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東海道五十三次の宿場町で「大工集団の町おこし」全国初の商店街ホテル

IGNITE / 2018年5月5日 18時0分

工事は2017年7月から着工。改修する7棟は築100年を超える建物などかなり古い。外を剥がしてみると構造体が腐っていたり、一部がまったく使えないなど予想外の事態が多発した。そのため設計図面が大幅に変更になり、工事の遅れが生じた。古民家再生は手間がかかり、新築の3倍は大工の人員が必要になると言われる。

このままではオープンに間に合わない事態も予測されたため、谷口氏は数奇屋建築で名の知れた工務店に相談したところ、大工を派遣してもらえた。その後も富山県、愛知県から大工が続々と応援に駆け付け、工事は一気に遅れを取り戻すことができた。

応援にかけつけた大工と工事内容の打合せを行う

■100年の歴史を超える建物の形跡が工事では露わに

アーケードに合わせて洋風だった外観も、すべての内装を取り払い断熱材を入れて再生した。床の間や欄間(らんま)など使えるものは最大限利用する。江戸時代から大正、昭和と増築を重ねた豪快な丸太組みや、『石室』が床下から出てくるなど、100年の歴史を超える建物の形跡が工事では露わになった。「新築の工事では決して経験できない技術。昔の大工の技を間近で感じることができたし、若い大工の良い教育にもなった」と話すのは、谷口工務店に勤める大工の松原慎治さん。

解体すると古い構造が露わになる。昔の大工の技術を見る貴重な機会にもなる。

工事前の現場で床下から見つかった「石室」。古くは古墳などに用いられた技法

■一棟目に完成したのは、書斎つきの町家ホテル「鈴屋」

1棟貸しタイプの2階建て(ツインベッド、定員5名)。玄関を入ってすぐにミニキッチン、ダイニング、ベッドルーム、2階には商店街を見下ろすリビングルームがついている。家具はフィン・ユール、照明はルイス・ポールセンなど北欧インテリアが中心。町家とはいえ現代の暮らしに合ったラグジュアリーな空間になっている。

「鈴屋」のほか、「萬屋」「菱屋」「鍵屋」「糀屋」「茶屋」「近江屋」の全7棟。間取りはもちろん家具や照明も全て異なる。

2棟目「萬屋(よろずや)」(写真一番右)広さは約83平米。商店街の中にあり、ひと昔前まで傘屋だった。

7棟はいずれも2階建てで延べ床面積65~258平方メートル。JR大津駅と京阪浜大津駅の間の旧東海道沿いや、アーケード商店街内に点在する。利用客は待合ロビーとなる「大津百町スタジオ」でチェックインし、街中や商店街を散策しながらホテルへ向かう。近くの観光地や飲食店を楽しんだり、地元食材を買って料理をしたりと地域に溶け込むような旅ができる。少し足をのばせば、国宝の三井寺や比叡山、石山寺などの神社仏閣をはじめ、琵琶湖の景観も楽しむことができる。

プレオープン4月29日から素泊まりのみで営業開始、グランドオープンは6月30日を予定している。

現在、全国的に職人の減少と高齢化が進んでいる。総務省の国勢調査によれば1995年に76万1千人いた大工人口は2010年には39万7千人に減少。東京オリンピックが開催される2020年には21万1千人まで落ち込むと推定される。「大工の地位向上が開業当時からの目標でした。棟梁が街を元気にすることで信頼を頂き、事業も繁栄させていきたい。建築業の良い事例となり全国の大工職人に夢と希望を与えたい」と谷口氏。

現代の棟梁がつくりあげた現代の宿場町復活に期待したい。

<HOTEL 講 大津百町>

・滋賀県大津市中央1-2-6ほか

・客室数:13室(一棟丸ごと貸切タイプ:5棟 そのほか:8室)

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