「シンドラーのリスト」の舞台、ユダヤ人の命を救ったシンドラーの工場は今も古都クラクフに
GOTRIP! / 2017年4月25日 16時30分
第二次世界大戦化下、ナチス・ドイツによる迫害から多くのユダヤ人の命を救ったオスカー・シンドラー。
彼の功績は自身もユダヤ系であるスティーブン・スピルバーグ監督の手により「シンドラーのリスト」として映画化され、大きな反響を呼びました。
そのシンドラーが経営していたホーロー工場跡が、今もポーランドの古都・クラクフにあります。現在はクラクフ歴史博物館のひとつとして、当時のクラクフやユダヤ人の様子を伝える役割を果たしています。
当時の面影を伝える外観は質素な印象。入口横の窓には、シンドラーに命を救われた人々の写真が掲げられています。
シンプルな外観に反して、内部は驚くほど近代的かつ充実した内容。工場の作業場やシンドラーの執務室の再現があるほか、クラクフの旧市街やゲットーの様子などが、写真や実物大の展示、映像などで紹介されています。
シンドラーの工場の中核をなすのが、常設展示「ナチス占領下のクラクフ 1939~1945」。ナチス・ドイツがクラクフに侵攻した1939年から終戦までのクラクフの様子が、年代順に3フロア22部屋にまたがって展示されています。
既存の建造物が破壊され、「アドルフ・ヒトラー広場」など、通りや広場、駅の名前がどんどんドイツ式に変えられてゆく姿や、ナチス・ドイツの行進の様子は、「侵略とはこういうものか」と、侵略戦争の非道さや理不尽さをまざまざと見せつけます。
旅行かばんや衣服などの身の周り品、家具や調度品、看板などは、当時のものや、当時の雰囲気を再現したものが用いられており、第二次世界大戦下の時代の雰囲気が感覚的にわかります。
展示空間自体も展示内容に合わせてつくられており、ナチス・ドイツのクラクフ侵攻を紹介する部屋では、炎が揺らめく映像や銃声によって戦争の緊迫した雰囲気を伝えています。
ゲットーを紹介する部屋はほとんど光が入らない、暗く陰鬱な雰囲気。本能的に恐怖を覚えます。そこに隔離され、劣悪な環境での生活を強いられたユダヤ人たちの悲しみや苦しみが伝わってくるかのようです。
傍観者として歴史を後追いするだけでなく、来館者に少しでも当時の人々の心境を感じてもらおうという工夫がされていて、どんどん展示に引き込まれます。館内全体をじっくり見学していると、2、3時間はあっという間に過ぎてしまうほど。
映画「シンドラーのリスト」を観た人にとって最も感慨深いのは、シンドラーの執務室の再現でしょう。
オスカー・シンドラーはチェコ出身のドイツ人。ナチス・ドイツのクラクフ侵攻に乗じて、ひと儲けを目論んでクラクフにやってきた実業家でした。
シンドラーは自身が経営する工場でユダヤ人を雇い、従業員としてリストアップされた1200人は、絶滅収容所送りを逃れたのです。
シンドラーの工場で働いていたユダヤ人が難を逃れたのは、彼の工場が「軍需工場」として、ドイツ軍司令部から特別の格付けを与えられたためでした。
結果的にシンドラーはおよそ1200人ものユダヤ人の命を救うという偉大な功績を残しましたが、シンドラーは、もともとヒーロータイプの人物であったわけではありません。
シンドラーの工場で実際に働いていた人々のインタビューを記録した映像が流れるミニシアターもあります。快楽主義者でプレイボーイとして知られていたシンドラーがいかに、ユダヤ人救出のヒーローとなったのか、そのリアルな人物像にも迫ってみてください。
ポーランドの人々やユダヤ人たちを襲った残忍で理不尽な戦争と迫害。それに胸が痛むと同時に、自分とは文化や習慣などが異なる人々を尊重することの大切さを再認識することでしょう。
また、非人間的な戦争のもとでも、虐げられた人々を救うために奮闘した人がいた。この事実に救われる思いがします。
「シンドラーのリスト」を観たことがない人も、クラクフを訪れるなら、ぜひ「シンドラーのリスト」を観てシンドラーの工場に出かけてみてください。
クラクフといえば、近郊にある世界遺産・アウシュビッツ博物館が有名ですが、アウシュビッツだけではわからない、戦争のさまざまな側面が見えてくるはずです。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
名前 シンドラーの工場( Oskar Schindler’s Factory)
住所 ul. Lipowa 4, Krakow 30-702, Poland
電話 +48 12 257 10 17
公式HP http://www.mhk.pl/oddzialy/fabryka-schindlera
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