複葉機を最新キットで製作!目標は「張り線をビシッとキメる!」【達人のプラモ術<ブリストル・ブルドックMkⅡ>】
&GP / 2024年8月10日 7時0分
複葉機を最新キットで製作!目標は「張り線をビシッとキメる!」【達人のプラモ術<ブリストル・ブルドックMkⅡ>】
【達人のプラモ術】
エアフィックス
「1/48 ブリストル・ブルドックMk.Ⅱ」
01/06
■複葉機のモデリングは難しい?
これまで<達人のプラモ術>では、飛行機のスケールモデル、第二次大戦の戦闘機、飛行艇、最新のステルス戦闘機や大型輸送機、はたまたエアレーサーも製作してきましたが、考えてみると古き良き時代の複葉機(※1)は、まだ一度も製作していませんでした。
複葉機が活躍したのは第一次世界大戦。飛行機が大きく発達した時代です。第二次世界大戦では、より高性能な単葉機が主流となり、複葉機はごく限られた機体が使われただけです。今回製作するブリストル・ブルドック(Bristol Bulldog)は、イギリスのブリストル社が開発した複葉の戦闘機で、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に活躍した機体です。
スケールモデルの中でも複葉機は、派手なカラーリングや、第一次世界大戦ではエースパイロッットの逸話が多いこともあって、人気があり、キットも数多く発売されています。とはいうものの、スケールモデル的には複葉機はちょっとハードルが高いと言われています。
なぜか、と問えば、翼間にワイヤ(張り線)があるからだという答えが返ってきます。そして大抵のキットは、この張り線を自作で工作しないといけないこともあり、複葉機は敬遠されていることが多いのです。
しかし昨今は張り線に適したアイテムなども発売されており、工作にしてもハードルは低くなっています。
というワケで今回のお題は複葉機、テーマは張り線! いざ製作開始です!(全6回の1回目)
<※1>複葉機(ふくようき)とは揚力を得るための主翼が2枚以上ある飛行機を指す。揚力は速度の2乗、密度、翼面積に比例するため、エンジンが非力で速度が小さい初期の飛行機は、機体を飛ばすのに必要な揚力を確保するため翼面積を大きくする必要があった。しかし当時の翼は布張り木製で機体強度がなかったため、単葉機の製作が難しく、そこで短い翼を上下に配置した複葉とし、その間に桁やワイヤーをめぐらすことで、強度を保ちつつ翼面積を大きくした。より揚力を求めるために翼が3枚以上の飛行機も存在する。狭義として主翼が2枚のものを複葉機、3枚のものを三葉機、4枚以上の翼があるものは多葉機と呼ぶ。
▲三葉機のフォッカーDR.1(1917年)
▲多葉機のカプロニ Ca.60(1921年)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■約1000枚の図面資料から精密再現された最新キット!
今回製作するのは英国の老舗模型メーカー、エアフィックス社が先ごろ発売したばかりの「1/48 ブリストル・ブルドックMk.Ⅱ」です。英国ではすでに発売中のキットですが、日本は9月ごろの発売が予定されています。
イギリスでもっとも有名な複葉機をイギリスの老舗模型メーカーが、約1000枚の図面資料から精密に再現したキットということもあって、達人的には国内での発売が待ちきれず、エアフィックス社から直接入手しました。すでにディテールアップ用のエッチングパーツや別売デカールもリリースされているようです。
国内販売価格は未定ですが、今回、模型仲間と有志を募ってまとめて注文したので、若干送料が安くなり価格は送料込みで約6000円でした。
にしてもエアフィックスは自国(イギリス)の機体のキットには力の入れ方がハンパない。ドイツ機となるとキットの出来は悪くないにしても、ボックスアートでは必ず英国機にやられているシーンを使うのも、いかにも英国の模型メーカーらしいです。
エアフィックス
「1/48 ブリストル・ブルドックMk.Ⅱ」(国内販売はGSIクレオス扱い)
発売日:未定
価格:未定
▲コンパクトな機体の割にはパーツ数も多く、コクピット含めて細部までこだわりの再現がなされている
▲エアフィックスというと、割と太めのモールドが多いという印象があるのだが、本キットはモールドもシャープ
▲布張りの質感などディテール再現も秀逸だ
▲塗料瓶と比べると、1/48スケール機としても機体がコンパクトなのが分かる
▲デカールは1929年第3飛行中隊所属機を含む3機分が付属する
▲「1/72 メッサーシュミット Bf109E-4」のボックスアート。キットの機体なのにスピットファイアにやられて火を噴いて撃墜されているとは…いかにもエアフィックスらしい
▲無塗装完成イメージ。シリンダーがむき出しの特徴的なエンジンをはじめ、細部ディテールの完成度の高さが分かる。メーカーのサンプル画像
■ブリストル・ブルドックMk.Ⅱとは
ブリストル・ブルドックは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間となる1926年にイギリスのブリストル社で開発された戦闘機です。
