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月収14万円・市営住宅暮らしの49歳シングルマザー〈年金6万円・貯金ナシ〉の父急逝で〈家族葬〉を決断…“娘のための定期預金”を解約も「後悔はしていません」と笑顔のワケ【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月3日 11時15分

月収14万円・市営住宅暮らしの49歳シングルマザー〈年金6万円・貯金ナシ〉の父急逝で〈家族葬〉を決断…“娘のための定期預金”を解約も「後悔はしていません」と笑顔のワケ【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

肉親が亡くなると、葬儀や相続など数々の対応を迫られることがあります。そのような場合、事前知識や故人による生前準備が不足していると、思わず「こんなはずじゃなかった」という事態になりかねません。離れて住む親子の事例をもとに詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和が解説します。※プライバシー保護のため登場人物等の情報を一部変更しています。

父が急逝…「葬式の仕方がわからない」とパニックになるAさん

パート勤めのAさん(49歳)は、昼休みに入り携帯を確認したところ、知らない番号から何度も不在着信が入っていることに気づきました。

「なにこれ、気持ち悪い……」

不審に思ったAさんは電話番号を確認したところ、相手はなんと警察。嫌な予感がして電話をかけなおしたところ、その内容に思わず絶句しました。

「Bさま(父親)が路上で倒れ、病院に搬送されました」

聞くと、路上で倒れていた父親を通行人が発見し、救急車で運ばれたといいます。警察が身元を確認した際、手帳に緊急連絡先としてAさんの名前と電話番号が書かれていたとのこと。

電話を切るなり病院に飛んで行ったAさんでしたが、時すでに遅し。同じタイミングで駆けつけた叔母(Bさんの妹)と、しばらくそこに立ち尽くすしかありませんでした。

呆然とするAさんだったが…

あまりに突然のできごとに呆然とするAさん。叔母は、そんなAさんに優しく寄り添ってくれました。

「まずは檀家寺に亡くなった報告をして。それから、葬儀社に葬儀のお願いをするの」

そして、「あそこの住職は私と同級生だから」と言って、すぐに電話をかけてくれました。

電話の途中、叔母から「葬儀社や斎場はどこにする?」と聞かれましたが、Aさんには見当もつきません。Aさんの表情から察した様子の叔母は「OK。住職にお任せするわね」と言い、Aさんは素直に頷きました。

それから、医師から詳しい死因を聞き、警察からも事件性はない旨の連絡がありました。

自宅で亡き父を安置したあと、葬儀会社の担当者と葬儀の打ち合わせを行いました。担当者は、手際よく話を進めていきます。あっという間に葬儀の段取りが決まっていきました。

市営住宅に暮らし、パートで月収14万円。生活するのがやっとというAさんは、葬儀にお金をかけられません。葬儀の方法について聞かれたAさんは、以前なにかでみた「葬儀特集」を思い出し、葬儀費用がお値打ちだといわれていた「家族葬」を希望しました。

Aさんの提案に、担当者も了承。実家近くの「家族葬専用ホール」で、お通夜から初七日の法要まで行うことにしました。

父の家にあった金庫…“衝撃の中身”に驚き

葬儀会社や叔母と相談の結果、亡き父Bさんにかかる葬儀費用は、寺院費用を含めて約70万円に。一般葬と比べると費用は抑えられたかもしれません。しかし、突如として月収5ヵ月分もの大金を支払わなければならなくなったAさんは頭を抱えました。

Aさんはシングルマザーで、都内で生活しているひとり娘(25歳)がいます。Aさんは、少ない収入から「娘が結婚するときに援助やお祝いを贈れるように」「自分になにかあったときに、娘に迷惑をかけないために」と、“へそくり”として定期預金を行っていましたが、今回の葬儀費用はやむなくここから捻出しました。

「こんなはずじゃなかったのに!」

Aさんは落ち込みながら、遺品整理のため実家へ向かいました。仕事の合間に片づけをはじめてから数週間後、Bさんが使っていた机の引き出しのなかに「手提げ金庫」を発見。その金庫には鍵がかかっていないようです。

「期待してはいけない」と思いながら金庫を開けると、なかには通帳が入っていました。通帳を確認したところ、父は貯金をほとんどしておらず、年金も月およそ6万円だったことがわかりました。

(え、たったこれだけ? お父さん、ちゃんと生活できていたんだろうか……)

