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「真性社畜」と今流行りの「アカルイ社畜」はまったく違うんだぞ

インフォシーク / 2012年6月1日 19時0分

先週の日経MJ一面に「ハードワークカッコいいぜ!」という見出しがデカデカと掲載され、大きな話題となった。ネット上には「社畜(しゃちく)をオシャレっぽく書くなよ」「働き方や働ける体力、環境、それぞれ違う。その多様性を無視してないか」「労基はどこへ消えた」などと批判的な意見が殺到。

ネタ元となったページは、およそ4000リツイートもされていた。会社での様々な雇用形態はもちろん、会社に属さない働き方など、ワークスタイルは多様化する一方。それにともない、社畜という存在がメディアでどう扱われるかに、かなりの関心が寄せられていることは確かだ。

「アカルイ社畜」を支援する
「Wikipedia」によると、社畜とは、主に日本で、企業に飼い慣らされてしまい自分の意思と良心を放棄し奴隷(家畜)と化したサラリーマンの状態を揶揄したものである。これが本来の意味だということを忘れないでほしい。「会社+家畜」から来た造語で、会社人間、企業戦士などよりも、皮肉が強く込められている言葉だというが、近年言葉自体が流行り始め、働き方そのものを見直す風潮にもなってきている。

そんな社畜ブームの波にのって様々な「社畜本」が売り出される中、社畜につきものな“残業”を支援するサイト「The Workaholics」も、4月23日にオープン。「うまい!」「これは絶妙……」とネット上でも話題に。サイトには社会人向けの記事が並んでおり、ライフハック、ビジネス書、ガジェット、著名人を起用した「世界の仕事人」、かわいい一般女子が取り上げられた「Daisuki!」など面白いコンテンツが揃う。

Web編集者・ライターの中川淳一郎氏、人材コンサルタントの常見陽平氏、エディター・クリエイティブディレクターの嶋浩一郎氏といった非常に豪華な面々が、読者から寄せられた「会社を辞めたい」という悩みに答えたり、社畜ならではの長時間労働を解決する方法などを紹介している「ビジネスリーダー連載」のコーナーもとても面白い。「社畜は悪くない。明るく楽しく社畜ライフを楽しもう」という空気が作られている。

Twitterも見ていて参考になる。「意識の高い社畜は朝も早い」「定期的に社畜ネタが流れる自分のタイムラインブラックすぎる」など、社畜に関するツイートが散見される。アピールがスゴい。確かに「社畜万歳」的な空気はあるけれど、あえて主張すること? ブームに乗っかって言葉を使いたいだけじゃないの? そもそもあなたは社畜といえるの? と色々疑問。彼らを余裕のある「アカルイ社畜」と名付けたい。

「社畜だったんだな」と辞めてから気付く
「真性社畜(≠アカルイ社畜)」は後になってから、自分が社畜だったことに気付く。働いている間は自分が社畜だということなど疑いもせずに、黙々と仕事をし続けるのだ。大手からベンチャー企業へ転職した友人・M子の例を紹介しよう。大手にいた頃のM子は基本的に9~18時勤務。残業しても1時間以内で、19時までには退社するのが普通だった。ところがベンチャーに入ってからは9~24時勤務と、15時間労働がデフォルト! ランチはデスクで取りながらなので、本当にきっちり15時間だ。

社内制度やマニュアルが整備されていないのと、とにかく業務量が多いことが原因だ。目の前のことにひたすら追われ、業務の改善などをしている暇もない。土日も出勤する、または自宅で作業。月の労働時間は340時間ほど。ヤバすぎるぞ! ベッドに横たわるといつも「地震のような揺れ」を感じて眠れず、また金縛りによくあうとか。ゴキブリの幻覚も見る。大丈夫か……?

どう見ても働きすぎだが、本人は「大手だと私はコマみたいな感じだった。だけど今は少ないメンバーでやっていて、私がそれをやらないと回らない。そう思うから頑張れる」と当時のM子はキラキラした目で語っていた。肌が荒れ、ストレスで痩せ、生理も止まっていたというからひどい話だ。ちなみにM子の1日のみなし残業は3時間、それが年俸450万に含まれるが、明らかにみなしを超えた分も残業代は支払われなかったという。

たまの休日は社長宅でのホームパーティに駆り出され、気をつかい、貴重な週末の夜はふけていく。M子がそのブラックなベンチャーにいた1年半、そういえばたった1回しか会えなかった。彼女はいつも会社の人間といたからだ。自らを社畜だと思うことなく過ごしていたM子は、ある日過労で倒れて休養した後、会社を辞めた。当時を振り返って「どうしてあんなに働いてたのかな。当時はがむしゃらに仕事をしていたのが今となっては不思議。まさに今流行りの“社畜”みたい」と笑う。

本当は「笑えない社畜」が五万といる
なんだかんだ「ハードに働いている自分が好きだぜ」といった思いで「今日も社畜だった!」「社畜なオレお疲れ」なんてソーシャルメディア上でつぶやいているうちは、今流行りの「アカルイ社畜」に過ぎない。実はハッピーな人たちだ。つぶやく暇があるくらいだから、確実に「余裕」がある。M子みたいな人は日中FacebookやTwitterなんて見る暇なんてない。

社畜なんて自ら主張することではなく、他人から認められて初めて社畜といえるのであるーーとまでは言わないが、アピールすることに何の意味があるのだろうか。さらに社畜の真意には「お気楽さ」の欠片なんてない。M子なんてまったく笑えない、真性社畜の例だし。そんな「笑えない社畜」はネット上で決して目立っていないし、自分が社畜だと気付いていないわけだから。真の社畜を身近に発見すると「社畜なう」だなんて気軽に言えなくなると思うよ。つぶやくなら「アカルイ社畜」と言ってくれ。

池田園子
いけだ・そのこ フリーランスのライター/ディレクター。86年生まれ。ポータルサイト運営、メディア運営を経て独立。Web周りのおもしろネタを誰にでも分かるように紹介し、Webから発生するワクワクを共有したい。その他、新しいモノ、会社、働き方、ガジェット、恋愛ネタを主に書いています。最近の興味・関心はコミュニケーション全般。
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