サラリーマン時代のスキルを活かした「シニア起業」が増えているが
定年とともに仕事を辞めるも、仕事一筋のサラリーマン、時間を持て余して……そんな話は枚挙にいとまがありません。しかし、山本さんの場合は違いました。
――会社は辞めましたが、仕事を辞めるつもりはありません
山本さん、定年退職し、これまでの経験を活かして起業することにしたのです。株式会社帝国データバンクによる『新設法人調査(2023年)』によると、企業新設時の代表者年齢(起業年齢)は48.4歳で、年齢別の割合をみていくと、50代が25.3%、60代が12.2%。60歳定年以降に起業というのも、珍しいことではありません。近年は50代以上のシニア層の起業割合は増加傾向だといいます。
「ずっと自分のビジネスを持ちたい」という夢を抱いていたという山本さん。ただ「サラリーマン人生もまっとうしたい」という気持ちも強く、定年退職したら起業することを決めていたといいます。
――独身だったことも、思い切ったことができた要因のひとつだと思います。家族がいたら、定年退職後に起業はできなかったかもしれません
ただ起業したすべての人が成功するとは限りません。サラリーマンとしては一流でも、経営者としても一流とは限らないからです。山本さん、長年のサラリーマン生活で培った専門知識や人脈を活かせると考えましたが、実際の経営には多くのスキルが必要であることを痛感したといいます。
初期投資や運営コストが予想以上にかさみ、収益が上がらない状況に直面。また市場調査は不十分で、顧客を獲得することができませんでした。また、経営に必要な知識やスキルが不足しており、特に財務管理やマーケティングにおいて苦労したといいます。
こうしてわずか2年で廃業。貯金や退職金の多くを使い果たし、ボロボロだといいます。
――年金を受け取れるまであと3年。働かないと生きていけない
定年退職→起業→廃業→アルバイト。激動の2年を送った山本さん。しかし、起業に挑戦しなければ後悔し続けたといい、悔いはまったくないといいます。
――世の経営者がどれだけ素晴らしいか、身をもって理解できたことも大きな収穫だったと思います
[参考資料]
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