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【巨人】育成は選手だけじゃない 前職保育園職員の管理栄養士の挑戦「念ずれば花開く」…記者コラム

スポーツ報知 / 2025年2月5日 11時24分

育成強化部強化チームで管理栄養士としてナインをサポートする羽室彩葉さん(カメラ・岡野 将大)

 球団職員となって1か月以上が過ぎた。仲間たちからは親しみを込めて「いろはす」と呼ばれている。羽室彩葉さん。前職の保育園職員からガラリと職場が変わり、今年1月から巨人の管理栄養士として、現在は宮崎・都城での3軍キャンプに帯同している。

 「やっと業務にも慣れてきて、少しずつスタッフ、選手の方ともコミュニケーションが自分から取れるようになってきました」

 高校、大学と野球部のマネジャーを務めた。スポーツに関わることを目指して、大学卒業後は「シダックスフードサービス」に就職。病院に配属となったが、3年間の勤務の中で東京五輪にも従事した。しかし、実際にスポーツの現場に関わる夢が実現するのがいつになるのかははっきりと分からなかった。

 「例えば、2年働いたらいけるかもしれないし、10年かかるかもしれない。スポーツの現場でお仕事をするなら野球がいいという思いがあったので、スポーツの勉強をできる時間が取れる保育園に転職をしました。午前中に給食とおやつを作って、午後からは事務作業。給食献立を立てたり、お便りを作ったりという業務をしていました」

 昨年、転機が訪れる。知人の紹介で巨人軍の管理栄養士の採用試験を受けるチャンスに恵まれた。

 「まさかご縁があるとは思っていなかったので。とにかく受けるだけ受けてみようかと」

 採用試験は書類選考の後、複数回の面接が行われた。憧れ続けたスポーツの現場に飛び込むチャンスとあって、環境が変わることへの不安などはなかった。

 「不安とかあんまりそういうものを感じないタイプみたいで。お話をいただけた時にも『なんとかできると思われてるから、声かけてもらったのかな』と。なんとかしていくしかないみたい感じでした(笑)」

 スポーツ経験はないが、高校、大学と野球部のマネジャーとして“体育会”で育った感性を存分に発揮。見事に採用を勝ち取った。憧れだった現場に立った今は、「(採用前は)不安とかはなかったけれど、どっちかというと今の方があるかもしれない」と言う。なぜか。

 「選手に質問された時に、それが合っているのかどうか。正解もないと思うけど、チームでやっていく以上、(方針に)ずれ過ぎた答えは良くない。『これはチームの方針に合っているのか』と、悩んだりすることはやっぱりありますね」

 羽室さんが担当するのは、体作りのまっただ中にいる若手選手が多い。以前は「アスリートは何でも自分の物差しがあって、決まったものがある」と思っていたが、若手選手は予想以上に食に関する知識が不足していることも知った。

 「高卒ルーキーはまだ知識も浅いですし、知識を埋めていく作業もしてあげないといけない。私も基礎については勉強をしているけれど、分かりやすく、選手が納得いくように伝える言葉の厚み、説得力のようなところはすごく悩みます。スポーツ栄養はグレーな部分が多く、『本来ならこれぐらい栄養は取りたいけど、この選手の場合は一概にそうではない』というものがあったりする。そこで『あなたはこうなんだよ』と伝えることがなかなか難しい」

 現在はもちろん、選手の未来を見据えて食生活を考える日々が続く。

 「最終的には寮を出た時にどうなるか。寮を出て一人でご飯を用意する時も、食事をちゃんと整えられる力をつけさせてあげたい。すごく細かいことを教えることはもちろん大事だけど、『このお皿に、これとこれをどれぐらい盛れば(栄養面は)大丈夫だろう』と感覚でわかるようになって欲しい。意識しないと野菜や魚をとれない人もいるので、寮から出た時に同じ食事を自分で準備する力をつけることを目標に、メリットとか習慣付けができる声かけをしていきたいです」

 球団業務に励む傍ら、今後は公認スポーツ栄養士の資格を取得するための勉強にも励んでいく。今回の採用試験で、すでに同資格を持つ人材ではなく、自身を選んだ球団の意図も理解しているつもりだ。

 「プロ野球球団で(公認スポーツ栄養士の資格を)取っていない栄養士さんはあんまりいなくて。今回ジャイアンツさんは資格を判断基準に採用することもできたと思うんですけれど、育てるという意味で取っていただいていると思います。3年ほどかかる資格なので、皆さんから『しっかり勉強の時間を取っていくんだよ』と言っていただいています」

 座右の銘は「念ずれば花開く」。夢だったプロ野球球団の一員として歩み出した今、夢を大きく咲かせるために強い覚悟を胸に秘める。

 「とにかく口に出すこと。思ったこと、やりたいことは口に出して考えて、毎日思っていれば、それなりの努力をする。そうずっと思ってやっています。今はとても充実しています」

 あの食事を取ったから安打が打てた、打者を抑えられた―という明確な因果関係は証明のしようがない。羽室さんの言葉を借りれば、「スポーツ栄養はグレー」ということなのだろう。答えがあるようでない。そんな世界で戦うことを選んだ野球人に、尊敬の念を抱いた。(巨人ファーム担当キャップ・小島 和之)

 ◆羽室 彩葉(はむろ・いろは)1997年12月28日、大阪・岸和田市生まれ。27歳。近畿大学泉州高から神戸女子大へ進学し、スポーツ栄養学を専攻。卒業後にシダックスフードサービスに入社して3年間勤務。その後、保育園での勤務を経て、今年1月から巨人の管理栄養士を務める。

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