『SHOGUN 将軍』鞠子役抜擢のアンナ・サワイ、ハリウッド女優へと羽ばたいたその道のり
クランクイン! / 2024年3月1日 7時0分
世界で活躍する俳優の真田広之が製作・主演を務めた戦国スペクタクルドラマ『SHOGUN 将軍』(ディズニープラスにて配信中)で、物語の鍵を握るヒロイン・戸田鞠子をミステリアスに演じたアンナ・サワイ。映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(以下、『ワイスピ』)、配信ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』(以下、『モナーク』)、そして本作と、快進撃を続ける彼女は、いかにしてハリウッド注目の女優へと駆け上がったのか。日本を代表する国際派俳優・真田の若き後継者でもあるアンナの足跡とその魅力を、クランクイン!が単独インタビューを通して深掘りする。
◆映画初出演で演じることの“喜び”を知る
本作は、ジェイムズ・クラベルのベストセラー小説『SHOGUN』をハリウッドが連続ドラマ化したアクション満載の本格戦国ドラマ。1600年、「関ヶ原の戦い」前夜の日本。戦国最強の武将・吉井虎永(真田)に敵の包囲網が迫るなか、ある日、彼の窮地を救う秘密を持ったイギリス人航海士ジョン・ブラックソーン(後の按針/コズモ・ジャービス)が漂着する。虎永は、キリスト教を信仰し英語が堪能な戸田鞠子(アンナ)に通訳を命じ、按針を身近に置くが、その存在はやがて虎永の勢力に大きな影響を与えることになる。
ニュージーランド生まれ、東京育ち。アンナ・サワイは、ミュージカル『アニー』で舞台デビューした後、歌やダンスなど音楽を中心に活動していたが、英語が堪能なことから、2009年、ハリウッド映画『ニンジャ・アサシン』に出演することになる。これが、彼女の運命を大きく変えた。「オーディションに参加したらたまたま合格して、映画の撮影現場に初めて入ったのですが、それがもう楽しくて、楽しくて。『女優になっていろんな役を演じてみたい!』という思いが一気に加速しました」。
当時、アンナはティーンエイジャー、いろんな可能性にトライできる年齢だったが、所属していた事務所が音楽に力を入れていたことから、「女優としてオーディションを受けるチャンスがなかなか巡ってこなかった」と述懐。そこで彼女は一大決心をする。「事務所を飛び出すことはとても不安で勇気のいることだったのですが、ここは思い切って契約を更新せず、まっさらな状態で再スタートしてみようと。そんなときに声をかけてくださったのが、偶然『ニンジャ・アサシン』を観ていた今のマネージャーだったんです」。まさに渡りに船、それからはオーディションに次ぐオーディションの日々、アメリカという忖度なしの実力社会で、アンナは水を得た魚のように自身の表現に磨きをかけ、やがて『ワイスピ』『モナーク』、そして本作と、自身のキャリアを次々と更新していく。
◆日本人女性の“奥行き”ある描き方に共感
最新作『SHOGUN 将軍』でアンナが演じるキャラクターは、“謀反(むほん)者の娘”という宿命を背負ったキリシタンで、漂流者として捕えられた按針(コズモ・ジャービス)の通訳に抜擢された謎めく女性。以前、島田陽子さんが演じ、一躍国際派女優として注目を集めた大役だ。当初、その人物像を理解していなかったアンナは、鞠子役をあまり掘り下げずにオーディションを受け、一度は落選の憂き目を見ている。ところが数週間後、「ディレクターと密に話し合いをした上で、もう一度演じてほしい」という連絡を受けて、アンナは再びトライすることになる。
「鞠子を掘り下げると、キリシタンの心と侍の心を持ち併せたとても繊細な女性であることがわかったんです。たくさんの傷を抱えながら自身の務めを見つけ出していくところは大いに共感しました。監督やプロデューサー、脚本家の方々との話し合いのなかで、鞠子への理解を深めてからは、私にとってとてもリアリティーのあるキャラクターになったと思います」と当時を振り返る。
