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「全然押せなかった」大の里の“気づきの場” 師匠・元稀勢の里に転がされ続けた新大関の7分間

スポーツ報知 / 2024年10月31日 6時0分

二所ノ関親方(左)を相手にぶつかり稽古を行った大の里

 大相撲で昭和以降最速の初土俵から所要9場所で大関昇進を果たした大の里(24)=二所ノ関=が30日、九州場所(11月10日初日・福岡国際センター)へ向けて相撲を取る稽古を福岡市内の部屋宿舎で再開した。十両・白熊(25)=二所ノ関=らを相手に計12番を取り、その後は師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の胸を借りてのぶつかり稽古。約7分間、元横綱と肌を合わせ、新大関場所に向け状態を上げていく。

 大の里は息を荒くしながら、元横綱の胸に当たっていった。稽古終盤、仕上げのぶつかり稽古。新大関に胸を出したのは、まわしを締めた師匠の二所ノ関親方だった。体を動かしていた若い衆は手を止め、視線は2人が立つ土俵に。緊張感が漂う静かな稽古場で「さあ来い」という声の後に、肌と肌がぶつかる音が響いた。

 約7分間、何度も押しては転がされ、苦悶(くもん)の表情。それでも最後まで食らいつき、全身砂まみれになった24歳の大器は「場所前に胸を出してもらえるのはありがたい。いい稽古になった。体力が落ちているので、初日に向けて稽古を積んで頑張りたい」と気合のこもった表情で語った。

 師匠と肌を合わせるのは、2度目の優勝を果たした秋場所前以来。当時は三番稽古で10勝7敗と勝ち越したが「得意の右を差せず、逆に左を差されたら何もできない」と課題を突きつけられた。その経験から得たのが、先場所で武器となった左おっつけ。師匠との稽古は、スピード出世を続ける大の里が気づきを得られる場だ。

 1日から行われた秋巡業に初日から同行していたが、「アデノウイルス感染症」で発熱し、17日から途中離脱。ペースを上げる必要がある中、「久々だった」と約2週間ぶりに相撲を取る稽古を再開した。師匠の真意は「分からない」というが、「親方を全然押せていなかったので、まだまだ。なまった体をしっかりと追い込むことができた。まだ時間はあるので初日に向けて頑張りたいと思う」とスイッチが入った。

 新大関として優勝すれば、2006年夏場所の白鵬(現・宮城野親方)以来18年ぶりで、師匠超えの3度目の賜杯となる。「これから、まだまだ伸びる。いよいよ始まるなという感じ。強い大関になってほしい」と、師匠もさらなる飛躍を期待をかける。元横綱から肌で感じた教えを胸に連覇を狙う。(大西 健太)

 ◆大の里の二所ノ関親方との稽古メモ

 ▽7月4日(名古屋場所初日は同14日。結果は9勝6敗) 同親方が胸を出し、何度も転がされる。「まだまだ(押しが)足りないので頑張りたい」

 ▽9月2日(秋場所初日は同8日。13勝2敗で優勝) 17番の相撲を取り、10勝。左四つ対策を学ぶ。「仕切りの部分でペースを握られ、自分の立ち合いができなかった」「出稽古にいくより、ためになる。胸を借りて稽古したことが秋場所(の結果)を左右した」

 ◆大の里が九州場所でかかる記録 新大関Vなら、1909年夏の優勝制度制定以降、06年夏場所の白鵬(現・宮城野親方)以来9人目。関脇、新大関場所での連覇なら、双葉山以来2人目。新入幕の年に年間最多勝を獲得すれば、60年の大鵬以来2人目。現在56勝の首位で、2位とは4差。

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