【世界の絶景】美は細部に宿る、スペイン屈指の世界遺産・アルハンブラ宮殿はやっぱりすごい!
GOTRIP! / 2016年12月7日 8時0分
アンダルシア地方の古都、グラナダのアルハンブラ宮殿は、スペインで最も人気がある観光地の一つ。かつてこの地を支配したイスラム王朝が残したこの壮大なモニュメントは、世界遺産にも登録されています。
グラナダは、イベリア半島におけるイスラム王朝の最後の栄華の舞台となった街で、街を見下ろす丘の上にそびえるアルハンブラ宮殿はグラナダのシンボル。1238年、イベリア半島でレコンキスタの風が吹くなか、グラナダ王国は建国されました。
アルハンブラ宮殿は、イベリア半島における最後のイスラム王朝となったナスル朝の初代王ムハンマド1世によって建設が始められ、14世紀、7代王のムハンマド5世の時代にようやく完成をみました。
アルハンブラ宮殿は、外観はむしろ無骨ですが、一歩中に入ればイスラム芸術の結晶が生み出す幻想的な空間。
その類まれなる美しさから、「王は魔法を使って宮殿を完成させた」とさえ言われたのだとか。アルハンブラ宮殿は、まさにイベリア半島におけるイスラム芸術の最高傑作なのです。
イベリア半島におけるイスラム支配の終焉が訪れたのは、1492年のこと。レコンキスタの勢いには抗えないと判断したナスル朝最後の王ボアブディルは、カトリックの女王イザベルに城を明け渡し、臣下とともに北アフリカに逃れました。
アルハンブラ宮殿は、スペインにおけるイスラム王朝の栄華を物語ると同時に、勢力争いに敗れた文明の悲哀をも象徴しているのです。
アルハンブラ宮殿は一つの建物ではなく、1万4000平米もの広大な敷地をもつ城内に、宮殿や城塞など数々の建造物が点在しています。
かつて、城内にはモーロ人貴族を中心に2000人もの人々が暮らし、市場やモスク、住宅が整備されていました。アルハンブラ宮殿は、小さな街といってもいいほどのスケールなのです。
なかでも、絶対に見逃せないのが「千夜一夜物語」さながらの幻想世界が展開するナスル宮殿。ナスル宮殿は、大きく分けて、ライオン宮、コマレス宮、メスアール宮の3つの部分に分かれます。
ナスル宮殿の最大の見どころが、かつての王の居住空間であったライオン宮。12頭のライオンが噴水を支えている「ライオンの中庭」は、アルハンブラ宮殿のシンボル的存在です。
この中庭はコーランに登場する天国をイメージして造られたもので、ライオンの口から四方の溝へと流れる水は、天国の川を意味しているといわれます。
124本もの白大理石の列柱が創り出す静謐な空間はまるで森のよう。柱上部のアーチに施された繊細な漆喰装飾に目を奪われます。
中庭の南にある「アベンセラヘスの間」は、豪族アベンセラヘス一族が最後の王ボアブディル王に惨殺されたという伝説から名づけられました。この部屋の見どころは、なんといっても星をイメージしたという天井。
16角の天井を覆うモカラベ様式の鍾乳石飾りは、その複雑な構造から「蜂の巣天井」とも呼ばれます。これほどまでに手の込んだ装飾天井をかつて見たことがあったでしょうか。まさに「芸術」と呼ぶにふさわしい美しさにため息がこぼれます。
ライオンの中庭の北側にある「二姉妹の間」も、モカラベ様式の天井が美しい広間。夏の住居として使われていたこの空間は、噴水の左右に同じ大理石の敷石があることからこの名がつけられました。
壁から天井までをびっしりと覆う装飾の数々は、気の遠くなるような作業によって生み出されたものに違いありません。
二姉妹の間の奥には、「リンダラハの望楼」と呼ばれるバルコニーがあり、二連アーチの窓の向こうに中庭が広がる光景は、おとぎの世界のようです。
アルハンブラ宮殿で最も重要な場所とされているのが、王の公的な住居であったコマレス宮。コマレス宮を代表する空間が、水面に映る建物のアーチが美しい「アラヤネスの中庭」です。
「アラヤネス」とは「天人花」の意味で、左右に四角く刈り込んだ植物のこと。池の両側に建つ建物は、女性専用住居、いわゆるハーレムとして使われていました。
コマレス宮にある、アルハンブラ宮殿最大の広間が「大使の間」。王に謁見するために宮殿を訪れた大使がこの部屋に通されたのだとか。精緻なアラベスク模様で彩られた壁と、星空を思わせる木組みの天井が印象的です。
アルハンブラ宮殿を堪能するうえでのポイントは、「細部を観察する」こと。一見派手さはなくても、壁面や天井をびっしり覆う精巧な彫刻装飾は圧巻です。
幾何学文様やカリグラフィー(アラビア書道)といった装飾の一つひとつに目を留めてみると、アルハンブラ宮殿が「正気の沙汰ではない」と思えるほどの手仕事の結晶であることが実感できるはずです。
ひと目でもわかりやすい華やかさがある西洋建築とは違って、細部に宿る美こそがイスラム芸術の神髄なのです。
アルハンブラ宮殿の真の魅力は、空間全体をざっと見るだけでは十分に感じることはできません。立ち止まって、角度を変えて、距離を変えて、じっくりとその美の世界を味わってみましょう。
そうすれば、きっとあなたもこう思うはず。「アルハンブラ宮殿はやっぱりすごかった」と。
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