【新東方見聞録】徳川家康とベトナムの知られざる「蜜月関係」(ベトナム・ホイアン)
GOTRIP! / 2017年5月25日 6時30分
徳川家康という人物は、「鎖国」を推し進めた内国主義的な政治家というイメージで語られてきました。
ですが近年の研究では、対外交易に極めて積極的な人物としての側面が浮かび上がっています。たとえば、駿府(現在の静岡県静岡市)の安倍川河口を工事して外国船が停泊できる水路を家康は造らせようとしました。
関ヶ原の戦いで石田三成に勝利し、征夷大将軍となった家康は東南アジアに朱印船を送り出します。その中でも、ベトナム・ホイアンとの交易は極めて盛んなものになりました。
・「貿易は儲かる」という常識
ベトナム中部の都市ホイアン。この町を流れるトゥボン川は、海と接続する交易水路として同地に莫大な富をもたらしました。
17世紀初頭から約30年間、徳川政権下の日本とベトナムは朱印船というパイプで結ばれ、複数の豪商を輩出しています。家康としては、彼らに海洋開拓を任せて日本を重商主義の国にしようという思惑だったはずです。
日本は16世紀から、流れとしては対外交易発展の道を進んでいました。織田信長が登場する以前にも、中国地方の有力大名大内義隆が貿易で巨万の富を得ています。さらにそれ以前、足利義満は日明貿易のためだけに明朝の冊封を受け入れています。
それだけ、貿易は儲かるのです。数々の修羅場をくぐり抜けてきた戦国大名が、その可能性を否定しないはずがありません。
・「日本人建造」の橋
ホイアンには、来遠橋という建造物があります。
これは屋根付きの橋で、16世紀末に日本人コミュニティーが作ったという言い伝えが残っています。ホイアンに限らず、この当時の東南アジアには日本人街が各地にありました。
来遠橋が日本人の手によるもの、というのはまだ決定的証拠が見つかっていません。ですが、決してあり得ない話でもないと思います。というのも、戦国時代は建築技術を大幅に躍進させた時代区分でもあり、そのエンジニアが国外に流出していてもまったくおかしくはありません。
また、家康がベトナムとの朱印貿易に熱心だった理由は、香木を手に入れることだったとも言われています。蘭奢待などが有名ですが、嗜好品としての香木は茶道具と同じく大金をもって取り扱われるものでした。そして香木の主な産地は、ベトナムです。
家康の真の狙いはこれだったのでは、とも考えられます。
・家康死後の「忘却」
ですが家康死後、江戸幕府は徐々に対外交易に興味を失います。
1630年代になると締め付けが一層厳しくなり、国外に出た日本人の帰国が禁止されてしまいます。ここから東南アジア各地の日本人街は衰退へ向かっていくのです。
そして日本人の脳裏からも、東照神君がホイアンとの貿易に情熱を注いでいたという事実が失われていきます。
あの時、我々の先祖が異国の地に残したものは何だったのでしょうか?
そしてそれが、後世にどのような影響をもたらしのたのでしょうか?
来遠橋は、今も在りし日のホイアンを見つめ続けています。
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