東海道五十三次の宿場町で「大工集団の町おこし」全国初の商店街ホテル
IGNITE / 2018年5月5日 18時0分
かつての賑わいは失われ、昼間でも人通りがまばらな大津中心の商店街
当初、閉店している店舗が何軒もあったため、貸し手はすぐに見つかると思ったという。「十数軒まわりましたが、どこも ”お宅に貸す物はないよ” という対応でした。なかなか厳しいなと。支店はあきらめようと思ったこともありました」。
それでも何度も足を運ぶうちに、大津には歴史ある建築物が多く残り、江戸後期の京町屋の特徴が残る建物や登録有形文化財の家が多数残っていることを知った。商店街に通い続けるうちに、住人とも世間話をするようになった。後継者問題でやむなく閉店になった店主の話や、昔の大津百町の賑わいを懐かしむ声を聞き、谷口氏は大津百町に深く興味を抱く。やがて商店街から協力を申し出る住民が現れ、閉店する和菓子屋の店舗を貸してもらえることになり、2016年6月に大津支店「大津百町スタジオ」をオープンさせた。
大津支店の工事前。和菓子店の前は京に入る前に旅人が身なりを整える木賃宿(きちんやど)だった。
2016年にオープンした築100年の民家を改修した支店「大津百町スタジオ」
■人気旅館「里山十帖」仕掛け人 岩佐十良氏との出会い。棟梁として大津の魅力を全国へ
希望の地で支店をオープンさせた谷口氏。しかしある思いが残っていた。
“大津は魅力が多い町なのに、京都と比べてなぜ観光客が少ないのか。何かできることはないのか” そんな中、雑誌「自遊人」編集長であり、予約のとれない新潟県の人気旅館「里山十帖」を手がけた岩佐十良氏と出会う。
「谷口工務店は木の家にこだわり、社員大工を多く抱えているのが特徴。大工技術を高めて継承し、社会貢献もしたいと話されていた。それなら町家を改修して滋賀県の大工の技術を向上させ、街を活性化してはと提案しました」と岩佐氏。その後、谷口氏の想いに賛同し、設計は木造建築の第一人者である建築家の竹原義二氏(無有建築工房)、庭は造園家の荻野寿也氏(荻野寿也景観設計)が名乗りをあげた。
当初プロジェクトの資金は自社で全額投資を予定していたが、計画の話を聞いて大津市の勧めにより経済産業省の補助金を申請。大津市中心市街地活性化協議会・商店街連盟と連携する形で進める運びとなった。プロジェクトの趣旨や思いを説明して回ることで、地元の協力者も増えてきた。こうして一気にプロジェクトが加速した。
■職人不足の中、大工が全国から応援「熱い職人魂」
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