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ルポライター・村田らむが語る映画『クラブゼロ』新興宗教のリアル 一度ハマると“やめ時”が難しいワケとは? 

クランクイン! / 2024年12月7日 11時0分

 また「劇中で、最初はノヴァクの“意識的な食事”に反抗的な男の子、ベンがいますが、ああいうタイプはハマると深いところまで行ってしまう可能性がありますね」とも。

 「これは宗教に関わらずマルチビジネスなどでも同じですが、論破してやろう、見抜いてやろう、化けの皮を剥がしてやろうと思っていても、相手は百戦錬磨ですから。とにかく説明がうまい。論破合戦になれば、若い子ならばきっとやられてしまうし、やられてしまうと信じちゃったりするわけです。本作でもノヴァクが説明を続けることで、ベンもすっかり仲間になってしまいます。聖書や仏典を読んでいても、反対側から来た人の方がハマりやすいという例はたくさんあります」とミイラ取りがミイラになるパターンも、とても多いのだとか。

 ノヴァクの教える食事法は段階を経て、何も食べない“不食”へと突き進む。ついに親たちも洗脳だと心配をし始め、生徒の中で離脱する者も現れる。反対されたり、孤立することで、ノヴァクのもとに集う生徒たちはより絆を強固にしていくのだ。

 村田は「新興宗教もそうですが、ネットワークビジネスなども、ハマるとその場所以外の友だちができなくなる。途中で『ここは怪しいな』と思ったとしても、やめたら人脈がゼロになってしまうので、やめるわけにはいかなくなる。それまでに投資したものもあるし、やめ時が見つからなくなってしまうんですね。そんな環境の中で二世が生まれたりすると、そこだけが居心地がよく、周りが全部敵に見えたりしてしまったり」と思いを巡らせながら、「新たな人を勧誘していたとしたら、その時点で自分も団体の加害者になるわけです。『怪しい』と思ったとしたら加害者になる前にやめるのが一番。本作でも、何人かが途中で抜けますがとてもいいタイミングでやめたなと思いました」とやめ時はとても難しいものだという。

■潜入史上、一番激しかった洗脳体験の中身とは!?

 潜入取材を通して、カルト的な誘導をたくさん目にしてきたという村田。「入った途端、自己啓発を勧められる会社などもヤバいところがありますね。僕が潜入をした中で一番激しい洗脳だなと思ったのは、企業向けの自己啓発セミナーですから。例えば窓もない部屋に30人くらいの人を集めて、『これをやりたい人』と声をかけたら『はい!自分がやります!』と真っ先に答えるようにしつけるんですね。そうするとやっぱり鈍臭い子がいたりして、叱られるわけです。さらにその叱られている様子を見て、ほくそ笑む人もいます。すると指導者は『なぜ笑ったんだ!この子が失敗したことがお前はうれしいのか。なぜそんなあさましい人間になったんだ!』とその笑った子を怒り、その瞬間にドン!と室内の電気が消えて、小さな頃を思い出させるような歌が流れてくる。何時間も閉じ込められた部屋でそんなことをやるんですよ。みんなおかしくなって、最終的には号泣しています」と集団心理をうまく利用したセミナーもよくあると解説する。

 思えば劇中でもグループ内で競争心が出てきたり、お互いを監視したり、ダメ出しをし始めたりする場面もある。「本作のような映画を観て、『自分は気をつけよう』と思うのもアリですよね。ただノヴァクの教えが、心に刺さってしまう人がいるかも…。それくらいリアルでした!」と語っていた。(取材・文・写真:成田おり枝)

 映画『クラブゼロ』は公開中。

■村田らむ(ライター・イラストレーター・漫画家・配信者)
1972年生まれ。名古屋出身。ホームレス、ゴミ屋敷、青木ヶ原樹海、スラム、廃墟などアングラでニッチなネタが得意。ウロウロといろいろな場所を歩き回って、コツコツと記事を作るのが好き。『人怖』『樹海怪談』『ホームレス消滅 』『ゴミ屋敷奮闘記』『「非会社員」の知られざる稼ぎ方』『にっぽんダークサイド見聞録』など著書多数。最近ではYouTubeチャンネル『リアル現場主義!!』でいろいろ配信中。

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