2月の手紙やメールで使いたい「季節の美しい日本語」
イエモネ / 2023年2月1日 7時30分
2月は、余寒のなかにも春の足音を感じる時期。日本には、その季節に合った美しいことばがたくさんあるので、手紙やメールに季節を感じることばを使うと、心が和みやさしい気持ちになれるでしょう。そこで、各月に使いたいことばを3つずつ、和文化研究家の三浦康子がご紹介します。2月は「立春」「名残雪」「春告げ鳥」です。
2月の美しい日本語~立春(りっしゅん)
「立春」とは二十四節気のひとつで、暦のうえでは春に入り春の兆しがみえ始める頃。春が立つと書くように、これから春の足音が近づいてきます。
二十四節気のなかでも、とりわけ立春には意義があります。二十四節気は立春から始まり、新しい1年の始まりになるということです。
旧暦では立春のころに元日がめぐってくることが多かったため、立春は春の始まりというだけではなく、新しい年の始まりも意味していました。お正月に「迎春」「初春」「新春」などを使うのも、こうした考えに基づいています。
また、立春前日の節分は、年越しの行事にあたります。
実際にはまだ寒いので、「立春」以降の寒さを「余寒(よかん)」「春寒(しゅんかん)」「残寒(ざんかん)」「寒の戻り」といい、時候の挨拶にも使われます。
立春を過ぎたら、「寒中見舞い」は「余寒見舞い」になるので注意してください。
<例文>
立春を迎え、暦の上では春となりましたが、お元気ですか。立春とは名ばかりの寒さですので、くれぐれもご自愛ください。春寒の候、いかがお過ごしでしょうか。
2月の美しい日本語~名残雪(なごりゆき)
「名残雪」は、同名のフォークソングから広がった言葉です。古くからあるのは「名残の雪」という言葉で、春が来ても消え残っている雪、春が来てから降る雪という意味があります。
「名残雪」には、まるで名残を惜しむかのように春近くに降る雪、振り返ればあれが最後だったと思うような最後の雪というニュアンスがあります。
その年最後の雪は、気象用語では「終雪(しゅうせつ)」といいますが、古くから「名残の雪」「雪の果て」「雪の別れ」「忘れ雪」などと呼ばれてきました。
降っているときは最後の雪になるかどうかわからないので、過ぎてから最後だったことに気づくもの。人生にもこうした別れがあるため、その切なさが言葉の響きに重なります。
<例文>
今夜は名残雪になりそうですね。あの日の雪が名残雪だと知りました。これが雪の別れになるのかも。冬を見送っている気分です。
2月の美しい日本語~春告鳥(はるつげどり)
鶯(うぐいす)は早春にほかの鳥に先駆けてさえずり始めるので、「春告鳥」とも呼ばれています。
鶯は冬の間は山中で過ごし、春の訪れとともに平地に下りてきます。“ホーホケキョ”は、オスが縄張り宣言や求愛をする際の鳴き声で、春を告げるおなじみの鳴き声として、昔から心待ちにされてきました。
その年初めて耳にする鶯の声を「初音(はつね)」と呼びます。初音のころはどこかおぼつかない節回しですが、本格的な春になるにつれ、聞き惚れるほど見事な鳴き声になります。
昔から「梅に鶯」といい、絵のモチーフとしてもおなじみですが、実際に梅にとまる鶯色の鳥はメジロで、鶯は茶色い色をしています。早春に咲く梅と、早春から鳴き始める鶯を、取り合わせのいいもののたとえとして「梅に鶯」と言うようになりました。
<例文>
梅がほころび、春告鳥の鳴く頃となりました。思いがけず初音を耳にし、心が和みました。降車駅で春告鳥の声を聞き、いい旅になると感じました。
日本人の感性が、希望の春と冬の名残をあらわすことばを生みだしました。その情緒を会話に盛り込み、愉しんでみてください。
[All Photos by shutterstock.com]
https://iemone.jp/article/lifestyle/hana_27589/
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