東京で値切るなら市場じゃなくて量販店 ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2012年12月26日 17時30分

「高い東京で、1円でも安く生きるには。」

私はタコスが大好きだ。

スパイシーな具をトルティーヤで包んだそれは、おなかが空いているときはガツガツ食べられるパワーフードであり、どんなお酒にもよく合う最高の肴にもなる万能選手。

しかも、一枚300円やそこらで食べられる安さも好きだ。

東京でもタコスをメニュー表から見つけたら果敢に挑もう、そう決めて上京した。

しかし、東京で頼んだタコス一枚が1000円だったことに度肝を抜かれ、皿には「ジャンクフードじゃないですよ」といわんばかりのオシャレな草がこんもり盛られていたことから、好きな食べ物リストから除外する事態となった。

なにがブエノス・ノーチェスだ馬鹿野郎と。

上京間もない人間にとって東京はすべてが基準に映ってしまう。

でもタコスに限らず高いものは高い。東京が普通と思ったら大間違いだ。ランチにコーヒーを付けたら大阪の倍。ケーキを付けたら3倍。たこ焼きが倍。ヒモみたいな豚肉が入ったお好み焼きも倍。ケーキに箱、付けたら有料。

家賃相場が大阪の倍らしいと上京前から覚悟はしていたが、なんだ、なんだって倍じゃないか。

こうなりゃ自炊するしかない、とは思うが、スーパーマーケットだって東京は高い。

大阪にはゲリラ的に1円セールが行われ、牛肉を1グラム1円で売る激安スーパー「玉出」の存在が大きく、かつ基準だ。「大阪はくいだおれの町」なんていうのは観光客誘致作戦の常套句。

大阪人は旨さと同等に安さもクリアできないと誰も寄らなくなるくらい、店主なら誰だって知っている。

大阪人は値切る。

大阪弁で「まける」。

オマケしてくれるならモノよりお金の精神だ。物が高いんだから値下げ交渉はしょうがない。2億歩譲って定価で買ったとしても「まけて」の一言も言わず買うなんて不戦敗だ。他の大阪人は安くしてもらっているかもしれないし。

築地市場やアメ横じゃそれがレジャーなんだろうけれど、価格の自由化が激しい家電量販店なんて絶好の根切りバトル会場なのに、東京人は値切る場所を選んでいるようだ。そのせいか、東京人の店員さんは「ウチはここまで値下げしてるんだから」と本気で値下げ交渉する客なぞいないと思っているはず。

大阪人を侮るなかれ。

数年前に某リンゴのマークのノートパソコンを買った日は、伝家の宝刀を抜いた名試合だった。名付けて「リンゴじゃない、オマエに惚れたんだ」作戦。

時刻は昼。

名高いブランドの新製品は強気の定価で売られている。

その大手家電量販店はポイント還元されるメリットがあり、だいたいは購入価格の10%程度が付与されるのだが、こちらも強気の5%。

発売間もないノートパソコンは店員が動かなくても飛ぶように売れている。

ならば、と照準を絞った店員の不意を打って値下げ交渉に挑んだ。

目当ての製品には触れず、店員の近くをうろうろ。声をかけてもらいたい顔は一切しない。そのほうが話しかけられやすいからだ。

すると店員は「新製品なんですよ」ときた。

すかさず私は「今日、何時までいらっしゃいますか?」と聞く。欲しいが高くて悩んでいる客はごまんといるから金額の話はすべきでない。

すると「営業時間中までいますよ」と返してきた。

まずは他店を探している姿勢を表し、「この店で買いたいが他店が安かったらそっちで金落とすよ。ちょっくらローラー作戦してきますね。」みたいな話を具体的にならないように話す。

しかし、それだけで会話は終わらせない。

本当はあなたから買いたいんだ、ということを示すがために「お名刺いただけますか?戻ったらオマケしてください(笑)。」と締める。

だいたいの店員さんは渡してくれる。悪い気がしないからだ。

そして閉店間際の数時間後、店に戻る。

リンゴ大フィーバーでさぞ疲れたであろう店員を見つけるや「あ、どーも!現金一括で買うからオマケしてください」とストレートにお願いする。

店員にしてみればご指名客。

「ポイントなら少しは…」と反応してくれたらそれから後は「もっともっと!」の一人シュプレヒコールをするだけ。

結局、5%だった付与ポイントは18%に達した。

お互いが気持ち良く売り買いができたからだろう、最後はガッチリと握手で終えた夜だった。

いい買い物ができた。

だが、終始大阪弁を封印し標準語で喋り続けた私は試合に勝って勝負に負けたようなもんだが、得したのだからまあいいか。

記事写真:写真素材 足成

鹿タカシ
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。

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