浅はかでした…〈月収60万円〉57歳サラリーマン〈退職金3,200万円〉に有頂天。早期退職で会社を去るも、100社応募も再就職決まらず「プライド崩壊」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月14日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
日本の企業の多くは60歳定年制を採用していますが、業績不振や人材の若返りなどを目的に、早期退職を募ることは珍しくありません。その際、退職金が上乗せされることが多く、「こんなにもらえるなら」と決断するサラリーマンも。ただ退職後に茨の道が待っているケースも多いようです。
定年退職金+給与1年分に惹かれて…定年3年前に退職
沢田浩介さん(仮名)。大卒時に入社したメーカーでのキャリアを経て、60歳定年の3年前に早期退職に応募しました。定年退職の場合に支払われる予定の退職金額に加えて、年収1年分が上乗せされる条件に惹かれたといいます。
――60歳まで働いていたら、2,200万円ほどの退職金を受け取れる予定でしたが、そこに1,000万円上乗せとなる。いい条件だと思いました
それまでは60歳まで働き、その後は再雇用制度でそのまま働こうと考えていたといいます。その際、管理職から契約社員になるため、役職手当がなくなるうえ、基本給は3割減。それら合わせて、給与は現役時代の3~4割程度になることがわかっていました。
【サラリーマンの定年退職金】
■大卒サラリーマン平均…1,896万円
勤続20~24年…1,021万円
勤続25~29年…1,559万円
勤続30~34年…1,891万円
勤続35年以上…2,037万円
■高卒サラリーマン平均…1,682万円
勤続20~24年…557万円
勤続25~29年…618万円
勤続30~34年…1,094万円
勤続35年以上…1,954万円
※出所:厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』
――この会社でこのまま働いた場合、この給与差にモチベーションがあがらないだろうなとぼんやりと思っていました。まったく違う環境であれば、給与減の事実を受け入れやすいのではないか……そんなことも考えて早期退職に申し込んだんです
大卒以来勤めていた会社を57歳で去り、3,200万円の退職金を受け取る。直前の月収は60万円ほど。その給与を捨てたとしても、退職金が振り込まれた預金通帳をみたときは思わずテンションが上がったといいます。
――そんな大金、仕事以外では見たことがなかったので(笑)
しかし住宅ローンの返済はまだ10年ほど残っているし、3人いる子どものうち、下の2人はまだ大学生。学費の支払いもあります。早期退職で仕事を辞めて、悠々自適の生活を送る……そういうわけにはいかないのです。
――退職金で有頂天になるのは一瞬だけ。すぐに再就職に向けて始動しなければなりませんでした
まずは転職サイトに登録。50代後半から60代の募集……いまどき、結構あることがわかりました。「これであれば、すぐに希望の仕事が見つかる」と楽観的に考えるようになったといいます。
100社応募も書類選考通過はたった2社の現実
再就職活動を本格化させた沢田さん。「すぐに仕事は見つかる……」その余裕はすぐに消え去りました。応募すれど書類審査が通らず、気づけば100社以上になっていたといいます。
――最近はキャリアシートをサイトにアップすれば、簡単に応募できるということもあるのでしょう。気づけば驚くような数の会社に応募していました。それでも書類審査に通ったのは、わずか2社……
書類審査の通った会社も1次面接で落ち、連敗記録を更新。キャリアコンサルタントに指摘されたのは、過去の成功体験。勤めていたのは会社は誰もが知る有名企業。そこで働いてきたというプライドがあり、なかなか自分のキャリアを見直すことができていないと、ずばりいわれてしまいました。
焦りを感じ、さらに経済的な不安も募っていきます。再就職が叶わないまま、本当は老後を見据えて運用しようと考えていた退職金3,200万円に手を付けるようになったといいます。
――ちょっと多めの退職金に惹かれて会社を辞めるなんて……やっぱり浅はかでした
株式会社マイナビによる『転職動向調査2024年版(2023年実績)』によると、転職して年収が上がった割合は男性では50代が最低で32.5%。転職の成功が給与アップであるならば、50代はかなり厳しいといえるでしょう。転職前後の年収額についても、性別年齢別で唯一50代男性は600.2万円から587.4万円に減額。沢田さんがいうように、確かに50代以降の求人は多いものの、転職者の希望と現実には大きな乖離が生じていそうです。
現在、沢田さんはハローワークに通い、仕事を探しているといいます。
[参考資料]
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