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税務調査官「これは税金とれませんね…」年収4,000万円の77歳夫が急逝…2年後、税務調査の現場で〈20歳年下の妻〉が差し出した“とあるブツ”【税理士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月30日 11時15分

税務調査官「これは税金とれませんね…」年収4,000万円の77歳夫が急逝…2年後、税務調査の現場で〈20歳年下の妻〉が差し出した“とあるブツ”【税理士の助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁の発表によると、令和4事務年度における相続税の実地調査件数は8,196件で、そのうち申告漏れ等の非違割合は7,036件と、実に9割近くが財産漏れを指摘されていることが明らかになっています。しかし、こうしたなか、「税務調査に来たにもかかわらず、追徴税を課されない」というケースもあるようです。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が、事例をもとに税務調査の実態について解説します。

「年の差婚」も、地元で有名な“おしどり夫婦”のA夫妻

59歳のAさんは、約2年前、20歳年上の夫Bさんを亡くしました。享年77歳でした。Bさんは自ら立ち上げた建設会社をその地域の有力企業にまで育てたやり手の経営者で、年収はピーク時で4,000万円ほどありました。

Aさんは、会社が右肩上がりの時期に受付事務として入社。BさんがAさんにひと目惚れし、猛アプローチののち交際し、結婚にいたったそうです。

交際当初こそ、Bさんからのあまりに積極的な愛情表現に悩んだり、同世代に「20歳も年上の人と付き合って、本当に大丈夫なの?」と心配され気に病んだりしていたAさんでしたが、次第にユーモアに溢れ包容力のある夫に惹かれ、結婚後は地元でも有名なおしどり夫婦に。

子どもが生まれてからは専業主婦となりましたが、夫が現役を退くまで献身的にサポートを行い、会社の成長を見守ってきました。

そのため、Bさんが亡くなったときはひどく憔悴。若いときは、「俺がAより先にいなくなっちゃうと思うからさ、迷惑かけないようにきちんと準備するから」と言ってくれていましたが、晩年は“とある趣味”にハマり、家を空けることもしばしば。

そんな夫の死から2年ほど経ち、ようやく悲しみも和らいできた折、Aさんのもとに税務署から「相続税の調査に伺いたい」と連絡が入りました。

(相続税の申告は期限内に済ませているし、特にたくさん財産があったわけでもないのに、なぜうちなんかに来るんだろう……)

Aさんは疑問に思いましたが、ここで変に渋っても面倒だと考え、素直に受け入れました。

平静を装った税務調査官たちの“黒い思惑”

そして、税務調査当日。2名の調査官はいたって平静を装ってA家を訪ねてきたものの、内心は息巻いていました。

「地域でも有名な経営者なのに、過去の所得税の申告状況から考えると相続財産が少なすぎる! きっとタンス預金が眠っているはずだ。そうでなくても、名義預金か贈与か、絶対になにか隠しているはず……」

しかし、税務調査の結果、Aさんが“とあるブツ”を差し出したところ、調査官は「なんと……すみません、これは税金とれませんね。申し訳ありませんでした」と陳謝。肩を落として帰って行ったのです。

税務調査官が「陳謝」したワケ

調査官たちのクールな表情とは裏腹に、調査自体は和やかな雑談からスタートしました。しかし、Aさんの警戒心が少しずつ解けてきたころ、調査官は遠回しに探り出します。

調査官「旦那さんは地元では有名な経営者でしたよね。相続税の申告書に記載されている財産額について、どうもおかしな点がありまして……。生前の旦那様の所得状況や確定申告内容から鑑みると、少なすぎるように感じるのですが」

すると、「それは、ですね……お話するのはすごく恥ずかしいんですけれど」と、Aさんは伏し目がちに答えます。

Aさん「夫は、ずっと真面目一辺倒で生きてきた反動なのか、晩年はギャンブルにハマってしまいまして……。『お金はあの世に持っていけない』が口癖で、競馬や競艇に出かけては、散財してしまったんです。