さらに、「これまでさまざまな海外のプロジェクトに参加してきたなかで、日本人女性の描き方に対して疑問を持つことが多々ありましたが、この作品は原作を忠実に描きたいということで、鞠子に色濃いストーリーをきっと与えてくださるに違いないと確信しました。従順でセクシー、ハードアクションも厭わない、というアジア系女優の偏ったニーズを払拭し、語らずとも鞠子の葛藤が滲み出るように心を込めて演じたい…これは私にとって大きなチャレンジになりました」と力を込める。現マネージャーと二人三脚でハリウッド女優への道を切り拓いてきたアンナにとって、本作は大きなターニングポイントとなる。
◆レジェンド・真田広之は“学び”の宝庫
本作の主役とプロデューサーを務める真田は、アメリカを拠点に活躍する日本人俳優の第一人者。同じく世界を視野に入れて活動するアンナにとって、今回、彼の体験やメンタリティーを学ぶ絶好のチャンスだった。「プロデューサーとしてのヒロさん(現場で真田は親しみを込めてヒロ、またはヒロさんと呼ばれている)は、つねに優しくて情熱的なんですよね。ジョークを言って現場を和ませることも忘れないし、みんなの一番良いところを引き出そうと、ご自分の出番が終わっても、ずっとモニターを観ながら一人一人にアドバイスされている。レジェンドなのにとても人柄が柔らかなんです」と称賛の言葉を惜しまない。
アクションの練習にも顔を出し、「自分のパート以上に私のパートを真剣に考えてくださる」という真田を、アンナは彼が演じる虎永の人柄になぞらえる。「温かく柔らかいけれど、仕事に関しては妥協しない。答えが見つかるまでとことん指導してくれる。そんな1本筋の通ったところは、虎永様を彷彿させるんですよね。私が長刀(なぎなた)を振り回すシーンも、自らやって見せてくださったんですが、女性しか持たない武器なのにあっという間に習得されて、膝を付けたままで戦う姿が完璧なんです。ただ、命がかかった場面では脚を広げたスタンスで戦った方がリアルだからと柔軟性を持たせてくれるところもあって、指導者としても素晴らしいとしか言いようがありません」と目を輝かせる。
俳優としても、「私が語る資格などないレベル。決して大仰(おうぎょう)な演技ではなく、内面から滲み出てくるような重みと言いますか…特に虎永の衣装を着ているときはものすごいオーラを感じます」とこちらも大絶賛。「私の場合、『アジア人をもっと起用しよう』という機運のなかでキャリアをスタートさせたので、役を掴むことに昔ほど苦労はしていないと思いますが、ヒロさんの場合は、役がない、セリフがない、発言権もないなど、不遇の時代を耐えながら、一つ一つキャリアを積み重ね、現在の地位を獲得されたパイオニア。つまり、海外進出を目指す私たちのレールを敷いてくれた方なんですよね。その苦しみを背負ってのし上がってきたからこそ滲み出る迫力は、決して真似できるものではありません」。唯一無二の存在に、アンナも言葉では言い尽くせないほどの“学び”があったようだ。
これまでは、「絶対にこの役をやってみたい!」というスタンスではなく、どちらかと言えばマネージャー主導でオーディションを受け、運命的な出会いに一喜一憂してきたというアンナ。そんな彼女が、『SHOGUN 将軍』という作品で日本人としての“誇り”を初めて体感し、「ヒロさんのように全身全霊を作品に捧げる情熱的なプロデューサーやショーランナーとまた一緒に仕事がしたい」という“欲”が生まれてきたという。まずは新境地に挑んだ戸田鞠子役、アンナが心血を注いだヒロインをこの目に焼き付けようではないか。(取材・文:坂田正樹 写真:高野広美)
『SHOGUN 将軍』は2月27日からディズニープラスの「スター」にて独占配信開始(初回は2話配信、その後毎週1話ずつ配信。最終話は4月23日)。
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