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動悸がします…一流大卒でも「手取り月35万円」、大手の内定を蹴って中小入社の63歳元サラリーマン。還暦の同窓会で高給取りエリート同級生から、胸にくる 「さりげない羽振り自慢」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月24日 10時45分

動悸がします…一流大卒でも「手取り月35万円」、大手の内定を蹴って中小入社の63歳元サラリーマン。還暦の同窓会で高給取りエリート同級生から、胸にくる 「さりげない羽振り自慢」【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

大企業と中小企業の給与格差は、人生設計を大きく左右する現実です。やりがいや成長を求め、あえて中小企業を選んだとしても、この格差を前に自信を失ってしまうこともあるかもしれません。本記事では、山田さん(仮名)の事例とともに、生涯賃金1億円の差について、合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が解説します。

大手の内定を蹴って中小企業を選んだ誇り

「確かにウチは大手じゃないけど、世界に誇れる技術を持つ会社なんです」

工業用精密機器メーカーに38年間勤務してきた山田健一さん(仮名/63歳)は、新入社員の面接でいつもそう語ってきました。有名国立大学工学部を卒業後、大手メーカーからの内定を断り、あえて従業員250人規模の中小企業への就職を決めた山田さん。

その理由は「技術者として、モノづくりの現場で成長したかった。そして、自分の力を発揮できる環境を会社が約束してくれた」から。

大手企業の説明会では、「組織のなかの1つの歯車になるだけ」という印象を受けました。家族からは「安定した大企業の内定を断るなんて」と反対されましたが、中小企業だからこそ得られる現場での裁量と責任の大きさに魅力を感じたと言います。

入社後は、会社が約束したとおり、若手ながら重要なプロジェクトを任され、その後は技術開発部門のリーダーとして新製品の開発に携わり、特許取得にも貢献。充実した日々を過ごしました。

給与は大手企業と比べると低め。手取りにすると月35万円程度でしたが、家族4人、安定した生活を送ってこられました。しかし、先日参加した大学の同窓会で、その自信は揺らぐことになります。

広がる企業規模による給与格差…統計が示す現実

還暦を迎えた年の同窓会に出席した山田さん。大手企業に勤める友人が、「息子家族にねだられて、年末はハワイだよ、費用はジジ持ちでお願いって孫をダシに使われちゃ断れないよな」と話すのを耳にしました。

ハワイに行きたいとは思わないし、まったく羨ましくもないけれど、自分の子どもたちはキャンプ止まり、ほかの選択肢はなかったなあ、と山田さんは思い出し、なぜだか複雑な気持ちになりました。

厚生労働省の令和5年『賃金構造基本統計調査』によると、55~59歳の平均月額給与は、従業員1,000人以上の大企業で49万3,000円、従業員100~999人の中企業では41万7,000円と、年間91万2,000円の差があります。さらにボーナスを含めると、その差は年間200万円以上に拡大します。

退職金においても、大企業(従業員1,000人以上)の標準的な額は2,200万円超なのに対し、中小企業では1,100万円程度と、約1,100万円の開きがあります(厚生労働省「令和5年賃金事情等総合調査」、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」より)。

これは40年間働いた場合、生涯賃金にして約9,000万円の差となります(年収差200万円×40年+退職金差1,100万円)。

さらに、これら賃金の差は老後の厚生年金の額にも影響をおよぼします。年額で44万円、月額ベースで3.6万円です。65歳から90歳までの25年で1,100万円、生涯賃金と合わせた差は実に1億円にも上ります。

「息子が私立大学に行くことになって。仕送りが大変だよ」

「来月、家内と海外クルーズなんだ」

何気ない会話の一つひとつが、山田さんの胸に突き刺さりました。同窓会の帰り道、電車のなかでため息が出ました。「確かに給料や待遇では大企業におよばないかもしれない。でも、自分は本当にやりたかった仕事ができた。それは何物にも代えがたい経験だった」と自分に言い聞かせます。

帰宅後、お風呂に入って床に就き、家族の将来を考えると、複雑な思いが去来。動悸がして、眠れない夜を過ごすことになりました。

中小企業ならではの価値との向き合い方

しかし、山田さんの選択には大きな価値がありました。中小企業ならではのメリットを挙げてみましょう。

1.早期からの重要な意思決定への参画

2.技術開発から製品化までの一貫した経験

3.顧客との直接的なコミュニケーション

4.経営陣との距離の近さ

5.自身のアイデアを形にできる機会の多さ

「給与面では大企業におよびませんが、一技術者として成長できる環境がありました」と山田さんは振り返ります。

では、山田さんのように中小企業で働く人々は、この現実とどう向き合えばよいのでしょうか。定年直前ではなく、早い段階から意識しておきたいことをまとめてみました。

1.自己価値の再定義:金銭的な成功だけでなく、スキルや経験の面から自己評価を行う

2.専門性の確立:中小企業での幅広い経験を活かし、特定分野のエキスパートとしての地位を確立する

3.副業・複業の検討:専門知識を活かしたコンサルティングなど、収入源の多様化を図る

4.継続的な学習:最新技術や業界動向へのキャッチアップで、市場価値を維持・向上

企業規模による給与格差は現実として存在しますが、それぞれの働き方に価値があります。大切なのは、自身の選択に誇りを持ち、その環境でしか得られない経験を最大限活かすことではないでしょうか。

三原 由紀

合同会社エミタメ

代表

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