レプリカ世代なら自動変速よりこっちかも!? ホンダ「CBR650R」の“Eクラッチ”がスゴい
&GP / 2025年1月12日 7時0分
レプリカ世代なら自動変速よりこっちかも!? ホンダ「CBR650R」の“Eクラッチ”がスゴい
昨年、注目を集めたバイクのテクノロジーが自動変速機構です。スクーターなどに採用されるCVTとは異なり、マニュアルトランスミッションの変速を自動化してくれるシステムで、ヤマハをはじめ、BMWやKTMが相次いで導入しています(「バイクの変速は自動化する!? スクーターとは違うスポーティな変速システムを各社が導入」)。
そんな中で、異彩を放っていたのがホンダが導入した「Eクラッチ」というシステム。同社は自動変速については「DCT」という機構を導入していて、既に多くのモデルに展開していますが「Eクラッチ」はあくまでもクラッチ操作を自動化したもので、変速操作はライダーが行う必要があります。「Eクラッチ」を初搭載した「CBR650R」に試乗し、この技術の魅力と狙いについてレビューします。
■二輪AT免許では運転できない
「CBR650R」の「Eクラッチ」モデルを見て、まず気付くのは、クラッチレバーが付いているということ。クラッチの操作を自動化してくれるシステムですが、ライダーが任意のタイミングでクラッチを切ったり繋いだりできます。クラッチレバーがなければ、AT限定の2輪免許で運転できますが、クラッチレバーを残しているのは、AT免許で乗れるようにすることよりも、ライダーに操作の余地を残すことを優先しているとわかります。
過去にレーサーレプリカなどのスポーツモデルに乗ってきたライダーなら、発進時にいつもより回転数を上げてスタートダッシュをしたいと思ったりすることもあるはず。そういう場合には、自動ではなく手動操作でクラッチを操作できるようにしている点が「Eクラッチ」の特徴です。
■発進・停止時のストレスが激減
「Eクラッチ」は、走行中はもちろん、発進・停止時もライダーはクラッチを操作する必要がありません。発進時はシステムが自動で半クラッチを使ってくれて、ライダーはアクセルを開けるだけでスムーズに発進できます。停止する際も、クラッチを握らないままブレーキで停まっても自動でクラッチが切れてくれて、エンストしてしまうことはありません。
驚くのは、停止時にギアを1速まで落とし忘れていても、そのまま発進できてしまうこと。クラッチ板が減ってしまうので、メーカーでは1速以外での発進を推奨していませんが、ギアが6速に入ったままでもスタートできてしまいます。もちろん、高いギアだとスムーズな発進にはなりませんが、ギアを落とし忘れていてもエンストしないのは大きなメリットに感じるはずです。
■ギアチェンジの楽しさはそのまま
「DCT」などの自動変速モデルでは、左足側のシフトレバーが存在しないのが一般的で、変速したい場合は手元のボタンでシフトチェンジができます。対して「Eクラッチ」車は普通のバイクと同じように左足側のレバーでシフトチェンジを行う仕組み。ボタンでの変速は慣れるまで少し時間がかかりますが、左足でのシフト操作はマニュアルミッション車に慣れているライダーなら直感的に操作できます。
先代の「CBR650R」にもクイックシフターが搭載されていたので、走行中はクラッチ操作をする必要がありませんでした。ただ、このクイックシフターはレスポンスがあまり良くなかった印象があるのですが、「Eクラッチ」モデルになりレスポンスも向上。軽くシフトレバーを操作するだけで変速でき、シフトダウン時にはブリッピングのように回転数を合わせてくれるのでスムーズに減速できます。
■スポーツライディングに集中できる
「Eクラッチ」を搭載した「CBR650R」で、街乗りから高速道路、ワインディングまでさまざまなシーンで走行してみましたが、筆者としては「求めていたのはこれかも」という印象でした。クイックシフターを搭載したマシンに乗っていると、走行中はクラッチ操作が必要ないので「停止時にもクラッチを握らないで済めばいいのに」と思うことが少なくありませんでしたが、「Eクラッチ」はまさにそんな希望を叶えてくれる機構。渋滞時などでも、断続的にクラッチを切ったり繋いだりする操作が必要ないので、移動時のストレスが激減します。
それでいて、ワインディングでは好きなタイミングで直感的にシフト操作ができ、変速もスムーズ。スポーツライディングに集中できます。ワインディングの行き帰りで渋滞に巻き込まれても疲れが少ないので、よりバイクを操ることを楽しめるようになります。
■全てのマニュアルミッション車に対応してほしい
もちろん、もっと長距離を走るツーリングでは「DCT」などの自動変速車の方が快適度は高いのですが、快適さよりもスポーツライディングを楽しむことを優先したいライダーには、現状では最適な機構のように感じました。レーサーレプリカ全盛の頃にバイクに乗り始めたせいか、シフト操作はやはり自分好みのタイミングで、それも慣れた左足の操作でやりたいんですよね。
とはいえ、中年になると面倒な操作はできるだけ省きたいという欲もあり、「Eクラッチ」はそのバランスがいい感じなのです。「Eクラッチ」は既存のマニュアルミッション車に追加しやすい機構で、重量増も2kg程度に抑えられています。価格もスタンダードモデルと比べて5万5000円増で済むとなると、ホンダのマニュアルミッション車全てに対応モデルを設定してほしいと感じるのは筆者だけではないでしょう。
原付二種以下のモデルですと、カブシリーズや「ダックス125」のように自動遠心クラッチ搭載モデルもありますから、250cc以上のスポーツモデルに限定したほうが現実的でしょうか。自動変速モデルにも結構乗っていますが、遠出をするよりも短時間でもスポーツライディングを楽しみたいというライダーには「Eクラッチ」が適しているように感じます。
>> ホンダ「CBR650R」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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