つい浮かれてしまいました…年収2,000万円オファーで転職した56歳会社員、意気揚々と港区のマンションに転居。新生活を始めたが…わずか2年後、小さなアパートの一室で後悔の日々へ【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月23日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
ヘッドハンティングによる転職の場合、年収が大幅アップするケースは少なくありません。それまで働いてきた努力が実った結果ですから、喜ぶのは当然のこと。しかし、過度に舞い上がってしまうと、のちに大きな後悔をもたらすこともあるようです。今回は転職が引き起こした老後破綻危機について、中村さん(仮名)の事例をもとに小川洋平FPが詳しく解説します。
50代金融機関勤務のサラリーマンに訪れた華々しい転機
中村徹夫さん(56歳・仮名)は港区在住の外資系企業のサラリーマンです。中村さんは2年前にヘッドハンティングされ、今の会社に移ってきました。
もともとは国内の銀行に勤務。営業成績は中の上程度でしたが、実直な性格と顧客からの信頼を評価され、課長職を任されていました。
そんな中村さんに転機が訪れたのは2年前。外資系不動産会社に勤務していた友人から、「営業経験が豊富な人材を探してるんだ。うちに来てチャレンジしてみないか? やりがいがある仕事だし、給料も今より上がるよ」と誘われたのです。
中村さんにとっては願ってもないチャンスです。それまでの仕事に大きな不満はなかったのですが、給料アップは大きな魅力ですし、外資系という未知の世界にも興味が湧きました。
その後はとんとん拍子に話が進み、転職が決定。銀行で管理職をしていた経歴や人脈、と友人の紹介という期待も考慮され、部長職として年収2,000万円もの報酬を約束されたのでした。
それは当時の年収よりも格段に高く、中村さんは喜びでいっぱいになりました。もうお金の心配をする必要はない。そう確信した中村さんは、この機会に立地がよくなかった家を買い替えることに。
子供達もそれぞれ独立していたため、妻と2人で暮らせる程度の広さで、職場にも通いやすい港区の中古マンションを8,000万円以上で購入したのでした。
転職先で待ち構えていた大きな壁…わずか2年で退職へ
こうして外資系不動産会社に転職した中村さんでしたが、喜びは長く続きませんでした。1年もしないうちに営業成績の低迷に悩まされるようになったのです。
銀行時代は銀行の看板で顧客からの信頼を得ていましたが、外資系でメジャーとはいえない不動産会社では、これまでの客先との対応とは勝手が違っていました。
銀行時代の営業スタイルはまったく通用せず、部下達から相談を受けても銀行時代の経験則でのアドバイスになってしまいます。銀行時代に仲がよかった顧客のところを訪れても受注になることはなく、営業部の成績が伸びないまま転職から2年が経過しようとしていたのでした。
成果主義の会社において、そんな状態を役員が許すはずもありません。中村さんはいつも役員から厳しい叱責を受け、部下達への態度も次第にきつくなっていきました。そんな状況を見て、役員は中村さんに対してさらにミーティングの頻度を増やし、そのストレスが部下に向かうという悪循環に。
どう改善していけばよいのか、その方法がわからないまま部下たちの心は離れるばかりです。精神的に追い詰められ激しい胃痛に襲われる日々。結局中村さんは、わずか2年で辞職を決意することになってしまったのでした。
しかし、50代後半の中村さんは、なかなか再就職が決まりません。離職から半年が経過したころには、マンションを維持できるような余裕も無くなってしまいました。
仕事の選り好みはできないと、ひとまず工場で契約社員として働くことに。年収は400万円にまで減り、小さなアパートの一室で生活することになったのでした。
「目先の高待遇に踊らされず、もっと慎重に転職を考えるんだった。浮かれて引っ越しなんてするんじゃなかった」
そう後悔しましたが、いまさら元に戻る方法はありません。
「転職で収入大幅アップ」に潜むリスク
転職を機に収入が大幅に増え、舞い上がってしまうこともあるでしょう。しかし、高い報酬を伴う仕事ほど結果を求められ、結果が求められなければその報酬を維持できない場合もあります。
会社側は結果が出ないからといってすぐに解雇することは難しいものですが、会社員で守られている立場だからとはいえ、解雇されずとも中村さんのように追い詰められて退職するケースもあります。特に外資系は成果主義の傾向が強く、短期間で厳しい状況に追い込まれることも。
中村さんの場合、新しい環境で挑戦してみることはよいことではありますが、目先の収入が上がったからといって舞い上がって、ムダに支出を増やしてしまったことが問題でした。
前職で優秀であっても、環境が変わることで力を発揮できなくなってしまうことはよくありますので、いきなり家を買い替えるような、見切り発車してしまうようなことは避けたほうが無難です。
今回の中村さんは、マンションを売却することになりましたが、幸いにも買ったときとほとんど同じくらいの値段で売ることができ、借り入れを完済しても2,000万円程度の資産を残すことができました。
まだ定年退職の年齢までは先はありますから、年収400万円程度でもしっかり収入と支出をコントロールしながら働いていれば、老後の資金もそれなりに確保することは可能でしょう。しかし、下手をすれば住宅ローンで破産する可能性もありました。
どんな状況にでも対応できる家計管理を
今回はヘッドハンティングで高い収入を得ることになったが、仕事が上手くいかず離職することになってしまった中村さんの事例をお伝えしました。
日系企業であっても、解雇規制の緩和などが議論のテーブルに上がりはじめ、「会社員は安定」といった状態から変わりつつあります。
環境により活躍できる場とそうでない場がありますから、実際に仕事をしてみないと仕事が続くかどうかはわかりません。また、会社員だから年齢とともに収入が上がり続ける、今の水準が続くという見通しは甘いと言えるでしょう。
転職だけでなく会社の倒産などを機に収入が下がってしまったり、ケガや病気をきっかけに収入が減ってしまったりすることもあります。収入が上がったときに少しの贅沢をするのはよいですが、逆のことが起きた場合にも環境の変化に対応できる家計にしておく必要があります。
長い人生のなかでは、「まさか」のことが起きます。収入が高く豊かな生活を送ることができていても、自分のなかでの価値基準と向き合い、優先順位を決めておくことが大切です。環境の変化に素早く柔軟に対応できる判断力も養われますので、意識していきましょう。
小川 洋平 FP相談ねっと
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