『もっと大事に使ったらどう? 私の老後の資金とかも考えてほしいし、そういう使い方は止めてほしい』とは言ったのですが、『自分が稼いだ金を自分で使ってなにが悪い!』 と取り合ってもらえなくて」

調査官「いやいや……それにしてもあまりに少なすぎませんか? ギャンブルや飲食等でここまで財産が減ると思えません。大きな買い物をしていないということであれば、頻繁に引き出されている預金はタンス預金でしょうか? あるいは、誰かに贈与されているのではないですか? 疑っているようで申し訳ないのですが、なにか証明できるものはお持ちでしょうか?」

ここぞとばかりに畳みかける調査官に、Aさんは無言で大きな段ボール箱を差し出しました。中を開けると、大量の馬券や舟券、Bさんが生前つけていた家計簿、飲み屋や高級ワインの領収書がパンパンに詰まっています。

Aさん「主人は昔から変に几帳面なクセがあって、お金の使い道はすべて把握しないと気が済まない人だったんです。子への教育費はもちろん、お歳暮や私へのプレゼントまで、細かく記録するような人でした。ギャンブルの結果はというと、勝つ日もあるのですが、結局負ける日のほうが多かったみたいですね……。

それと、主人はギャンブルにハマる前から、大のワイン好き。高級なワインを仲の良い友人や後輩に振る舞ったり、私たちや社員を連れて豪華な旅行に連れて行ったり、豪快な一面のある人でした」

調査官がAさんから渡された領収書を確認すると、たしかに毎月100万円を超えるギャンブル代の領収書のほか、100万円以上する高級ワインの領収書、その他飲食代や旅行に関する領収書などが確認できました。

調査官「そんな、まさか……こんなことに使っていたとは……確認のためお借りします」

その後、詳細に調査した結果、通帳からのお金の流れと領収書がおおむね一致することが判明。また、一緒に食事や旅行へ行った社員たちからも事実の裏付けがとれたことにより、税務調査は終了。追徴課税は発生しませんでした。

Aさんが「税務調査」の対象になったワケ

ではそもそも、なぜAさんが税務調査の対象に選ばれてしまったのでしょうか? 

全国の国税局と税務署をネットワークで結ぶ「国税総合管理(KSK)システム」により、日本のすべての納税者の申告書は管理されています。ここには資産の購入や売却などの履歴情報などの個人情報も蓄積されているため、相続税の調査対象となった場合、税務署はその人の財産をおおむね把握することができるのです。

今回のケースでは、税務署がKSKシステムにより故人であるBさんの過去の確定申告の収入や所得状況を確認したところ、どうも相続財産が少なすぎるのではないか? 現預金の動きはどうなっているのか? と調査の前に銀行に問い合わせ、預金の流れを調べてみたところ、大きなお金の動きが頻繁にあることが判明。

そこで、この引き出された預金について、「タンス預金をしているのではないか?」「子や孫に贈与をしているのではないか?」と疑われ、調査対象となったと考えられます。

故意に“財産隠し”をしている場合、多額の「ペナルティ」が発生

今回のケースでは、調査官に「相続財産が少ないこと」を詰問されました。しかし、Bさんはギャンブルや飲食等で使ったお金の記録をつけておいたため、「相続財産を故意に隠していたわけではない」と認められました。

とはいえ、「ギャンブルで負けたので、相続財産はありません」といえばすべてが認められる、というわけではありません。

たとえば、実情は異なるにもかかわらず、「ギャンブルで負けたから相続財産が少ないのです」などといい、後の税務調査において相続財産の申告漏れが指摘されたときは、意図的に財産隠しをしたと判断され、非常に重いペナルティである「重加算税」を課されることとなります。

この場合、延滞税も含め納税額が多額となってしまうため、正直に適正な申告を心がけましょう。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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