「顔がもう、真っ白になっている」 井上尚弥の父・真吾トレーナーが明かす強さの秘密…手記
スポーツ報知 / 2025年1月25日 5時10分
◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)統一戦12回戦 ○統一王者・井上尚弥(4回2分25秒・KO)WBO世界同級11位・金芸俊●(24日、東京・有明アリーナ)
井上尚弥(31)=大橋=が金芸俊(32)=韓国=を下し、スーパーバンタム級の世界4団体統一王座防衛に成功した。父の真吾トレーナー(53)は24日、スポーツ報知に手記を寄稿。世界の大舞台へ再び向かう2025年最初の試合をクリアした長男の勝利を喜ぶとともに、その強さの“秘密”を明かした。
金選手の左スイングとか、ヒヤッとする場面もあったけど、4回でしっかり倒すことができて良かったと思います。今回も過去イチの仕上がり。1週間前の練習で、ナオに2、3回、声を掛けたんですよ。「仕上がっているね」って。キレもスピードもタイミングも。見ていて、本当に仕上がっているなと思ったので。
昨年12月のグッドマン戦が延期と聞いた時は「え? うそでしょ」みたいな気持ちは確かにありましたが、けがが理由なら仕方ない。カット(裂傷)は誰にも責められない。でも、2回目となると…。ナオも、最初は驚きがあったと思う。試合相手が直前に変更になったのは初めてでしたが、ひたすら仕上げることに集中しました。ナオはやるべきことが分かっていますので。
簡単に勝つと思われていたのかもしれません。でも、相手は世界戦に出てくる選手。仕上げてくるというイメージを持って集中しないといけなかった。ナオは万能なので相手に対応できる。金選手のラフな攻撃やスイッチなどに動じず、ジャブを突いて相手を見切って自分のペースに持ち込めればと思っていました。
練習には本当に妥協がない。必ず前回、前々回を超えていこうとする。例えば、サンドバッグでもラウンドが終わってから10秒ラッシュを入れたり、ジャブを打ったり。目いっぱいに打ち込んで、もう限界、ここで休憩というところで5秒、10秒を追加する。きつくて手数が減るところで増やすんです。周りから見れば些細(ささい)なことかもしれない。でも、プラス5秒と、少しでも限界を広げていくことが強さにつながるんです。ステップワークを入れ、ジャブを打ちながら呼吸を整え、また次のラウンドへ。サンドバッグを打ち終わると、顔がもう、真っ白になっている。そのくらい追い込んでいるんです。少しでも力を抜いたり、流したりすれば、間違いなく足をすくわれる。前回よりも、わずかでいいから自分の限界枠を広げていく。自分が置かれている立場を分かっているし、やらなきゃいけないと分かっているから。
ナオはディフェンス力があり、攻撃力がある。相手の攻撃を紙一重でかわしながら攻めていくスタイルが、米国やサウジアラビアの方々に受けているのでしょう。ナオのボクシングが海外から期待され、楽しみにしている方もいる。子供の頃から一緒にやってきた自分にとっては本当にうれしいことです。(大橋ジム・トレーナー)
◆井上 真吾(いのうえ・しんご)1971年8月24日、神奈川・座間市生まれ。53歳。有限会社明成塗装代表取締役を務め、不動産業などの実業家の顔を持つ一方、大橋ジムにトレーナーとして所属し、息子の井上尚弥、拓真兄弟、おいの浩樹らを指導。2014年には、最も功績を残したトレーナーをたたえるエディ・タウンゼント賞を受賞。23年にWBCと日本で最優秀トレーナーに選ばれ、24年はWBA年間最優秀トレーナー賞を受賞。
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