がっかりした気持ちよりも、生前なかなか気にかけてあげられなかった後悔の念が押し寄せてきます。

しかし、金庫には通帳以外に、証券会社からの書類も入っていました。そこには、大手企業数社の株式運用成果の記載が。年金以外にも、株式の売買益と配当金で、単身とはいえ十分に生活が維持できていたようです。

さらに、金庫のふたの裏には、「Aと孫とで大切に使え」と、まるで自分が亡くなることを予見したようなメモが貼ってあります。

「父さんなりに、私たちのことを考えてくれていたのか……」

驚きながらも、ほっとひと安心のAさんです。

しかし、株式投資をしていたとなると、今度は相続税のことが心配になってきました。叔母に相談したところ、知り合いのファイナンシャルプランナーである筆者を紹介してもらったAさんは、筆者のFP事務所に相談に訪れました。

参列者を近親者に絞る「家族葬」を選ぶ人が増えている

公正取引委員会の年次報告によると、葬儀の種類別の年間取扱件数の傾向は[図表1]のとおりです。

これをみると、従来型の「一般葬」が減少傾向にあり、Aさんも希望した「家族葬」が半数を占めていることがわかります。

家族葬の価格は「30万円~170万円」とピンキリ

一般葬・家族葬にかかわらず、葬儀は主に下記のような費用がかかります。

・葬儀一式費用(通夜、葬儀・告別式、火葬など)

・お通夜、初七日の費用(飲食代、返礼品など)

・寺院費用(御布施など)

「家族葬」の費用は、重要視する部分によって実にさまざまです。地域によっても差があり、30万円から170万円位と幅広い料金体系になっています。また寺院費用は、葬儀会社の費用とは別料金のところも多いです。

今回のケースのように、葬儀は突然必要になることが多いですが、そのときになって複数の葬儀会社から見積もりを取ることは、心身的にも時間的にも不可能です。したがって、事前に親子で、葬儀の規模や予算を話し合っておくのが理想でしょう。

豪快だった父の“隠れ資産”を発見も、Aさんは「後悔なし」

Aさんは筆者に、これまでの一連について話したうえで、父の生い立ちについて話してくれました。

「父は大学卒業後、土木工事業の会社に就職すると同時に母と結婚して、私が生まれたんです。当時は実家で農業を営む両親(Aさんから見て祖父母)と同居していたんですが、父は周囲に相談することなく会社を3年で辞めて、実家の一部を事務所と資材置き場にして独立。若くして、個人で土木工事業を始めたそうなんです。事業は順調とはいえず、その後はいろんな業種を転々としました。

とはいっても、株式投資は順調だったみたいですね。また食事も祖父母が育てた農作物があったから、家計で困ることはなかったようです。

それに地元町内会の運営や盆踊り、お祭りといった行事にも、『今までのやり方は古い!』って、いつも斬新なアイデアを思いついては、実行していました。最期もあっという間でしたし、父はひと言でいえば“豪快”な人だったと思います」

Aさん自身は、気性が荒い一面もある父とあまり馬が合わず、早くに家を出て結婚、出産してシングルマザーとなり、今は実家近くの市営住宅に住んでいます。母親をがんで亡くしたときですら、葬儀には参列しましたがBさんと話すことはあまりなく、その後もほとんど実家に帰らない生活が27年も続いたそうです。

「葬儀会社に支払いをしたときは、なんで娘のためのお金を父に使わなくちゃならないのかと腹が立ったけど、こんなに遺産を残してくれて、今では父に感謝しています。

お金がないから家族葬を選んだのですが、その後父が亡くなったことを知った方々が、私の家の仏壇にお線香をあげに来てくれるんです。父とは生前あまり仲がよくなかったんですが、こんなにたくさんの人に愛されていたんだなあと、いまになって実感しています」

Aさんに依頼された今後のライフプランニングについては、相続税に詳しい税理士に計算してもらったうえで作成することに。筆者はAさんの帰りがけ「これだけの資産があることを前々から知っていたら、家族葬ではなく一般葬にしたんじゃないですか」と尋ねました。

すると、Aさんはしばらく考えて、「う~ん……悩ましいですが、家族葬にしたことに後悔はありません」と笑って答えました。

故人を弔うのにお金をかけて供養が必要か、意見が分かれるところです。しかし喪主には今後の生活があります。葬儀は現実的な家計の範囲内、または故人が準備した資金内で行ってもいいのではないでしょうか。

代表社員 牧野FP事務所合同会社 牧野 寿和

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