資料によると初飛行は1927年5月で、飛行性能を含め全般的に優れた機体で、整備が容易である点が特に評価され1928年から量産を開始。最終的に約440機が生産されました。
機体は全長7.54m、全幅10.36 mとかなりコンパクトで、エンジンはブリストルジュピターV2F単列9気筒空冷星型エンジン(498馬力)を搭載。最大速度は300km/h、武装はヴィッカース7.7mm機関銃を2丁装備していました。
1930年代初期のイギリス空軍は、本機が主力戦闘機として多くの部隊に配属されていましたが、1937年にはホーカー・ハリケーンと交替しイギリス空軍からは退役しています。
ブルドッグは、オーストラリア、フィンランド、スウェーデン、ラトビアなど、多くの国に輸出されており、特にフィンランドにおいては、第二次大戦時、既に旧式機となっていながらも対ソ連軍との戦闘で使用され活躍しています。
▲複葉の主翼に、ブリストルジュピターV2F空冷星型エンジンを搭載し、運動性も良かったブリストル・ブルドックは時速300km/hで飛行することができた
▲イギリス空軍博物館に所蔵されているブリストル・ブルドックMk.Ⅱ
■まずはコクピットの製作
早速、組み立てを進めていきましょう…と、その前に。海外メーカーのキットにありがちな離型剤がかなり気になるので、ランナーの状態で家庭用洗剤(マジックリン等)を使って水洗いしておきましょう。離型剤が残っていると塗装の際に塗料がはじかれてしまうなどトラブルの原因になります。洗浄後は水気を良く拭き取り自然乾燥させておきます。
▲家庭用洗剤でパーツを水洗浄して、塗装トラブルの原因になる離型剤を落としておく
▲洗浄後乾燥中のパーツ。小パーツの紛失に注意
■悩ましきはハンブロールカラーによる塗装指示
イギリス機に多い鋼管フレームで囲われた特徴的なコクピットは、1/48スケールとしては、これで充分といった感じで細部まで再現されています。パーツの合いも良く、サクサクと組み立てを進められます。とはいうものの、悩ましいのがパーツの塗装指示です。
パーツごとに「ここは何色に塗りなさい」と指示されているのはありがたいのですが、色指定はすべてハンブロールカラーとなっています。同カラーは英国製のエナメル塗料で、国内でも販売されています。50代以上のモデラーなら知っている人も多いでしょう。
1970年代~80年代初頭まではかなり使用頻度が高かった塗料で、筆塗りに特化しており発色も悪くないのですが、エナメル塗料ということもあり、乾燥が遅い、ラッカー塗料の重ね塗りができない、といった欠点が…。国内メーカーの模型用塗料の進歩に伴い、徐々に使うモデラーを減らした塗料です。
達人的には、一度蓋を開けてしまうと、ちゃんと密閉できなくなり、気が付くと固まっている金属容器に泣かされた記憶があります。
同じ英国製品ということもあるのでしょう。先にも書いたように塗装指示はすべてハンブロールカラーなので、これをMr.カラーやタミヤカラーに置き換える必要があります。
ありがたいことにネットを検索するとハンブロールカラーと国内模型用塗料の互換表が数多く公開されているので、それらを参考に今回の作例は基本Mr.カラーで塗装していきます。
▲ハンブロールカラーのカラーサンプル
▲Mr.ホビーによるハンブロールカラーとMr.カラーの互角表
■コクピットを組む
コクピットパーツは小さいので、ランナーから切り離す際に折損しないように注意してください。また切り離した部分はアンダーゲートになっているので、研磨しておく必要があります。
またキットにはシートベルトが付属していません。今回はファインモールドが発売しているナノアビエーションシリーズの「1/48 イギリス機用」を加工して追加してあります。
基本塗装は指定色で塗装していますが、最後にブラックでスミ入れをすることで、全体のトーンを暗めに仕上げています(完成後はほとんど見えませんが、モデラーの性です)。
▲胴体とコクピットパーツ。小さいので紛失に注意
▲コクピットパーツは全て下地を黒サフで塗装した後、指定色(Mr.カラー)で塗装している
▲塗装後のコクピットパーツ
▲計器盤のメーターはデカールで再現
▲シートベルはファインモールドのナノアビエーション「イギリス航空機用シートベルト」を加工して追加した
▲塗装後、組み上げたフレームで囲まれた特徴的なコクピット
▲コクピットは細部までよく再現されているが、完成後はほとんど見えなくなってしまう
▲一般的な塗料瓶と比べるとコクピットの小ささが分かる
▲胴体内部にコクピットを収めた状態
▲胴体を貼り合わせたのち、接着剤が乾くまでマスキングテープでしっかり固定しておく
* * *
というわけで今回はここまで。次回も主翼製作など、基本工作が続きます。そして複葉機の鬼門でもある張り線についても解説していきます!乞うご期待!
▲キットのインストによる張り線の指示。赤ラインを全部張らなくちゃいけません。大変ですが嫌複葉機の醍醐味です!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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