【クルマ初モノ図鑑③】ミッションと駆動方式~世界初の乗用4WDはディーラーが開発!?
&GP / 2017年8月6日 20時0分
【クルマ初モノ図鑑③】ミッションと駆動方式~世界初の乗用4WDはディーラーが開発!?
今では当たり前となっているクルマの機能も、登場した時はその革新さに世の中が驚いたものがたくさんあります。この企画では、自動車のいろいろな機能がいつ国産車に搭載されたのかを振り返っていきます。
今回はトランスミッションと駆動方式。
■スズキスズライトSS(1955年)~国産車初のFFモデル
キャビンより前方にエンジンを配置し前輪を駆動させるFF(FWD/Front Wheel Drive)は、小型車から大型車まで現在の主流となっている駆動方式です。FFは後輪を駆動させないのでプロペラシャフトが必要ないというメリットがありますが、一方で前輪が駆動と旋回を一手に引き受けるためバランスのいい走りを与えるのが難しく、1950年代まではFFの国産車はありませんでした。
1955年に登場したスズキ初の軽四輪乗用となるスズライトSSは、最高出力15.1馬力の360cc空冷2気筒2ストロークエンジンで前輪を駆動させるFF方式を日本で初めて採用したモデルです。エンジンはエンジンルーム内に縦置きにされているのが特徴です(現在のFF車の多くは横置きエンジン)。ちなみにスズライトSSは他にも、2サイクルエンジンを搭載する初の本格四輪車、日本初の本格的軽四輪乗用車など、いくつも偉業を達成したモデルでもあります。
■マツダR360クーペ(1960年)~国産車初の本格的なAT搭載
現在、日本で販売される乗用車のほとんどはATやCVTなどの2ペダル車。運転免許もAT限定で取る人が6割近くになります。しかし、もともと日本の自動車はMTが主流でした。ATはというと、T型フォードに前2段のセミATが搭載され、1930年代末にはゼネラルモーターズが本格的なATを開発するなど、早い段階から実用化されていました。
日本はトヨタが1959年に2速セミAT「トヨグライド」を開発。商用車のマスターラインやクラウンに搭載します。トルクコンバーター付きのATは1958年に岡村製作所が開発し、ミカサというモデルに搭載しました。そしてこのトルコンを1960年に登場した東洋工業(現マツダ)のR360クーペにオプション設定。これが国産車初の本格的ATモデルと言われています。また、R360クーペは軽乗用車で初めて4サイクルエンジンが搭載されたクルマでもあります。
■スバルレオーネエステートバン(1972年)~世界初となる乗用4WDモデル
水平対向エンジン(BOXERエンジン)と並ぶスバルの代名詞である4WD(AWD)。その誕生にはユニークな逸話があります。それは「スバルの4WDは東北電力からの依頼がきっかけで開発された」というものです。
電力会社は冬でも送電線の点検のため、雪深い山にクルマで入っていかなければなりません。東北電力の技術者は送電線点検のために幌トラックに乗っていましたが、乗り心地が悪く、しかも暖房がなかったので、とても過酷な仕事でした。そこで東北電力は富士重工業をはじめ、国内の自動車メーカーに乗り心地のいい4WD車の開発を依頼しますが、すべて断られてしまいます。しかし東北電力は社員のためにこの計画を諦めず、ある会社に開発依頼を持ちこみます。富士重工業の特約店だった宮城スバルです。
宮城スバルはスバル1000バンにブルーバードのドライブシャフトを積んで、約1年がかりで4WDのプロトタイプを開発。そしてこの車両を富士重工業に持ちこんだことで、富士重工業社内で乗用4WD開発がスタートしました。そして1972年、世界初の乗用4WDモデルとなるレオーネエステートバンが誕生したのです。宮城スバルは現在でも「スバル4WDの聖地」と呼ばれています。
■スバルジャスティ(1987年)~世界初となる電子制御式CVTの量産化に成功
▲写真はジャスティ4WD(1984年)
2000年前後から日本車で急速に普及したCVT。ギアで変速させるのではなく、ベルトなどを使って無段階に変速するため、変速ショックがない、エンジンの効率がいい場所を使えるなどのメリットがあります。とくに日本では低燃費志向の高まりとともに、多くのモデルで採用されるようになりました。
CVTを搭載したクルマは1950年代には開発されていましたが、富士重工業は1987年に電子制御電磁クラッチを用いたECVTをジャスティに初搭載します。このときのCVTはお世辞にも乗り心地がいいとは言えず、ユーザーからは酷評されます。しかしスバルは地道にCVTを改良・開発し続け、1990年代に登場したヴィヴィオやサンバー、プレオなどに搭載しました。この努力は現在のリニアトロニックへと受け継がれています。
■三菱FTO(1994年)~ドライバーの好みや運転技量に応じてシフトタイミングを変えるATを世界初搭載
1994年に登場した三菱FTO。名車「ギャランクーペFTO」(1971年)の名を受け継いだスポーツクーペには、5MTと4ATが設定されました。スポーツモデルですが、注目されたのは4AT。ドライバーの好みや運転技量に応じてシフトタイミングを変える「INVECS-IIスポーツモード4AT」が世界初搭載されたのです。このATにはシフトレバーの+と-でMTのようにシフト操作できるスポーツモードも搭載。FTOはINVECS-IIなどが評価され、1994年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
日本では1985年に50%以上あった登録車のMT比率が、1990年には約27%、そして1995年には2割を割り込みます。渋滞が頻繁に発生し、信号の数も多い日本では、普段の運転ではATのほうが楽。でも郊外に出かけたときなどにはスポーツドライビングを楽しみたい。FTOはそんな人たちから支持され、スポーツモデルながらATのほうが多く売れました。そしてFTOの登場以降、各メーカーがATやCVTにMTモードを搭載していったのです。
(文/高橋満<ブリッジマン>)
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