「教科書にもないほど、見事」 元世界王者・山中慎介氏も仰天した井上尚弥の超絶テクニック

井上尚弥

◆プロボクシング　▽ＷＢＡ、ＷＢＣ、ＩＢＦ、ＷＢＯ世界スーパーバンタム級（５５・３キロ以下）統一戦１２回戦　○統一王者・井上尚弥（４回２分２５秒・ＫＯ）ＷＢＯ世界同級１１位・金芸俊●（２４日、東京・有明アリーナ）

　世界スーパーバンタム級４団体統一王者・井上尚弥（３１）＝大橋＝が、ＷＢＯ同級１１位の金芸俊（キム・イェジュン、３２）＝韓国＝を４回ＫＯで下して防衛に成功した。挑戦者の負傷による１か月延期、挑戦者変更と異例の展開をたどった防衛戦で、自身の日本人最多記録を更新する世界戦１０試合連続ＫＯ勝利。世界戦ＫＯ勝利数２２は世界歴代最多に並び、世界戦２４勝は現役選手で単独最多となった。次戦は今春の米ラスベガスが濃厚。モンスターが活躍の舞台を世界に移す。（観衆１万５０００人）

　尚弥のボクシングには穴がない。なぜないのかと言うと、基本に忠実だからだ。１ラウンドの入りが抜群だった。相手の動きをじっくり見て、どんな動きをするのか、どんなパンチを打つのか見極めていた。攻撃も下（ボディー）からを徹底していた。そして相手の力量が分かると、２ラウンドからはプレッシャーをかけ始め、金が自然と下がっていった。圧巻はラストとなった４回だ。意図的に金に攻撃を仕掛けさせ、相手のスキをうかがっていた。そしてフィニッシュの右ストレート。教科書にもないほど、見事な仕留め方だった。

　世界戦で１３日前に対戦相手が変更になるのは、どう考えても厳しい。実力差は確かにあったが、相手は世界ランカーであり、尚弥だからこそ、その相手に対応できたともいえる。当初の相手だったグッドマンのけがで延期になり、最終的には対戦相手まで変わったのだが、会場は満員だった。いろいろなアクシデントがありながらも、１万５０００人のお客さんを集められるのだから、改めて驚いてしまった。

　今年予定される今後の２試合はラスベガス、サウジアラビアを予定しているようだが、世界的な名声をより高められるはずだ。対戦相手には無敗のＷＢＣ１位アラン・ピカソ（メキシコ）、ＷＢＡ暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ（ウズベキスタン）らの名が挙がっているが、スーパーバンタム級には敵なしだろう。（元ＷＢＣ世界バンタム級王者・山中　慎介）