【ススキノ首切断殺人】瑠奈被告の声と修被告の証言に元裁判官「異常な状況下で両親としても止めるのは難しかったというストーリー」「やや場外戦になっているが、関与の程度が重要な争点」

殺人、死体遺棄…親子３人はどう関わっていたのか注目の裁判です。

去年７月、札幌市ススキノのホテルで男性が殺害され、首を切断された事件で、逮捕・起訴された親子３人のうち、母親の田村浩子被告61歳の裁判は１日に４回目を迎えました。

堀内大輝アナウンサー
「朝から傍聴券を求めてる人の列ができています」

父親の修被告60歳が３か月ぶりに証言するとあって、注目を集めました。法廷に姿を現した、修被告は…

修被告
「「生きたくない」気持ちの裏返しで「殺してやる」などの発言をしたんじゃないかと思ってる」

事件について、父親の口から何が語られたのか、もうひとほりします。

この事件の裁判では、死体遺棄と損壊のほう助の罪に問われた母親、田村浩子被告の裁判だけが進んでいます。

６月に開かれた初公判で浩子被告は…

浩子被告（初公判）
「犯罪を手伝う意思は全くなく、損壊を手助けするつもりも全くなかった」

涙ながらに無罪を主張しました。検察は、親子３人が共犯だということを立証するために、特殊な親子関係を指摘しました。

検察
「浩子被告と修被告は瑠奈被告が決めたルールを忠実に守る『瑠奈ファースト』の親子関係だった」

一方で弁護側は、瑠奈被告の計画は「まったく知らなかった」と主張し、対立しています。

１日の裁判の冒頭で、弁護側は証拠として、事件以前に修被告が録りためた娘の瑠奈被告30歳との会話の音声を流しました。

音声には瑠奈被告が英語で「Ｉ ｗａｎｔ ｔｏ ｋｉｌｌ ｙｏｕ」＝お前を殺したい、などと修被告をののしる様子が録音されていました。

さらに、精神科を受診させようとする修被告に対しては…

瑠奈被告
「てめえらを殺してやる。ずっとそう思って生きてきたんだよ。私の妹と私は」

音声の再生が終わった後、法廷に姿を現した修被告は、実際には妹のいない瑠奈被告が「妹」と発言したことについて

修被告
「「妹」とは瑠奈の魂のこと。話しているのはシンシアさんではないか」

以前から瑠奈被告の人格が、シンシアを名乗る別人格と入れ替わっていたと証言しました。

また、８月の裁判では、検察が瑠奈被告の計画を両親が事前に知っていた証拠として、修被告のスマートフォンに残っていた「ハイターで指紋は消せる？」といった検索履歴を提出していました。

しかし、１日の裁判で修被告は人形を集めている瑠奈被告から「ドールの皮脂汚れを消せるのか質問があった。皮脂汚れをハイターで消していいのか調べた」と証言し、事件との関連を否定しました。

親子３人が、事件にどうかかわっていたのか、検察と弁護側の攻防が続いています。

◇裁判を傍聴した堀内大輝アナウンサー
瑠奈被告の父親へのののしり方がVTRの吹き替えよりもかなり強い語気で、声を高く張り上げていました。
親子の日常の会話とは思えない、どう理解していいのかわからなかったのが正直な印象でした。

◇元裁判官 内田健太弁護士【弁護側が会話の音声を公開】
日常から一般では理解できない、英語が入り混じりかつ親を罵倒し、いろんな人格があるかのような発言があったと、異常な状況下だったので、両親としても犯罪を止めるのは難しかったというストーリーを裏づけたかったのかなと。

◇元裁判官 内田健太弁護士【検索履歴を証拠提出】
浩子被告の裁判なのに、修被告の発言に着目されていることから説明が必要ですが、検察としては修被告も犯行に関与していたと、それに関して浩子被告も共犯だというストーリーを組んだ。

それに対し弁護側は、そもそも修被告も共犯に当たらない。なので当然浩子被告も共犯に当たらないというストーリーを組み立てているので、そういう意味でやや場外戦になっているが、結果的に修被告の関与の程度が裁判の重要な争点になっている。

◇元裁判官 内田健太弁護士【検索履歴の信用性】
「殺人」「時効」などキャッチーなので裁判官としても引っ張られそうになるが、そこは慎重に考える必要があって、検索したものをみんな必ず実行しようと思っているとは限らない。

そもそも被告がどういう意図で検索したのか、本件の証拠隠滅のために検索したのか、裁判所としては慎重に見ていく必要がある。

◇元裁判官 内田健太弁護士【今後のポイント】
両親が遺体を自宅に置くことを容認したことで起訴されているが、今日までの証言を見ていても容認するとは具体的にどういうもののなか、全く語られていない。

犯罪の立証責任は検察なので、容認とは具体的にどういうものだったのか、次回検察がどれだけ証言を引き出せるか着目していきたい。